綿が振り向くと、そこには輝明とキリナが並んで立っていた。
キリナは今日、とても美しく着飾っていた。女性らしさにあふれたその姿に、綿は初めて「キリナと輝明はお似合いだ」と思った。以前はキリナがあまりにも「女らしすぎて」、輝明には釣り合わないと感じていたのだ。
一方、輝明は黒のスーツを纏い、堂々とした姿を見せていた。一目でオーダーメイドと分かる仕立ての良いスーツは、彼の洗練された体型を引き立て、気品と優雅さを際立たせていた。
綿は二人に微笑みかけ、軽く会釈して挨拶をした。「黒崎さん、高杉さん」
キリナも微笑み返し、「お二人はご存知の仲ですから、高杉さんをお連れしてご挨拶をと思いまして」と言った。
その瞬間、綿の笑顔は少し引きつった。自分と輝明がただの知り合いどころではないことは、キリナがよく分かっているだろう。わざわざ輝明を連れてきた意図は何だろうか。表面上は何も言わずとも、心の中では「分かる人には分かる話よね」とため息をついていた。
一方、輝明の綿を見る目は、どこか熱っぽさを帯びていた。その視線はキリナを嫉妬させるには十分すぎた。
どんなときでも、どこにいても、綿がいる場所では彼の目は彼女を追う。他の誰も彼の視界に入らないのだ。大学時代もそうだった……
大学時代、みんなは「輝明は綿を愛していない」と噂していた。だが、キリナはそうは思わなかった。人を好きになると、口では隠せても、目には隠せないからだ。
彼が綿と結婚したとき、キリナはますます確信した。「やっぱり彼は綿を愛しているのだ」と。
しかし、あるとき誰かが「輝明が本当に愛しているのは嬌だ」と言ったとき、彼女は衝撃を受けた。自分の判断が間違っていたのか?でも、彼が綿を見るその目には、確かに愛があったのに……
輝明の視線があまりにも熱かったせいか、綿は気まずさを感じ、少し居心地が悪くなった。彼が何も言わないので、仕方なく綿が先に口を開いた。
「高杉さん、最近お疲れのようですね。お身体には気を付けてくださいね」綿は柔らかく微笑みながら言った。
「桜井さん、ご心配いただきありがとうございます。気を付けます」彼は礼儀正しく答えた。
綿は再び笑顔を浮かべ、キリナに目を向けた。「黒崎さん、高杉さんとどうぞごゆっくり。私はこのまま展示を見て回りますね」
キリナはすぐに頷き、「それがいいですね」と答えた