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Home / 恋愛 / 高杉社長、今の奥様はあなたには釣り合わないでしょう / 第0883話

第0883話

Author: 龍之介
彼女が助手席に座らない限り、彼は車を出さなかった。そして車から降りることも許されなかった。

市街地から遠く離れたこの場所では、当分の間車も通らないだろう。綿が帰りたいなら、仕方なく助手席に座るしかない。綿は観念して車から降り、助手席に座った。

「行きましょう!」綿は不満げに言う。

輝明は口元を軽く歪めた。彼女を思い通りにするのは簡単だった。ただ彼がその気になるかどうかだけだ。

車は非常に安定した運転で、速度も控えめだった。綿はスマホでツイッターのニュースを見ていた。

易が今日、記者会見を行ったという記事があった。彼は陸川グループの内部が混乱していること、複数の工場が操業停止に追い込まれていることを認めた。

輝明が易の貨物を奪ったことが、多大な損害をもたらしたのだ。

記者たちが嬌について尋ねると、易は険しい表情を見せ、アシスタントが即座に記者を押しのけて、「この件についてはコメントできません」と言った。

最終的に易は会社のビルに入っていき、記者たちは何も聞き出せなかった。記事のまとめには「陸川グループの破綻が近い」と匂わせるような内容が含まれていた。

会社が潰れるなんて、本当に、一瞬の出来事だったりする。

「数日間も会社に行っていないのに、大丈夫なの?年末で忙しい時期でしょう?」綿は淡々と尋ねた。

「森下が対応している」輝明は答えた。

「森下がいくら優秀でも、一人で全てをこなすのは無理じゃない?」綿は指摘する。

「何だ、森下を心配しているのか?」輝明が冷ややかに嗤う。

綿は眉をひそめた。真剣に会話をしようとしているのに、彼はなぜそんな歪んだ物言いをするのか理解できなかった。

「友人として、少し気になるだけよ。それがどうしたの?」

輝明は彼女をちらりと見た。友人?その言葉に一瞬戸惑いを覚えた。

どうりで、ここ数年、森下がずっと綿に対して好意的だったわけだ。

彼が嬌と付き合っていた三年間、森下は少しでも隙があれば輝明を綿の元に引き寄せようとしていた。

みんなは綿のことを「悪者」だと思っていたけれど、森下だけはそう思ったことがなかった。

今でも、彼には分かる。森下が何度も「若奥様」と綿を呼びかけそうになっているのを、彼は感じ取っていた。

「彼なら大丈夫だ」

綿はそれ以上話を広げることをやめ、窓の外に視線を向けた。

しばらくして、
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