南方信は恵那が綿のそばからやってくるのを見て、尋ねた。「あの人、君のお姉さんだよね?」
「そうよ」恵那は頷き、さっきまでの苛立ちはどこへやら、声が柔らかくなった。「普段マスコミが撮る写真よりずっと綺麗じゃない?あの人たち、美女の本当の美しさを引き出すのが下手なのよ」
「確かに」南方信は笑いながら同意した。
恵那はため息をつき、「家族の中では、姉がいつも一番美しいの」と言いながら、再び綿に目を向けた。その視線には羨望が滲んでいた。
実際、恵那がこれまで綿に対して辛辣な態度を取り続けてきた理由は、ほとんどが嫉妬心からだった。
だが、他人が目の前で綿をいじめるのは、決して許せなかった。綿は何といっても自分の姉だからだ。
実を言うと、桜井家に来たばかりの頃、恵那はずっと不安だった。桜井家の人たちが自分を受け入れないのではないか、冷たい目で見られるのではないか、と。
だが、そんなことは一度もなかった。特に綿は、最初に親切に接してくれた人だった。
「私は恩知らずじゃないからね。その恩はちゃんと覚えてる」恵那は心の中で呟いた。彼女の生意気で強気な態度は、全て自己防衛のための手段だったに過ぎない。
「でも、君も結構可愛いよ」南方信が笑いながら言った。
恵那はすぐに彼を見つめた。その言葉が本心なのか、それともただのお世辞なのかは分からない。
それでも、その一言が心にじんわりと響いた。
南方信は、恵那が密かに憧れている男性であり、目標にしている人物でもあった。
そんな素晴らしい人が、自分を褒めてくれるなんて――彼女の心の中で小さな花火が上がった。
「ありがとう、南方さん」恵那は口元を上げ、甘い笑顔を浮かべた。
南方信はその笑顔に少し驚き、もう一度恵那をじっと見つめた。
業界内では、恵那に近づかない方がいいと言われている。彼女は毒舌でトラブルを招きやすい厄介者だというのだ。
南方信のマネージャーもよく注意していた。しかし、同じ事務所に所属している以上、完全に避けるわけにもいかない。
ただ、しばらく接してみて、南方信は彼女について少し違った印象を抱いていた。確かに性格はきついが、仕事に対しては真摯で、独自の美学を持っている。
彼女が怒りっぽいのは、問題がある状況に対する正当な苛立ちが原因であり、理不尽なわがままとは違うのだ。
例えば、普段雑誌のカバー