Chapter: レオンとアスナ運命?!俺は思わず顔をしかめた。「どこの乙女だ?!勘弁しろよ。こんなクソみたいなもんは運命じゃねえ。悪縁っつーんだよ」切っても切れない縁。どこまでも俺を追ってきた執念深さは、まさに悪縁と呼ぶにふさわしい。悪役令息の俺と、俺に執着し、俺のためなら世界を超え誰を犠牲にしてもいいというお前。もつれにもつれ、拗れまくった俺たちだからこそ、運命だとかいうよりも悪縁というほうがしっくりくる。泥臭いそんな縁だからこそ、俺はそれが愛おしいと思ったんだ。お前を許し、受け入れてもいいと思えたんだぞ?なんてことは言ってはやらないけどな。「酷いなあ。でもいいよ。俺は運命だって思ってるから。これからずっと一緒ならなんだっていいんだ」「……うーん」そろそろレオンが目を覚ますか?俺はアスナに離れているよう指示し、レオンの横にしゃがみ込んだ。そっと肩に手をかけ揺すってみる。「おい、大丈夫か?」パチ……パチ……。数度の瞬きののちにレオンの碧い光彩が姿を見せた。「…………アスカ?私は……どうしたんだ?」額に手を当て、ぼんやりした目で頭を振るレオン。「……おかしな夢を見た」おぼつかない口調で言いながらゆっくりと起き上がるのに手を貸してやる。「ありがとう。ああ……なんだか頭がぼうっとする。何があった?何故私は倒れていたの?」うむ。どうやらアスナに乗っ取られ
Terakhir Diperbarui: 2025-05-04
Chapter: レオンさて。どうしようか。アスナが抜けた衝撃で気を失い床に倒れているレオンハルトを眺める。起こしたほうがいいのだろうか。アスナに魔力をかなり使われたようだし、しばらくこのまま寝かせておく?いや、音声遮断を解いて護衛たちを呼び、連れ帰ってもらうべきか?しかし、こうして見てもアスナとレオンはよく似ている。髪色が違うから印象は違うが、基本的な顔の造りはほぼ同じだ。不思議なものだな。ちら、とアスナを見れば、俺が何を考えていたのか察したようだ。「なんか自分と同じ顔を見るって変な気分だな」と苦笑した。「お前が前世であれだけモテたのも納得だ。なにしろ異世界の王子様と同じ顔だったんだからな。元々こっちに生まれるはずだったんじゃねえの?レオンと双子とかでさ」適当に言った言葉だったが、ふと自分の言葉になにか引っかかりを覚えた。「…………いや、あり得るな。お前の異常なスペックってある種作り物めいてたし。お前は元来こっちに生まれるべき魂だった、なのに間違えてあっちに生まれちまった。だからみんな異様にお前に傾倒しやがったんじゃねえか?小学校んとき避けられてたのだって、嫌われてたっつーよりもどちらかというとカッコよすぎて遠巻きに崇められてた、に近かったし。そう考えると、レオンとの異常な親和性にも説明がつくんだよ。あんだけ馴染んでたのにも納得できる」「……それはわからないけど。確かに俺はどこか『違う』って思ってた。世界にとって俺は異質な存在なんじゃないか、って。漠然とした違和感っていったらいいのかな?飛鳥だけなんだよ。俺に普通に接してくれたの。飛鳥だけが特別だった。お前といる時だけは俺が世界に存在することを許さ
Terakhir Diperbarui: 2025-05-03
Chapter: アスナと飛鳥とアスカとりあえず、アスナの設定はこうだ。アスナは「高位精霊」実体のないアスナは、自分とそっくりの外見を持ち魔力の相性まで良いレオンハルトを見つけ、その身体を自分のものとしようとしていた。俺はアスナと交渉し、アスナの身体を魔力で実体化してやる代わりにアスナを俺の従魔にした。今後アスナは俺の従者として常に俺に付き従うことになる。元はと言えば、俺関連でこっちの世界に来てレオンに憑りついたともいえるのだが、そこは伏せておく。前世の云々、ゲームで云々と言ったところでどうせ理解できまい。アスナを高位精霊とした方が理解しやすいだろうし、レオンに恩も売れる。一石二鳥だ。アスナにもこの設定を言い聞かせ、余計なことは言わないよう念を押しておいた。「いいか?前世だとか俺を追ってきたとか言うなよ?言ったら即その身体を取り上げるからな。お前と俺は今日初めてここで会った。分かったな?」「えー?じゃあ、『アスカに手を出すな』って言っちゃダメ?」「手を出されるつもりはないが、お前にそれを言う権利はない。黙ってろ」「……仕方ない、分かったよ。俺は下僕だしな。アスカに全て従うよ。これでいいだろ?」肩を竦めて見せる姿は、前世のアスナそのもの。なんだか妙な気分だな。言っている内容は別として、まるで昔に戻ったみたいだ。ふと浮かんだ考えをブルブルと頭を振って吹き飛ばす。「あのな、確認しとくぞ?見ての通り、俺の外見も性格も前世の俺とは違う。お前とは違うんだよ。俺は飛鳥ってわけじゃない。前世の記憶があるだけだ。飛鳥は死んだんだ。分かってるよな?」「……うん。アスカが思う以上に分かってるよ。言われなくても俺が一番分かってる。…………俺がどれだけ後悔してどれだけ絶望したと思ってるの?」
Terakhir Diperbarui: 2025-05-03
Chapter: 俺の下僕、爆誕!「そうと決まればさっさとやるぞ!」襟首をつかんでアスナを立たせる。「……で、俺はどうしたらいい?」神妙な顔で俺に問うアスナに、胸を張って請け負ってやる。「お前はそこに立って俺の言う通りに繰り返せ。……正直に言えば、俺も従魔契約なんぞやったことがない。授業で習うのもこれからだ。だから、ぶっつけ本番という形になるが……大丈夫、お前も知っての通り、異世界ものに関しては前世でしっかり履修済みだ。同じようにやればいける!はずだ!任せておけ!まあ、最悪お前が消えるだけだ。問題ない!」とたんアスナが吠えた。「問題しかないよね?!俺、消えたくないんだって!せっかくアスカとまた会えたんだよ?!どんだけ苦労したと思ってんの?!」「しょうがねえだろ!前世のお前の行いのせいなんだ、我慢しろ!俺の傍に居させてやるだけありがたいと思え、このストーカー野郎が!!」ビシっと指を突き付けてやれば、分かりやすくショックを受けるアスナ。「ひ、酷え!俺、一応お前の親友だよな?そりゃ……ちょっとばかり行き過ぎちゃったけど……」「ほら、自覚あるんだろ?ちょっとばかり、じゃねえよな?行き過ぎもいいところだぜ。親友じゃねえ、親友だった、だ。高校では酷いもんだった。俺を支配しようとしやがったくせに!ちょっと消えるリスクがあるくらいいいだろうが。チャンスをやるだけ感謝しろ!」とにかく、これしか道はないのだ。やるしかない。それが嫌なら……消す。それが道理だからだ。本来ならばこの世界にあるべきではないのだ、アスナは。
Terakhir Diperbarui: 2025-05-02
Chapter: アスカとアスナ3ズザザザーーーッツ!!受け身を取る間もなくいきなり俺に殴られたアスナが、ぶっ飛んでいく。ドガアッ!壁にぶつかったアスナが、真っ赤になった頬を抑えながら涙目で叫んだ。「い、いきなり何すんだアスカッ!」俺はそんなアスナの前に立ち、ジロリとアスナを睨む。「痛いか?」「はぁ?!痛いに決まってるだろ?!」「うむ。良かったぜ」そりゃそうだ。渾身の力で殴ったからな。前世とは違い、今生の俺は地道に身体を鍛えてきたのだ。威力には自信がある。「いいわけねえだろ!」「良いんだよ」よいしょ、とアスナの前にしゃがみ込み、ぶすくれるアスナの赤くはれた頬を遠慮なしに突いてやる。「こ、こら!痛いって!!やめろよアスカ!「安いもんだろ?それでチャラにしてやるって言ってんだよ」ニヤリを片方の唇を上げて見せれば、パカンとアスナの口が開いた。「聞こえなかったか?これで前世のことはチャラだ」アスナの顔が面白いくらいに真っ赤に染まっていく。「え?……は?あ、あの……え?」ぶすくれていたのが嘘のようにオロオロと慌てだすアスナ。こんな顔もするんだな、お前。余裕の顔してるより、この方がいいよ。「しょうがねーから、チャラにしてやるっつってんの!はは!おもしれー顔!ハンサムも形無しだな?」遠慮なくゲラゲラと笑ってやれば、眉尻を下げた情けない顔でへにょりと口を曲げた。口を開きかけてはまた引き結ぶアスナ。それを数回繰り返し、ようやく彼は言っ
Terakhir Diperbarui: 2025-05-01
Chapter: アスナとアスカ2高校に入ってから、アスナはおかしくなっていった。変わらない笑顔で俺を特別扱いするアスナ。でも、アスナに俺の言葉は届かなくなった。何を言っても「気のせいだよ」「俺が守るから大丈夫だよ」「俺がいればいいでしょう」そういうことじゃあないんだ、と言っても聞く耳を持たない。どんなに話をしても、うわすべり。中学時代、二人で笑いあった日々が懐かしかった。馬鹿なことを言い合って、くだらないことが面白くて。俺のことなのに、まるで自分のことのように怒っていたアスナ。俺のために泣いてくれたアスナ。たぶん、人生で一番幸せで楽しかったあの頃。俺と楽しそうに話すアスナを見て、最初はアスナの外見に気後れして遠巻きにしていたクラスメートも徐々にアスナに話しかけるようになった。アスナはそれを普通に受け入れていて、高校時代のように必要以上に俺にベッタリということもなく、あくまでも一番の親友として俺を扱った。おかしくなったのは高校でアスナの人気が爆発してからだ。周りがアスナから俺を排除しようとし、それに苛立っがアスナは必要以上に俺を特別扱いするようになったのだ。それはどんどんエスカレートし、俺はアスナが分からなくなった。俺たちはどんどんすれ違い、どうしようもないところまでいってしまったのだ。あの事故が無ければ、いつか俺たちが分かり合う日も来たのかもしれない。だがあの不幸な事故により、アスナの中の俺は、最後の最後にアスナを拒絶し、逝った。俺は俺の逝った後のことは考えないようにしていた。考えても仕方がないと目をそらし、今を楽しむことに夢中になってしまっていたのだ。そこには「俺を振り回したんだから、お前らも少しは苦しめ」という想いもあった。ここまでアスナを追い詰めたかったわけじゃない。ただアスナが受け止めてくれなかったやり場のない俺の気持ちを、分かって欲しかっただけなのだ。あくまでも事故は事故なのだ。どうしようもないことなのだ。だからきっとすぐに立ち直り、アスナの人生を歩んでくれるだろうと思っていた。その結果が今俺の前にある。俺の何気ない一言を大事にしていたアスナ。世界を超えて俺を探し出し、追いかけてきたアスナ。俺と共にいるためだけに、レオンハルトの身体を乗っ取ってまで約束を果たそうとしたアスナ。アスナは壊れている。間違いない。だけど、少しだけ嬉しいと思
Terakhir Diperbarui: 2025-04-27