「月に1000万。外に出る必要もないし、それだけあれば十分でしょう」
「1000万……それじゃ足りませんね」
真奈は頬杖をつきながら、隣の冬城をうっとりと見つめて言った。「司は毎月2000万円くれるし、おまけに私の仕事も応援してくれてますよ」
「え?」
孫の突拍子もない行動を耳にして、冬城おばあさんはすぐさま冬城を鋭く見つめ、厳しい声で問いただした。「司、それは本当なの?」
冬城は真奈がわざと挑発していると分かっていたが、それでも淡々と言った。「真奈が仕事を続けたいというのなら、好きなようにさせてやって。おばあさま、この件に口を出すのはやめてくれないか」
「どうして口を出さずにいられるっていうの!私はもうこの年齢なのよ。そろそろ次の世代が生まれるのを見届けたいと思うのが当然でしょう?それなのに、あなたは何をするにも私に一言の相談もなしに……!」
おばあさんは怒りで顔を紅潮させ、今にも声を荒げそうだった。
それを見て、真奈はにっこりと笑いながら、さらりと言った。「大奥様、そんなに怒らないでください。これはあくまで私たち夫婦のことですから。司とはもう正式な契約を交わしていて、復縁後は子どもは作らず、DINKsでいくって決めているんです」
「ゴホ、ゴホ……」
冬城は突然、スープを喉に詰まらせてむせた。その言葉を耳にした冬城おばあさんは、思わず卒倒しそうになった。「D……DINKs……司、どうしてそんな馬鹿なことを承諾したの!」
真奈は頬杖をつきながら、食事を続けていた。冬城おばあさんのその顔を、まるで満足げに眺めていた。
冬城は眉間を指で押さえながら、低く言った。「おばあさま、まずは落ち着いて食事を……」
「食べるですって?こんな状況で、どうして食事なんてできるの!」
冬城おばあさんは、もはや取り繕う様子も見せず、怒りに満ちた目で真奈を睨みつけた。そして、大垣さんの手を借りながら、居間を後にした。
その場には、冬城と真奈、二人だけが残された。
真奈はすっと冷静な表情に戻ると、手にしていた箸を静かに置いた。「お腹、いっぱいよ」
そう言って、真奈は立ち上がり、そのまま踵を返した。
だが、冬城が彼女の手をつかんだ。「ちょっと、一緒に来てほしい場所がある」
その言葉に、真奈は黙って彼を見つめた。
冬城は立ち上がると、テーブルの上の車のキーを