「そうだね」綿は天河と一緒に階段を上がった。
「お前、行く気はあるのか?招待状を用意してやるぞ」天河は、綿がジュエリーを好きなことを覚えている。
「大丈夫よ。玲奈が行けないので、彼女の代わりに行くわ」
「そうかそうか。玲奈は最近も忙しいのか?」
「もちろん。でいうか、パパの誕生日のとき、彼女が特別に帰ってきたんだよ」
「ほう?俺の記憶じゃ、ちょうど休みと重なっただけだったと思うが?」
「パパ……分かってるけど、言わないのが大人の態度ってもんよ」
……
ソウシジュエリーの展示会。
キリナはマスコミのインタビューを受けていた。今日の展示会は非常に盛大で、炎の展示会をも上回るほど人々を驚かせた。
綿は黒いワンピースに身を包み、外には毛皮のコートを羽織っていた。足元はヒール、優雅さと品格を兼ね備えた姿だ。
彼女は今日は玲奈の名義で参加しており、玲奈に恥をかかせないよう完璧に装った。
玲奈から「気に入ったジュエリーがあれば写真を撮って、ソウシジュエリーを応援してね」と言われていたのだ。
業界ではソウシジュエリーが勢いに乗っていると評判だ。この機会にキリナと顔見知りになっておけば、将来的にジュエリーを求める際に、キリナがあまり意地悪をしないだろう。
「桜井さんがいらっしゃいました!」受付のサインエリアで記者たちが声を上げた。
「久しぶりに桜井さんを拝見しましたが、ますます美しくなられましたね!」
「本当ですね、桜井さんは離婚後、どんどん綺麗になっていらっしゃる。逆に高杉社長の方が少し疲れているようですね」
綿は彼らの言葉を聞き、微笑みながらサインエリアで名前を書いた。
彼女は自分の名前をサインしたが、持っているのは玲奈からもらった招待状だった。記者たちが綿に質問すると、彼女はきっぱりと答えた。
「玲奈は雲城にいませんので、彼女の代わりに来ました」
この言葉を、少し早く会場入りしていた陽菜が聞いていた。
陽菜は驚いた様子で、綿もこの展示会に来るとは思わなかった。前日、ソウシジュエリーの話をしたときの綿の無関心な表情を思い出していたからだ。
「まさか、桜井も招待状を持っているなんて……」陽菜は内心で舌打ちした。ソウシジュエリーの招待状は非常に貴重で、簡単には手に入ら