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Home / 恋愛 / 高杉社長、今の奥様はあなたには釣り合わないでしょう / 第1063話

第1063話

Author: 龍之介
秋年はそれを聞くと、すぐに後を追った。

彼は自分を指さしながら、不思議そうに尋ねた。

「俺、そんなに冷静じゃないように見えるか?

俺はめちゃくちゃ冷静だぞ。恋愛に関しては、この世界で一番冷静な男だ……」

綿と輝明はソファに座ったまま、秋年の話を聞いていたが、思わず赤面しそうになった。

恋愛に関して言えば、彼はこの世で最もチャラい男のはずだった。

何をトチ狂って、こんな恥知らずなことを言い出したのか。恥ずかしくないのか?

まったく、目を閉じて嘘をつく才能だけはピカイチだ。

綿はコーヒーを一口飲み、立ち上がった。

「行こう」

輝明は顔を上げ、目の前に立つ綿を見た。

ん?

綿はポケットに手を突っ込み、だるそうに輝明を見下ろして言った。

「二人きりにしてあげたほうがよくない?あなたの友達も、私たちが一緒にいるのは望んでないでしょ?」

「じゃあ、君と玲奈は……」輝明は眉を上げた。

秋年がどう思うかなんて関係ない。彼自身も、綿と一緒にいる時に邪魔者がいるのは嫌だった。

綿が玲奈と一緒にいなければ、それこそ自分にとっては最高の展開だ。

もしこの旅行がうまくいけば、きっと二人の関係に新たな一歩が踏み出せるはずだ。

「玲奈には誰かがいればそれでいい。誰でもいいの」綿はそう言って、さっさと出口へ向かった。

輝明はそんな綿を見送りながら、ちらりと秋年のほうを見た。親友はまだ玲奈に「本気だ」と必死に説明していた。輝明は小さく笑い、後を追った。

承応の通りはとても賑やかで、周囲は華やかに飾りつけられ、まるで春が去り、また春が来るような不思議な感覚に包まれていた。

そよ風が顔を撫で、なんとも心地よかった。

高級ブランド店を出て少し歩くと、賑やかな小さな町に辿り着いた。

綿は町中を歩きながら、承応ならではの文化を肌で感じていた。自然と身体の力が抜け、心からリラックスできた。

承応らしい店が軒を連ね、それぞれの店先には様々な装飾が飾られていた。

綿はどれもこれも、ひとつひとつ気に入った。

「このうさぎ、すっごく可愛い」

綿は手作りのうさぎの泥人形を手に取って言った。

輝明はずっと綿だけを見ていて、道中の景色などまったく目に入っていなかった。

頭上の傘が強い日差しを遮っていた。

その隙間から時折差し込む光が、綿の顔に柔らかく降り注いでいた。
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