「当時、お前はまだ中学三年で、高校進学を控えた大事な時期だった。
わしは何があってもあの女を家の敷居は跨がせなかった。お前の本家の跡継ぎとしての立場を揺るがせず、愛人の子に新井家の家名を名乗らせないと決めていた」
新井のお爺さんが口を開いた。
「それなのに、お前はどうだ?大きくなってからは、父親と瓜二つではないか!まさに、この親にしてこの子ありだ!」
その言葉には汚い言葉など一つもなかったが、蓮司にとっては何よりも深く突き刺さり、心が引き裂かれるようだった。
「申し訳ありません、お爺様……美月がホテルでパパラッチに張り込まれ、バッグも奪われてしまって、身分証明書がないとホテルにも泊まれなかったんです」
蓮司は小声で説明した。
「それで家に泊めたと?随分とお優しいことだな。それなら、どうして道端の捨て猫や捨て犬を拾ってきて世話の一つもしないんだ?」
新井のお爺さんは言い返した。
蓮司は言葉に詰まり、何も言い返せなかった。
「どのくらい泊めている?」
新井のお爺さんが再び尋ねた。
蓮司はすぐには答えず、お爺様に嘘をつくべきか逡巡したが、再び杖で叩かれた。
「わしを騙そうなどと思うな!早く言え。透子に聞かせたいのか?」
新井のお爺さんは冷たく言った。
「……二十日ほどです」
新井のお爺さんは途端に目を見開き、杖で何度も激しく叩きつけ、怒鳴った。
「二十日以上だと!透子にそんな長い間、辛い思いをさせていたというのか!
あの女を泊めること自体が問題外だが、それにしても、他に住む場所を見つけてやれなかったのか?同情心などではないだろう。あの女とよりを戻したに違いない!」
蓮司は途端に顔を上げて反論しようとしたが、睨みつけられて口をつぐんだ。
「お前とあの女のゴシップはもう二度も出てる!一度は彼女を抱きかかえて席を立ち、もう一度は十八億のネックレスを贈った。
蓮司、これでもまだ何か言い訳があるか!」
新井のお爺さんは吐き捨てるように言った。
蓮司は拳を握りしめ、奥歯を噛み締めた。彼は……何も言えなかった。
なぜなら、それらは全て自分自身がしたことであり、多くの人々に見られ、知られてしまっていたからだ……
「お前たちの離婚には同意する。異論はない。透子は良い子だ。わしがあの子を二年間も苦しめてしまった。これからはもう、あの子の邪魔を