冬城の瞳には、はっきりとした警戒の色が浮かんでいた。真奈は、自分のどの問いかけが冬城の地雷を踏んだのかまではわからなかったが――ひとつだけ確信できた。彼はきっと、冬城家にまつわる何か深い「家族の秘密」を知っている。
そのとき、屋敷の奥から慌てた様子のメイドが駆け寄ってきた。「冬城総裁!大変です!小林さんが……お車を勝手に運転して出て行きました!」
冬城が眉をひそめる。真奈も思わず声を上げた。「さっきはただ、大奥様にちゃんと真相を聞いてほしいって言っただけなのに……。彼女、相当取り乱してたわ。本当に何かあったら……」
「行くぞ」
冬城はそう短く言うと、真奈の手を取り、屋敷の外へと急ぎ足で向かった。彼はすぐさま予備の車に乗り込み、二人の新居へと車を走らせた。
その頃。小林は冬城家の本邸の門の前で、まるで何かに取り憑かれたかのように拳で扉を叩き続けていた。大垣さんは困惑の表情で門を開け、小林の異様な姿にさらに戸惑った。「小林さん……?」
「大奥様!どこ!?大奥様はどこなのよ!」
「大奥様は――」
大垣さんの言葉が最後まで届くことはなかった。小林はその瞬間、手に持っていたバッグの中から一本の果物ナイフを取り出したのだ。それを見た大垣さんは、見る間に顔色を失った。「小林さん……!な、何をする気なの!?」
「大奥様に会わせて!大奥様のところに連れて行って!」
小林の異常な様子に、大垣さんはすぐに察し、警戒を緩めることなく応じた。「わかりました、落ち着いてください……すぐに大奥様をお呼びしますから!」
大垣さんがリビングへ向かって数歩走り出そうとしたそのとき――冬城おばあさんが、部屋からゆっくりと姿を現した。だるそうな声でぼやく。「昼間っから……何をそんなに騒いでるの?」
だが次の瞬間、彼女の目が鋭くなった。視線の先には、ナイフを握りしめて立っている小林の姿。「香織?……一体、何をしてるの?」
「騙したのね!あなた、私を騙したでしょ!あの日、私の部屋に入ったのは冬城司じゃなかった!――そうなんでしょ!?」
ちょうどそのとき、真奈と冬城が屋敷に到着した。そして真奈は、この光景を目にした瞬間――前世の記憶が鮮やかに蘇った。あの時も、彼女は冬城おばあさんに言われるがまま、冬城に薬を盛らされた。そしてその結果、彼から一生憎まれた。
生まれ変わってもなお、冬城