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闇落ちレオン

Author: をち。
last update Huling Na-update: 2025-08-06 18:39:53

「おい、レオン。なんだその顔は」

声をかけるとわずかにビクリと身を震わせ、だが瞬時に何事も無かったかのような笑みを浮かべて見せるレオン。

「ああ、アスカ。おはよう。どうしたんだい?こんな時間に君が顔を見せるなんて珍しいね?」

本人は普通にしているつもりだろうが、俺からしてみれば仮面を被っているようにしか見えない。

「お前が腐っているからだろうが。そこのお前のお友達に連行されたんだよ。『レオンを何とかしてくれ』ってな」

側近コンビが慌てたように唇の前に指をあて「黙っていろ」とジェスチャーしてきたが、そんなことは俺の知ったことではない。

「……ワイマールとカイザーが?」

目を軽く見開いて側近に視線をやるレオン。以外だ、という表情。

「忠犬だな」

本心を混ぜて茶化してやれば、少しの信愛を乗せて苦笑された。

「まあな。……二人がすまなかったね?勝手に気を回したようだ」

「気を回られたくなければ、そんな顔を見せるな」

グイっと顎の下に手を入れ、顔を持ち上げてやる。

「寝てないだろう?目の下が黒い。おまけに顔色も悪いな」

見たままを指摘してやると、パシッと手をはたかれまるでイヤイヤするように顔を背けられた。

「そりゃあ……10年も想ってきた婚約者に捨てられたんだ。仕方ないだろう?

こういうのは、見ないふりをするのがマナーなんじゃないか?」

フッと漏らされた笑みはらしくもなく皮肉げで暗いものだった。

いつも陽の光を背負っているようなレオンがこんな顔を見せるのは初めてだ。

今までどれだけ俺が拒絶しようと、毒を吐こうとこんな顔をしたことはなかった。

それを言うなら、俺の手をはたくなんて今までのレオンならあり得ない。

それだけ弱っているのだということか……。

本当は放っておく方がいいのだろう。俺は振った側になるのだから、猶更。

だが……

「断る」

「なら………は?!え?君、いま『断る』と言ったのか?!何故?」

驚きのあまり暗い感情もどこかにいってしまったらしい。素で驚いているレオンに、してやったりと渾身の笑みを贈ってやった。

「俺がこれまでお前の話を大人しく受け入れたことがあったか?俺はどんな時もやりたいようにやるし、言いたいことを言う。

こうするのだと決めたらたとえ断頭台の前に立とうとやる。それが俺だ。

これまでキラキラした顔しか見せなかったお前が弱ってるんだぞ?そんな面白い顔、見
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