綿の表情が一瞬で冷たくなった。彼がこちらを見ているのは分かったが、なぜ見るのか理解できなかった。バタフライのジュエリーが発表されることと、自分に何の関係があるというのだろう。
キリナはすぐに輝明に目を向け、「高杉さんもバタフライにご興味がおありですよね?」と尋ねた。
「ええ」輝明は短く答えた。
「でしたら、私のあのジェイドを買わずに、バタフライの新作ジュエリーをそのまま購入すればよかったのでは?」キリナは少し意外そうに言った。
綿はその言葉に反応した。
なるほど、キリナのジェイドジュエリーを買ったのは輝明だったのか。
それでキリナがあっさりと売却を決めたのも納得がいく。展示会が終わるのを待つ必要すらなかったわけだ。
輝明は淡々とした声で答えた。「それぞれのジュエリーには異なる意味があり、贈る相手も違う。だから、どちらも必要だったんです」
確かにその通りだ。
ジェイドは端正で優雅なデザインで、年配の人への贈り物に最適。一方で、バタフライのジュエリーは若者向けで、トレンドを意識した高級品だ。
そのとき、キリナが綿に目を向け、「桜井さんはバタフライをご存じですか?」と尋ねた。
「バタフライが男性か女性かも知らないんですが」綿は曖昧に返事をした。
「女性ですよ。若くてとても才能のある方です」キリナは笑顔で答えた。「友人が一度彼女に会ったことがあるんですが、彼女のことを絶賛していました」
「黒崎さんも、バタフライがとても優秀だと思っているんですね?」綿はすぐに問いかけた。
キリナは頷きながら、「もちろんです。バタフライが優秀でないはずがありません」
綿は微笑みながら心の中で思った。いいわね、キリナも自分を褒めてくれるなんて。それだけで十分満足だ。だが、一瞬考え込み、再び口を開いた。
「ところで、黒崎さんはバタフライの作品がとてもお好きなんですね?」
「ええ、大好きです。バタフライの作品を嫌いになる人なんていませんよ」キリナは即座に答えた。
「じゃあ、もしバタフライが本格的にジュエリーデザインに復帰したら、ソウシジュエリーはどうなるんでしょう?」綿は首を傾げながら言った。
その質問に、隣にいた輝明が綿を見つめた。その目には、以前には見られなかった強さと挑戦的な光があった。
綿の変化に気づいていた。離婚してからの彼女は、以前とはまるで別人の