田中仁は三井鈴と共に天灯を手にして庭へ出た。使用人がタイミングよくライターを差し出し、空気を読んでその場を離れた。
田中陸は少し離れた場所に身を潜めながら、こっそりと顔を覗かせた。
二人が息を合わせて天灯を開き、田中仁が中央の導火線に火を点けると、熱気を受けて少しずつ膨らみ、ゆっくりと彼らの目の前に立ち上がった。
「鈴ちゃん、早くお願いごとして!」
三井鈴は両手を合わせ、心からの願いを込めた。
田中仁もじっと彼女を見つめながら、胸の内でそっと願いをかけた。
――ただ願うことは、毎年毎年、必ずまた会えますように。
「終わったよ」
彼女が目を開けると、その瞳はきらきらと輝いていた。
二人はそっと目を合わせ、手を放すと、天灯は空へとゆっくり浮かび上がり、その距離は徐々に遠のき、やがて小さな点になり、ついには完全に視界から消えた。
「何をお願いしたの?」田中仁は彼女の耳たぶを指先でそっとなぞった。
三井鈴はいたずらっぽくウインクして言った。「言っちゃったら叶わなくなっちゃうでしょ」
「そっか。じゃあ、願いが叶いますように」
二人は再び見つめ合い、田中仁は呼吸を深くして彼女の顎をそっと掴むと、身をかがめて唇を重ねた。少しずつ、深く……
三井鈴は息が詰まりそうになりながら彼を押し返そうとするが、逆にさらに深くキスを受けることになった。
彼女の腰はしなやかで、彼の背筋は弓のように力強く、その抱擁には揺るぎがなかった。
彼女もそっと手を回し、彼を抱き返して、唇を重ねた。
ちょうどそのとき、空気を切り裂くようなタイミングで携帯の着信音が鳴り響いた。
三井鈴は驚いて慌てて彼を押しのけ、顔を真っ赤に染め上げた。まるで熟れたリンゴのように。
「携帯、鳴ってたよ?」
その声はどこか艶めいていて、聞く者の心をくすぐるようだった。
田中仁は手を引き、ふっと深く息を吸い込んだ。
彼にはわかっていた。
このまま続ければ、収拾のつかない大火になってしまうことを。
だが、こんな時に電話をかけてきたのは、いったいどこの間の悪い奴か。
田中仁がポケットに手を差し入れると、最初に触れたのは携帯ではなく、何やら膨らんだ物だった。
そのままそれを取り出し、三井鈴に差し出した。「新年おめでとう」
分厚いお年玉袋、ひと目でそれが中々の重みだとわかる。
田中仁は口