Search
Library
Home / 家族もの / 結婚式当日、初恋の彼女が新婦になった理由 / 第3話

第3話

Author: 苦い橘さん
足をくじいた上に雨に濡れたせいで発熱し、医者からは数日待ってから手術を受けるように勧められた。

行く当てもない私は、そのまま入院することにした。

その日の夜、神谷史人から電話がかかってきた。怒りに満ちた声で、私が今どこにいるのか問い詰めてきた。

電話の向こうでは、桜井安梨沙がまたもや話に割り込んでくる。

「史人、清凛葉さん、こんな時間になっても帰らないなんて、同僚の家に泊まってるんじゃない?聞いた話だと、彼女の会社には男の同僚がたくさんいるんでしょ?ねえ、史人、何かあったらどうするの?」

神谷史人は、鼻で笑うように軽く嗤いながら答えた。

「知らないのか?清凛葉がどれだけ俺を愛してるか。犬みたいに忠誠心が強くて、絶対に離れないんだ。不倫なんてするわけないだろ」

胸が張り裂けるような思いだった。

昔、一度彼に別れを告げられた時、必死に彼を引き留めた。

その時は、自分の真心が彼に伝わったのだと信じていた。でも、彼の目には私がただの忠誠心だけでまとわりつく「犬」にしか見えていなかったのだ。

神谷史人はその別れ話の時の状況を、あたかも目の前に蘇るかのように細かく描写し、私の必死な懇願まで真似し始めた。

それが桜井安梨沙のツボに入ったのか、クスクスと笑いながら言った。

「ねえ、史人、あの頃ちょうど私が帰国した時だったよね。もしかして私のために別れたの?」

神谷史人は一瞬言葉に詰まり、その後すぐに私に言い訳を始めた。

「変なことを考えるな。当時はただの一時的な衝動だ。今は清凛葉だけを愛してる。そうじゃなかったら、結婚までしないだろ?」

私は皮肉を込めて首を振り、そのまま電話を切った。

薬を塗り替えてくれていた看護師は、この内容をほとんど聞いてしまったらしく、私を見る目にかすかな同情の色が浮かんでいた。彼女の口調は先ほどよりもずっと優しくなり、丁寧に声をかけてくれた。

「中絶手術、一番早くていつ受けられますか?」

私はそう尋ねた。

「足の傷はそこまで深刻ではないので、明日には手術が可能ですよ」と、彼女は答えた。

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP