夜、食事の席で、玲奈は綿を引っ張って一気に愚痴をこぼした。
「全然メッセージ返してくれないじゃん!綿、あんた変わった!
やっぱり女って男ができると、すぐ親友を捨てるんだよね!男がいない時だけが、一番私を愛してくれるのよ!
綿、私は今、歯ぎしりしてるからね!もう、注文ばっかしないで!」
綿「……」
彼女はそっと顔を上げ、無邪気な顔で玲奈を見つめた。
なに?
玲奈「……」
あああああああ!
綿は真剣な顔で言った。
「二人で食事してるのに、あんたが料理頼まないから私が頼んでるんだよ?文句言うなら、後にして!」
玲奈は腕を組み、不満げな顔で隣のグラスを取り、酒を一口飲んだ。
綿はメニューを玲奈の前に押しやった。
「何か追加する?」
「いらない」玲奈は鼻で笑い、メニューをウェイターに渡した。
ウェイターはうなずき、そのまま離れていった。
綿は両手で頬杖をつきながら、玲奈がさっき言おうとしていた話を待った。
玲奈はため息をついたが、もはや話す気が失せていた。どうせ秋年の愚痴を言いたかっただけだった。
秋年と輝明は、こちらで偶然古い友人に会い、今夜はその約束があった。
そのおかげで、綿と玲奈は久しぶりに静かな時間を過ごせていた。
玲奈はグラスの酒を飲み干し、スマホを手に取ろうとした。その時、エレベーターから見覚えのある人物が現れた。
玲奈が呆然と立ち尽くすのを見て、綿も彼女の視線を追った。
そこにいたのは、承応の御曹司、翔太だった。
綿と玲奈があまりにも目立っていたのか、それとも位置が中心だったからか。
翔太は顔を上げた瞬間、二人を見つけた。
そして、条件反射のように踵を返して帰ろうとした。
綿は思わず笑ってしまった。
この子、きっともうトラウマになってるだろうな。
彼女たちを見るたび、あのバーでの恥ずかしい出来事を思い出してしまうのだろう。
綿は眉を上げ、隣の酒杯を手に取り、顎をしゃくって翔太に合図した。
翔太「……」
これはもう挑発に他ならなかった。
普段は自分が人を挑発する側だったのに、今では逆に挑発される側になっていた。
くそ、腹立たしい!
だが、翔太は怒るどころか、にやりと笑った。
平静を装い、友人とともに席に着き、綿に向かって笑顔を向けた。
綿は顔をそらし、玲奈の茶化す声を聞いた。
「桜井さん、