Chapter: 二十二話 大切な人を失う怖さ ~アルフレッドSide~ 私の父上は本当に美しい方で、子供の私から見ても女性と見紛うほどの透き通る肌に艶めく長い髪、形の良い唇はピンクに色付き、アイスブルーの瞳はいつも柔らかく弧を描いて優しく微笑んでいた印象だ。 儚げな雰囲気も相まって、子供ながらに守ってあげたい気持ちになる人だった。 そんな見た目からか老若男女問わず愛されていた。 でも父上が愛しているのは家族だけで、母上といる時は本当に嬉しそうな表情を見せる。 よく笑うし、すぐに母上にキスをして私を呼び寄せ、私にも沢山のキスをくれた。 私は両親が大好きだった。心から。 でも医師から父上はもともと体が強くなかったので、あまり長生きは出来ないだろうと言われていたのを覚えている。 それでも家族で健康に気を使い、何とか父上を長生きさせようと必死だった。 私が成人し、23歳までは生きてくれていたけれど、父上が41歳の時に短い人生に幕を下ろした。 私も愛する父親を失って茫然自失だったけれど、母上のショックはそれの比ではなく……当主としての仕事に追われ、一カ月ほど母上とまともに会えずにいたある日、ようやくゆっくり会えると母上の自室に向かったところ、変わり果てた母がいた。 髪は真っ白になり、私の事を幼い頃のアルフレッドだと思っている。 「アル、やっと顔を見せてくれたのね。あなたはまだ5歳なのだから、勉強させすぎも良くないとお父様と話していたところなのよ。ねぇ、あなた?」 「はは、うえ…………」 母上は返事が返ってくるはずがないのに、何もない虚空を見ながら父上に話しかけていた。 でも彼女の中で父上は生きているようで、何かに対して言葉を返している。 母上を気遣う侍女の目に涙が溢れていた。 そう、母の心は退化してしまったのだ。 父上がいた頃の幸せだった時間に――――母上の心は耐えられなかったのだ、父上を失い、私にも会えない日々に。 私は自分の行いを猛烈
Terakhir Diperbarui: 2026-05-05
Chapter: 二十一話 ※フレド様がしてほしいこと 「シャーリー?」 「はぁ……フレド様。私はあなたのものですが、あなたも私のものだという事を忘れないでください」 「え?」 私は自分の中にある彼の剛直を引き抜き、彼の精と私の愛液まみれのソレを口に含んだ。 「シャーリー!汚いからっ」 「ひょんはほとはひはひぇん(そんな事ありません)!」 「くぁっ、しゃべらない、で……」 「ん、んんっ」 裏側を舐めている時が一番気持ち良さそうに見えて、その部分を強く舌で舐ってあげると、嬉しそうに腰が揺れていた。 可愛い。 もっと私の愛撫に反応するフレド様が見たい。 自分の中で彼に対する支配欲みたいなものが湧き、先端を口におさめて強く吸い付いた。 「あぁ!それ、だめぇ……!」 ここが気持ちいいんだわ。 じゅぅっと一生懸命に吸ってあげると、悲鳴にも似た嬌声を上げるフレド様 「はぁぁっ、あぁ!も……イク……イッ……~~!!」 突然彼の先端から液体が溢れ出てきて、そのまま喉の奥で飲み込んだ。 彼の全てがほしい。 こんな風に口でイかせてあげられるのも私だけ。 精が溢れ出る熱塊を綺麗に舐めとりながら舌を這わせていく。 「あ……ぁ……シャーリー……また大きくなっちゃうから」 「ん……いいの。何度でも」 彼の欲望がまたガチガチに溜まってきたので、私は立ち上がり、彼の股座に馬乗りになった。 「何を……」 フレド様は分からないフリをして、でも期待の目を向けているのが手に取るように分かるので、期待に応えようと思う。 「フレド様がしてほしい事をするのです」 自分の入り口に彼の先端を擦りつけ、勃ち切った剛直をゆっくりと沈めていく。 「くッ……あぁぁ……!」 「ふぁ……んっ…………」 この体勢だと奥深くまでしっかりと入り、彼の先端が私の奥をこじ開けてしまいそうなほどだ。 「あ……深ぁ…………ッ」 思わず漏れ出てしまった声。 それに反応したフレド様が、私の腰を両手でガッチリとつかんだ。 「シャーリー、君の最奥が吸い付いてくる。そんなにほしいならあげないとね」 ズンッと一突きされ、私の体は天辺からつま先まで電流が走ったように痺れ、体を震わせる事しか出来ない。 「あっ……は……っ」 「もっとほしいだろう?」 意地悪な言葉を言いながら両手で腰を上下に揺さぶり、私の最奥を抉るように穿っていく。
Terakhir Diperbarui: 2026-03-26
Chapter: 二十話 ※私のモノ 「や、ぁ……見ないで……!」 「もう濡れてるのが布越しでも分かる……可愛い…………」 突然、蜜口にちゅうっと勢いよく吸い付かれ、体は大きく跳ね上がった。 見られているだけでも羞恥でどうにかなりそうだったのに……! 私の足はガクガクと震え、快感で頭の中が真っ白になっていく。 「はぁっ、…………んぁっ……だめぇ……」 布越しなのにぴちゃぴちゃと淫靡な音がしてくる。 「シャーリー……美味し…………もっと、もっとだ……」 彼の舌が花蕾を見付け、舌の先で転がし始めた。 そして追い打ちをかけるように、すっかり濡れそぼった私の中に彼の指がねじ込まれ、気持ちいい部分を的確に刺激してくる。 「やぁっ、だめっ、ソコ……すぐイッちゃう……!!」 下着の隙間からぐちゅぐちゅと中をかき混ぜられ、舌は執拗に花蕾を刺激してくる。 その度に快楽の波の呑まれていくので、もうどのくらい達ったのか分からない。 「あ、あっ、もぅ……だめ……またイクッ……ふぅっ……~~~!!」 壁にもたれながら腰を浮かせ、ガクガクと痙攣を繰り返した。 足にはもう力が入らなくて床にヘタリ込みながら、蜜口からは愛液が溢れ、彼の手をトロトロにしてしまう。 「シャーリー、見て。こんなに溢れて……」 わざと見せつけるように蜜にまみれた自身の手を舐め上げるフレド様。 「だめです……汚いのに…………」 「もっと欲しいくらいだ。ああ、まだ溢れてる……全部飲み干してあげなきゃ」 床は私の愛液で濡れてしまい、それを見たフレド様は私の両足を持ち上げた。 器用に下着を脱ぎ去られてしまい、床に寝転びながら両足を広げられ、全てが彼の前に露わになってしまう。 「やっ!全部見えちゃう……!」 まるで恥部を差し出すような形になった私は、室内が暗いとは言え、羞恥に悶えた。 そんな私とは反対に、フレド様は恍惚とした表情で舌なめずりしている。 「全部見せて。中まで全部……綺麗なピンクの襞がヒクついて、私を待っているかのようだ」 「やぁ……だめ……っ」 まるで視線だけで犯されているかのように錯覚してしまいそう―――― 彼の指によって広げられた蜜口を彼の分厚い舌が舐っていく。 「ひぃんっ」 「シャーリー……君のココに私の形を覚えさせないと。1か月も私から離れてしまうなんて心配
Terakhir Diperbarui: 2025-12-22
Chapter: 十九話 ※三日間ずっと一緒 馬車が去った後、静寂に包まれた森は月明りと虫の鳴き声で、怖いほどに美しかった。 フレド様と二人きり……本当に誰もいない。 彼の顔を覗き見ると、いつものように優しい微笑みを私に向けている。 「フレド様、こちらの別荘はどのような用途で建てられたのでしょうか?」 「ここはね、母の療養目的なんだ。父が亡くなってとても憔悴してしまった母が、邸からも離れて、全ての事を忘れられるように」 「お母様の……そんな大事な場所に来ても良かったのですか?」 「ああ。もう母は立ち直って邸で生活しているし、誰も住んでないから問題ないよ」 そんな大切な場所を私に見せたいと連れて来てくれたんだと思うと、胸がきゅっとなる。 「フレド様、嬉しいです」 私はとびきりの笑顔で応えた。 普段はあまり笑顔は得意ではないけれど、彼に喜びを伝えたかったから。 空を見上げると無数の星たちが煌めき、私たちを祝福しているかのように感じた。 「シャーリー、私も君をここに連れて来る事が出来て、とても嬉しいんだ。さぁ、中に入ろう」 「はい」 彼に女性として手を引かれて中へ入る……ただそれだけなのに、胸が高鳴ってしまう。 約1か月後には軍事演習に行かなくてはいけないけれど、その前に彼との時間を胸に刻んで行きたい。 建物の中は比較的最近まで使用されていたのか、とても状態が綺麗で、何もかもすぐに使えるようになっていた。 もっとも今は初夏なので暖房器具なども使う必要はないし、使うとしたら調理道具くらいかしら。 フレド様のお母様の療養目的という事もあり、一階で全てがまかなえるような造りになっていて、二階は主に荷物置き場や客室などしかなかった。 「ここで三日間、私と二人きりで過ごそう」 「え……三日間?」 「そう。ご両親にも許可は取っているし、必要な物は一日に一回、御者が持ってきてくれる」 「ちょ、ちょっと待ってください!明日帰るのではないのですか?」 「? そんな話はしてないよ。君に来てほしい場所があるとは言ったけど。三日間時間がほしいとも言った」 「そんな……」 でもそう言われてみれば明日帰るという話はされていない。 もしかして騙されたのでは……そう思うと、胸の中に怒りが湧いてくる。 ちゃんと伝えてくれれば私だってここに来るだなんて言わなかったのに……! 「全てを伝えて
Terakhir Diperbarui: 2025-12-14
Chapter: 十八話 秘密基地へ行こう その後、街の屋台で食べ物を買って食べたり、フレド様に連れられてドレスを見たり、若者のようなデートを堪能したのだった。 「こんなに楽しい日は初めてかもしれません!」 私は噴水広場のベンチに座りながら少し興奮気味に今日を振り返り、フレド様に感想を伝えた。 修練場で剣を振っている時間ももちろん楽しいけれど、今日はそれとは全然違う……これが若い女性が味わうような時間なの? このような時間を過ごせるのなら、デートも悪くないなと思えたのだった。 「私もシャーリーの楽しそうな姿を見る事が出来て嬉しいよ。もちろん剣を握っている時の君も好きだけど」 「フレド様……私は幼い頃から騎士を目指して生きてきました。正直年頃の女児がするような遊びもせず、心のどこかで騎士になる為にはそのようなものは必要ないと自分に言い聞かせていたのかもしれません」 「うん。君はそう思っているようにも見えた……そんな君も大好きだよ。ただ誤解しないでもらいたいのは、私がシャーリーとそういう時間を過ごしたかっただけなんだ。他の女性のようになってほしかったわけではない」 「はい、分かっています。あなたといると色んな発見がありますね」 フレド様の行動には押し付けがましいところが一つもなく、私と楽しみたいという気持ちが溢れていた。 それがとても嬉しくて、私も純粋に今日という時間を楽しむ事が出来たのだ。 頑なに騎士にこだわる私の世界をこんな風に自然と広くしてくれる……そんな彼に対して感謝の気持ちが湧いてくる。 「フレド様、今度何かお礼をさせてください!」 「お礼ならもうもらってるから」 「? 私は何も差し上げてませんが……」 「シャーリーの時間を三日間ほしいと言っただろう?」 「でもあれは……っ」 その先の言葉はフレド様の手によって塞がれてしまう。 この三日間は私が軍事演習に行くので会えなくなる代わり時間だと思ってた……お礼ではないのに。 「いいんだ。でも君がそんなに気にするのなら、これからもらおうかな」 「これから?」 「夜も君と行きたい場所があるんだけど、そこで色々としてほしい事があるから。それでいい?」 夜までデートを考えてくれていたなんて……私は感動し、彼にならなんでもしてあげたい気持ちになる。 大きく頷き、彼の言葉に同意した。 「よかった。嬉しいよ、シャーリー」
Terakhir Diperbarui: 2025-12-13
Chapter: 十七話 婚約指輪選び 馬車を降りて王都の街並みの中に身を投じてみると、思いの外自分も年頃の女性の中に溶け込む事が出来ている事にホッとしたのだった。 「まずはどこに行く予定なのです?」 「今日は一緒に宝飾店に行きたいんだ」 「分かりました」 私はフレド様の行きたい場所を聞き、どこかも分からないのに進もうとするので、フレド様に手を繋がれてしまう。 指を絡ませるようなつなぎ方に、周りの視線が気になって落ち着かない。 「これは恋人つなぎって言うんだって」 「そ、そうなのですか」 「こういうのもシャーリーとしてみたかったんだ。嬉しいな」 「フレド様が嬉しいなら良かったです」 顔に熱が集まって彼の顔を見られないけれど、嬉しそうにしている事だけは分かる。 ちょっと可愛げのない言葉だっただろうか。 私の心配をよそに、彼はつないだ手の甲にキスをしていて、驚いて見上げると、見たことのないほど優しい微笑みをこちらに向けていたのだった。 この笑顔も全部私だけのものなのかと思うと、胸がきゅっと締め付けられるような感じがした。 「ふふっ、フレド様といると新しい発見ばかりです」 「……私もだよ。今が外なのが悔やまれるくらい」 「?」 「このまま宝飾店に行ってしまおう」 彼に手を引かれながら、宝飾店までの道を肩を並べて歩いていく。 彼も背が高いけれど私も女性にしては背が高いので、二人で歩いているとかなり注目されてしまっていた。 でも気にする間もなく宝飾店の前に着いたので、彼の後ろに続いて私も店内へと入っていったのだった。 店内の壁やカウンターには様々なジュエリーが並び、ほとんどが貴族でなければ買えないような宝石ばかりが並べられている。 「まぁ!アルフレッド卿ではありませんか!ようこそおいでくださいました~」 「マダム・ジェッシー、久しぶり。その節は世話になったね、とても助かったよ」 「いえいえ!卿のお願いとあらば、いつでも出張でお伺いさせていただきますわ!」 マダム・ジェッシーと呼ばれる女性フレド様の会話を聞く限り、この宝飾店は出張で貴族の屋敷にもジュエリー類を売りに来るという事なのね。 フレド様がジュエリーを……? 一瞬嫌な思考が頭を過っていく。 まさか、フレド様に限って他の女性に贈ったなんて事はあり得ない。 「今日はどのような御用で?」 「
Terakhir Diperbarui: 2025-12-12
Chapter: 五十一話 <最終話>ここから… 旅の支度はセリーヌや邸の者が全て整えてくれたので、私自身は特に何も用意するものもなく、あとはジークが来るのを待つのみといった感じだった。 イルボーネの街は王家が管理している街なので王族が立ち寄る事も考えて美しい邸が建てられている。 今回は私とジークが婚約した事がすぐに発表されたので、新婚旅行みたいに二人で旅行に出るといった名目らしい。 この発表もとても速やかだったので、お父様と陛下がどこまで知っていたのだろうかと疑念が生まれる。 もう二人とも絶対確信犯だわ。 ジークが私を好きで、こういう流れになるだろうと想定してイルボーネの街に行けと言ったのね。 その通りになるのは少しばかり癪だけど、ジークと婚約したのは素直に嬉しかった。それを公表してくれた事も。 私はこの世界では悪女的な立場だし、彼と婚約出来るとは思っていなかったから。 ジークは光の王子と言われるほど国民のイメージもクリアで素晴らしく、そんな彼と結ばれるのはどこかの国の王女とか、国にとって有益な相手じゃなければいけないと誰もが思っている。 まさか陛下が私との婚約を許可するとは思わなかった――――私が聖なる力を持っていたからなのかもしれないけど。 この力にも感謝しながら使わなきゃね。 「お嬢様、準備完了です!」 「ありがとう、セリーヌ。あなたも来てくれるの?」 「もちろんですよ~~お嬢様の行くところ、セリーヌありです!地獄の果てまでお供いたしますっ」 「ふふっ、ありがとう」 地獄は嫌だけど、セリーヌが来てくれるのは本当に嬉しいし安心する。 そうこうしているうちにジークが到着したのでエントランスホールを出ると、門の前には王族専用の馬車が停まっていて、彼と婚約出来たのだなとヒシヒシと実感する。 婚約した2人が乗る馬車だから外装も美しいわね……ジークは人目につかずに行きたい感じだったから質素な馬車かと思っていたのだけど、陛下にダメだと言われたのかしら。 「
Terakhir Diperbarui: 2026-04-21
Chapter: 五十話 後夜祭の時間に花火を見ながら 「いつまで触っているつもりですか……」 「まぁそう怒るな。減るものでもあるまい」 陛下が苦笑いをしながらそう言うと、ジークが陛下の腕をつかんで私の口から陛下の手を引き離した。 今日は学園祭という事もあってジークも理事長としてではなく変装して参加している為、滅多に見る事が出来ない吸血鬼姿を披露していた。 ピエロと吸血鬼…………とうてい親子には見えない2人だけど、やり取りを見ていると親子なんだなぁと思う瞬間が度々見られて、思わずクスッと笑ってしまう。 どちらかというと陛下はダンティエス校長と性格が似ているように感じるので、兄弟のやり取りみたいに見えるわ。 「減る減らないの問題ではありません。そもそもあなたは……」 「分かった、分かった。まったくそなたといい、ダンティエスといい、その執着する気質は誰に似たのか…………」 「あなたでしょう」 「………………」 なんだか陛下が押されているような。 そんな事より執着って誰が誰に――――私?ジークが私に執着しているという事?二人のやり取りを見ながらそんな事を考えていると、途端に顔に熱が集まってきた。 本当に?だとしたら嬉し過ぎるのだけど……考えれば考えるほど顔が熱くなってくる。 「ディア?凄い顔が赤いぞっ!熱は…………ないようだな。ひとまず外に出よう」 「え、ええ……そうね」 「あなたは速やかに帰るように。きっと王宮の者たちもあなたの行方が分からなくて大騒ぎになっていると思いますよ」 「ははっ、そうだと面白いがな」 ピ
Terakhir Diperbarui: 2026-04-20
Chapter: 四十九話 学園祭開幕 あの騒動の後、生徒たちは門の前に全員避難されていて誰一人けが人はなかった。でも大きな揺れに怯えている生徒もいたので、ひとまず皆帰宅させる事になったのだ。 そして三日間学園がお休みになり、その間に国王陛下から隣国の山々で活火山が噴火した為に起きた地震だと民に知らされ、理由が分かると安心したのか生徒たちも休み明けからいつものように学園に通い、穏やかな日常が戻ってきた。 魔王が復活していたなんてまさか言えないわよね…………そして撃退したなんてどうやって伝えればいいのやら。 自然災害は神の怒りだとも言われがちな世界なので、きっと全ての不安は払拭しきれてはいないのでしょうけど、怯えてばかりいられないものね。 私をおびき寄せる為にカリプソ先生に操られていた生徒たちは、記憶が途切れ途切れだったものの、魔物化していた後遺症などもなく保健室で目覚めた後、元気に帰っていった。 しかし魔物化していた事で身体に何らかの影響があっては危険なので、念のため数日は健康調査が必要となったのだ。 カリプソ先生はというと、今回の騒動や私を突き落とした時など記憶がなかったわけではないので、無罪放免というわけにはいかず……公爵家を敵にまわしたという事も相まって学園を去る事が決定し、子爵家はお家取り潰しになり、国外追放が決まった。 カリプソ先生のお父様である子爵が王族派から教会側の人間になっていた事が露見したのも大きく、陛下の信頼を一気に失墜してしまった為、恩赦する事もできず…………後味の悪い終わりになってしまったわ。 カリプソ先生は学園が休みの間に跡形もなくいなくなり、その後どうなったかは分からない。 そんな中、学園の生徒たちは元気に学園祭の準備を進めていて、あっという間に一カ月の月日は過ぎていった。 私の身辺はというとそれほど慌ただしくなることもなく……逆に恐いくらいだわ。 私の魔法が知れ渡れば色々と動きが出てくるのではと思って
Terakhir Diperbarui: 2026-04-19
Chapter: 四十八話 陛下の思惑 ~シグムントSide~ 魔王を撃退した翌日―――― 父である国王陛下が待つ執務室へと向かいながら、昨日の出来事について考えていた。 彼女が放った聖魔法は確かに魔王を撃退したはずだ……これから魔物が消えていき、この世界も平和になっていくだろう。 私はと言うと、倒れ込む彼女を労うので精一杯だった事を思い出し、魔王の足元にも及ばない自分自身に対して情けない気持ちでいっぱいになる。 もっと自分を鍛え直さなくてはな。 彼女の隣りに立つに相応しい人間になる為にも―――― 魔王と戦っていて学園の方は先生たちにまかせっきりになってしまったが、あれほどまでの衝撃が学園を襲い、生徒たちの中にも怯えている者も多数いたので、3日間は学園を休園する事になった。 民にも何かしらの知らせを発布せねば収まらないだろう。 しかし魔王が降臨したなどと知らせをすれば、たちまち混乱をまねく事は目に見えているので、対応については慎重に進めなければならない。 そんな事を考えていると、いつの間にか国王陛下の執務室の前に着いていたので、衛兵に目配せをして扉をノックする。 ――――コンコン―――― 「陛下、シグムントが参りました」 「入りなさい」 「失礼いたします」と声をかけながら扉を開き、中に入るとやはりロヴェーヌ公爵もその場にいて、二人ともお待ちかねといった感じだった。 「よく来たな、昨日の事はすでに我々の耳に入っている。そなたもその話をしにきたのだろう?」 「はい……父上は我々が何と対峙したのかもご存じで?」 「………………」 父上は無言だったが私の顔を見据えていたので、それだけで全て分かっているのだなと察しがついた。恐らく父上のこの表情の意味はそれだけではないはず。 「…
Terakhir Diperbarui: 2026-04-18
Chapter: 四十七話 ミシェルの素顔 ~ダンティエスSide4~ 階段を上りかけていたミシェルは手すりにしがみついて必死に耐えていたので駆けつけて支えてあげた。 これほどまでに大きな力とは……何が起こっているんだ? 「校長!このように大きな力……先ほど森に入っていったクラウディア先生に何かあったのでは?!すぐ近くで感じます……!」 「ああ、クラウディア先生と違う力を感じる……兄上に知らせなければ!」 私がそう言って今度こそ理事長室に行こうとすると、生徒たちの悲鳴がどんどん増していく。 私たちでも混乱するのだから生徒たちがパニックになるのも無理はない。学園は安全だと皆思っているし、この地で何事かが起こるとは誰も思っていなかっただろうから―――― 「その前に生徒たちを避難させなければならないな」 「あ、理事長!」 ミシェルの言葉に階段の上を見上げると兄上が急いで下りてきているところで、私たちは協力して生徒たちを避難させる事にしたのだった。 でも兄上の顔を見ていると今すぐにでも駆けつけたいだろうに、真面目で頑固な兄上は必死にその気持ちを押し殺しているのが手に取るように分かる。 物凄く苦しい顔をしているにも関わらず必死に生徒を誘導する姿を見ていられなくなって「兄上は行かなければならないところがあるでしょ」と声をかけた。 「しかし私は王太子でありこの学園の理事長でもあるのだ。生徒を放って駆けつけるなど……」 兄上らしい堅物な考えを披露してきて若干イラっとしたので、ほんの少し挑発してみる。 「そんな事を言ってる場合?!何かあれば……」 「何かあれば、だと?」 この時、自分の言葉を人生で一番後悔したかもしれない。兄上からとてつもない力溢れ出し、魔力が暴走しそうになってしまったのだ。 クラウディア先生に何かあればって想像しただけでこんな状態なのに、どうしてこの人は………………すると我々のやり取りを見ていたミシェルが、突然水魔法で兄上の人形のようなものを作り出した。 「ミシェル、君って…………凄く器用なんだね」 「校長、お褒めにあずかり光栄です。どうです?理事長は2人も要りませんので、あなたは用済みですからとっとと森に行った方がいいかと」 「ミシェル!兄上になんて言葉をっ」 とっても素直な物言いはミシェルの良いところだとは思うけど、不敬が過ぎると心配になっ
Terakhir Diperbarui: 2026-03-26
Chapter: 四十六話 敗者の美学 ~ダンティエスSide 3~ 王宮で父上やロヴェーヌ公爵、兄上と話をした後から―――――― おかしな噂を耳にする事が多く、俺はとても戸惑っていた。 というのも兄上がカリプソ先生と良い仲になっていて、生徒に見られるような場所でキスをしていたというものだ。 自慢ではないが、兄上の事は嫌というほどよく分かっているつもりだし、だからこそ絶対に人目につくところでそんな事をするような人間ではないので、どうしてそのような噂が広まっているのか不思議で仕方なかった。 しかし、よく分かっていると思っていたのに、俺の目にカリプソ先生と仲良く話している兄上の姿が目に入ってくる。 なぜだ?カリプソ先生と兄上は何のつながりもないはず……兄上はカリプソ先生のように噂好きでねっとりとした女性は苦手だったはずだ。 絶対に相手にしないタイプなのに近頃は見かける度に本当に一緒にいる。そして距離も近い―――― こんなところをクラウディア先生が見たらどう思うか……そして案の定、2人を見ているクラウディア先生はとても辛そうだった。 好きな女性にこんな表情をさせるなんて、本当に兄上らしくない。 クラウディア先生の辛そうな顔を見ていたれなくなり、学園の裏側にあるいつもの庭園へと誘った。そこなら兄上たちを見ないで済むだろうし、気分転換にもなる。 庭園の花達に囲まれているクラウディア先生は女神のようで………… 「学園祭が終わるまででいいんだ、俺にもチャンスをくれない?クラウディア先生の心に入り込むチャンスがほしいんだ」 思わず本音がもれてしまい、少し頑張らせてほしいとお願いした。 優しい彼女は俺の願いを聞き届けてくれて、その場で返事はしないという選択をしてくれる。 結果は分かっていても、この件に関しては俺の気持ちを尊重してくれた事がとても嬉しかったし救われる気持ちだった。 でも課外授業へ一緒に行った時に聖なる力を使うクラウディア先生を見て、何故だかとても遠い存在に思えた――――俺とクラウディア先生が肩を並べて歩いているところが想像できない。 課外授業から戻ってきて、どう見ても想い合っている二人を目の当たりにして、やっと自覚する事が出来た。この気持ちは恋ではなく憧れだったのだと。 幼い頃、声をかける事も出来ずに物陰から兄上と遊ぶクラウディア先生を見ていた時から、2人と肩を並べたい、俺の事も受け入
Terakhir Diperbarui: 2025-12-07