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Home / 恋愛 / 離婚後、恋の始まり / 第552話

第552話

Author: 似水
「お前!」

里香の表情が一瞬で険しくなった。月宮の態度が、かおるをまるでおもちゃ扱いしているように見えて、怒りが湧き上がった。こんな状況で、かおるを月宮に渡すわけにはいかない。

「もういいでしょ。離れて。かおるを連れて行く権利なんて、あなたにはないわ。それに、彼女の自由を奪うなんて、そんなこと許されるはずないでしょう?」里香は冷たく言い放った。

月宮は眉をひそめ、鼻で笑うように言った。「小松さん、雅之の顔を立てて、こうやって優しく言ってるんだ。お前、まさか自分がそんなに特別な存在だとか勘違いしてないか?」

それでも里香の表情は崩れない。むしろ、さらに冷ややかさを増していた。「あの人の顔なんか、立てる必要ないわ。失うものなんてもう何もないもの。どうしてもかおるを連れて行きたいなら、私を踏み越えてみなさいよ」

里香の瞳には、固い決意が宿っていた。絶対にかおるを守る――彼女は自分にとって、たった一人の大切な家族なんだから。

その時、かおるが月宮の手に思いっきり噛み付いた。

「いっ……!」月宮は痛みに顔をしかめ、思わずかおるを放した。

かおるはその隙にさっと里香の元へ駆け寄り、「里香ちゃん、わたし、絶対にあんなやつには負けないから!」と震えながら叫んだ。

里香は頷き、かおるを守るように立ちはだかった。「そうよ。わたしが絶対に守るから」

感極まったかおるは、泣き出しそうな顔で里香にすがりつき、今にも全てを捧げたいような表情をしていた。一方で月宮は、女子同士の絆が深まった二人の姿を見て明らかに苛立っていた。

けれど、里香に直接手を出すことはできない。何しろ、彼女はまだ雅之の妻なのだから。

月宮は皮肉な笑みを浮かべながら、冷たい視線でかおるを見た。「まあせいぜい祈ってろ。小松さんがいつまでもお前のそばにいられるといいな」

そう吐き捨てると、月宮は車に乗り込み、そのまま走り去っていった。

月宮の車が遠ざかるのを見届けると、かおるは緊張の糸がぷつりと切れたように、気まずそうに笑った。「やれやれ……こんなクズ男に目をつけられるなんてね」

里香はかおるの手をぎゅっと握り、そのまま車に乗り込んだ。車内ではしばらく無言のままだったが、やがて里香が静かに口を開いた。「うちに来ない?一緒に住もう」

かおるは少し迷った様子だったが、首を横に振った。「ありがとう。でも
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