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Novels by nyampeso.iseda

匂いフェチの変態公爵様に執着されていると思っていたら、どうやら私フェチだったようです。

匂いフェチの変態公爵様に執着されていると思っていたら、どうやら私フェチだったようです。

シャルロッテ・オーランドルフ辺境伯令嬢は兄と共に辺境伯騎士団に所属していた。 軍の規律を守り、日々鍛錬に励みながら隊長にまで上りつめた男勝り。 対して兄の親友であるアルフレッド・カレフスキー公爵は、たびたび辺境伯領を訪ねて来ては彼女に構ってきて匂いを嗅いでくる変態公爵だった。 しかしどうやらアルフレッドと距離が近いのは自分だけではないらしい。 その日から気持ちが晴れないシャルロッテは、アルフレッドと関わらない為に隣国との軍事演習に行く事を父に申請する。 事実を知ったアルフレッドが国王陛下の生誕祭で取った行動とは? 堅物女騎士が匂いフェチの変態公爵に快楽で堕とされる、ただただ甘いだけの恋愛ファンタジーです。
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Chapter: 十二話 私から離れるなんて許さない
 「んっ、あぅ…………んっ……」  普段の彼女からは想像もつかないくらいの甘い声……刺激されて主張するかのように私の下半身はすっかり勃ち上がってしまう。 苦しいほどに窮屈になっているソレを我慢出来ずにズボンから引き出した。 意図せず彼女の目の前に突き出してしまい、ドクドクと脈打つ熱塊にシャーリーが釘付けになっているのが分かる。 「シャーリー、君のせいでこんなになってしまった……責任を取ってくれる?」 上から見下ろすような形になりながら、彼女への想いで痛いほどに硬くなったソレをシャーリーに見せつけた。 このまま彼女のさくらんぼのような瑞々しい唇をこじ開けて、口に入れてしまいたい衝動が襲ってくる。 ダメだ、初めてなのだから乱暴にしてはいけない。ありったけの理性をかき集めて必死にこらえ、体位を変えようと提案した。 剣をふるっている時の彼女は何も恐れるものなどないといった感じなのに、私の大きくなった昂りを目にした時はさすがに不安で瞳がゆれていたので、まずは安心させてあげなければと考える。 ずっとソファで行為にふけっていたので、ここなら騎乗位の方が入れやすいかもしれないと思い、私の上に跨る体位にさせて、彼女を安心させる為に目を見て愛を囁いた。 「大丈夫だよ、ゆっくりでいいから……シャーリー、君の全てを愛してる」 紛れもない私の本心。 君と結ばれる日をどれだけ夢に見たか。 早く中に入りたいけれど、入れてしまえばもう止まることは出来ないだろうな、と思う自分がいる。 私の言葉を聞いて意を決したシャーリーは、ゆっくりと腰を下ろしてきた。 彼女の蜜口から溢れる愛液がくちゅりと水音を立てた時、私の背中がゾクリとして体が震えだす。 早く欲しい、早く……呼吸が荒くなっていくのが分かる…………獣じゃないのだからと必死に自分に言い聞かせていると、彼女の方から私の口を塞ぐように性急な口づけをしてきたのだった。 「んっんん、ふっ……ん……」 口が塞がっている為、くぐもった声しかだせずに与えられる快楽に耐える時間が続く…………キスをしながら彼女からの匂いに包まれた私は、最高に幸せ者だった。 その間も私の男根が彼女の中に侵入するたび、あまりの気持ち良さに体はビクビクと震えてしまう。 まるで彼女に犯されているようだ……気を抜いたら持っていかれそうになる。 そん
Last Updated: 2025-05-30
Chapter: 十一話 ※愛し愛されたい
 私のプロポーズにシャルルは照れた顔をしながら目を泳がせている。 そして、「…………私だって、好きでもない男性にベタベタ触らせたりしませんよ」と言ってくる彼女の顔をまじまじと見た。 本当に?それは私が好きだから触らせてくれていたという事?  「それじゃあ………………」 距離が近くても全く気にしていない様子だったから、兄のようにしか思われていないのだと思っていた。 自分の都合の良い夢なのではと思い、恐る恐る聞き返してしまう。  「よろしくお願いいたします」 シャルルが頭を下げてプロポーズを了承してくれたのを見て、私の中でプツンと何かが弾けた。 もう躊躇する必要はない、彼女の全てを私のものにしていいのだ……彼女の存在を確かめるように激しいキスの雨をふらせた。 シャルル、やっと君を私のものに――――もう誰にも触れさせはしない。 遠征にだって行かせるものか。 唇が柔らかく、唾液は甘い蜜のようだ。  余すところなく食らいついていると、私の下半身が反応していくのが分かる。 すっかし主張してしまっているその怒張に彼女が気付いたので、シャルルの手を私のソレにあてがい、私がどれほど彼女を求めていたかを伝えた。 「シャルル、君だけだよ……私のココをこんな風にしてしまうのは。君の匂いを嗅いだだけでも反応してしまうくらいなのに」 するとシャルルは何を思ったのか、私の硬くなったソレを握ったりさすったりして可愛がり始めたのだ。 何が起こったのか分からず、戸惑いながらも好きな女性からの愛撫に体が喜んでいく。 「あ、くっ…………シャルル……ダメだよ……っ」 ダメだなんて言いながらも、愛する女性に触られて喜ばない男などいない。 私の下半身は彼女の手に押し付けるように動いていた。 「ん、アルフレッド様……気持ちいい?」 「ああ……ッ君の手で触られているかと思うと堪らない……」 いつも剣を握っているシャルルの手が私の男根をやわやわと触って、私を気持ち良くさせようと動いている事が余計に私を興奮させていく。 でもこれ以上彼女に触られたら、とてもじゃないけど理性を保てないと思った私は、そろそろ自分が彼女を気持ち良くさせる事で頭の中を切り替えようとした。 しかし何を思ったのか、シャルルはおもむろにズボンの中に手を滑り込ませてきて、直接触れてきたのだ。 「
Last Updated: 2025-05-29
Chapter: 十話 求婚
 私の肩に手を置いて踊り始めると、ずっと昔から2人で踊る運命だったのではと思えるほどに私たちの息はピッタリで、会場中からため息が漏れる。 シャルルの動きは洗練されていて、本当に素晴らしい。 そして何よりとてもいい匂いがする……こんな夜会の時にも香水はつけてこないのが彼女らしいと言えばらしいけれど、私には好感度しかなかった。 今すぐに抱きしめて彼女の匂いを堪能したい。 ダンスの最中も体がピッタリとくっついているので、堪らない気持ちにさせられる――――好きな女性と触れ合って理性を保てる男などいるのだろうか? 彼女の温もりが私の体温を押し上げ、ただ踊っているだけなのに気持ちが高揚していく。 そんな私の気持ちなど全く気付いていないシャルルは、先ほどの男とのダンスを終わらせた事への感謝を述べてきた。 「先ほどは助かりました、あ、ありがとうございます」 あの男とまだダンスを踊りたかったと言われなくてホッとしたが、ファーストダンスを奪われてしまったという残念な気持ちが頭をかすめていく。  「一番最初のダンスは私が踊りたかったのに……何で挨拶に来てくれなかったの?」 「え、でも女性に囲まれて近づけるような雰囲気ではなかったので、不可抗力ではないでしょうか」 「……それで他の男と踊ってしまうの?」 先に踊られてしまった恨み節が止まらない私をシャルルはどう思っているのだろうか……せっかく今日は格好良くプロポーズを決めようと考えていたのに、そう思うとさらに残念な気持ちが襲ってきてしまって、年甲斐もなくいじけたような形になってしまう。 そんな私に追い打ちをかけるかのように彼女が”閣下”と呼んでくるので、これ以上シャルルとの距離を感じたくなかった私はアルフレッドと呼んでほしいと懇願する。 私のお願いにとても言いにくそうに 「…………ア、アルフレッド、様……」と呼ぶ彼女の可愛さたるや。  その時の頬を赤く染めながら何とか私の名前を言う顔が天使すぎて、愛おしくて……今すぐプロポーズしたいという気持ちに駆られた私は、彼女の耳元でサロンに移動しようと囁いた。 リヒャルトの許可も得てサロンに移動すると、鍵を閉めて邪魔が入らないようにする。 こんな大事な夜に誰かに邪魔をされたら、その人物を無事に帰してあげられる気がしない……いや、物騒な考えは止めておこう、自分の失
Last Updated: 2025-05-28
Chapter: 九話 とびきりのプロポーズ作戦のはずが…? ~アルフレッドSide~
 オーランドルフ辺境伯家の兄妹2人との出会いから約3年経ち、シャルルが21歳になったある日、いつものようにオーランドルフ城に来ていた私は、シャルルとリヒャルトの手合わせを眺めながら、いつ彼女に結婚を申し込もうかと頭を悩ませていた。 すっかり仲良くなっていたし、もう彼女も年ごろで、いつ縁談が来てもおかしくはない年齢だ。 リヒャルトと同じく兄としてしか見られていないような気がして、突然他の男がやってきて横から掻っ攫われてしまうのは耐えられないし、自分の中で焦燥感が増していく。 騎士団に所属する彼女は全く男性の影がなさそうで、恐らく初めてだろうから恋愛事にも疎い感じがして、あまり甘い雰囲気を出すと逃げられてしまいそうな感じがする―――― 変態と言われる事は何とも思わないけれど、逃げられるのは嫌だ。 モヤモヤと色々と考えていたけれど、その間も二人の手合わせがなかなか終わらないので、私が止める事にしたのだった。 「はいはい、その辺で終わりにしてお茶にしよう」  二人とも手合わせを止められて不本意な顔でこちらを見つめてくる……シャルルはそんな顔すらも可愛くて困る。 思わず触れたくなって、彼女の両脇を抱えてリヒャルトから引き離した。 「な、何をするのです!一人で歩けますので下ろしてください」 「目を離すとまた剣を握り始めるのだろう?さあ、剣を置いて……」 ジタバタしている姿も可愛すぎるな……鍛錬後の汗が混じったいい匂いがして堪らない気持ちになってくるのを必死で堪える。 彼女の匂いは私の雄の部分を刺激してくるので、あまり近付き過ぎるのは危険だった。 今もシャルルから発してくるいい匂いに、私の下半身が反応してしまいそうになっている。 彼女と出会ったあの夏の日にもらったタオル、あれの匂いを嗅ぐたびに何度自分を慰めたか分からない。 洗うと匂いがなくなってしまうと思っていたけど、洗った後も彼女からもらったタオルというだけで興奮出来るのだから、もはや私はシャルルに反応してしまっているのだという事に気付いてしまう。 女性と出来る限り関わらないようにしていた私が、こんなに一人の女性に欲情する日がくるなんて自分自身に驚きを隠せなかった。 きっとシャルルは、私のそんな気持ちなど全く気付いていないのだろう。 いつもは凛とした姿勢でほとんど表情が崩れない綺麗なこの
Last Updated: 2025-05-27
Chapter: 八話 ※甘い匂いに酔いしれる ~アルフレッドSide~
 今まで気付かれる事もなかったのに、どうして今日に限って⁈ どうする、不審者だと思われたのではないか?  私は普段感情の起伏をあまり表に出さない人間なのに、この時ばかりは慌ててしまったのを今でも覚えている。  「……失礼、見学に来たのですか?」  その女性は私が騎士団に入りたくて覗いていたと思ったのか、私の顔を見上げながら聞いてきた。 どう見ても見学に来たような身なりではないと思うのだけれど、あえて突っ込まずに話を続ける事にしたのだった。  それにしても近くで見るシャルロッテ嬢は私にとっては随分小柄に感じ、それでいて真っすぐに見つめてくるぱっちりとしたブラウンの瞳がとても澄んでいて、吸い込まれてしまいそうになる。   口紅など何も塗っていないみずみずしいピンクの唇は、鍛錬した後でまだ荒い呼吸や汗によってますます血色が良く、食べてしまいたいほどに魅力的で目のやり場に困る。  何より彼女からは香水の鼻がもげそうな匂いが全くしてこない。  むしろ鍛錬後の汗の混じったいい匂いが風によって運ばれてきて、本当に吸い寄せられてしまいそうだった。 思わず抱きしめてしまいたい衝動に駆られながらも、何とか抑える。  「……私は君のお兄様に用があって来ていたんだ」 「お兄様に?それならここではなくて…………あ、汗が」  そう言ってシャルル嬢は、自身の持っていたタオルを私に渡そうとしてくれた。   「あ、ありがとう」   夏の暑さとさっき慌てていた事もあって汗だくだった事に気付いていなかった私は、彼女が機転を利かせてくれた事に感謝し、そのタオルを借りて汗を拭く事にした。   しかしその瞬間、借りたタオルから今まで感じた事のない頭の先まで癒されるような良い匂いを感じてしまうのだった。  これはもしかして……彼女の匂いがしみついたタオルなのか?   タオルで顔を拭きながらそのタオルに顔を埋めると、何とも言えない幸福な匂いがしてきて手放せなくなってしまう。  「大丈夫、ですか?」  あまりにもタオルから顔を上げられない私を心配したのか、彼女が近くに寄ってきて顔を覗き込んできた。 それ以上近寄られると本当にマズい――――  「あ、ああ…………大丈夫、です。このタオルは洗って返すから、持ち帰らせてもらうね」 「そんな、気を使わなくても大丈夫
Last Updated: 2025-05-26
Chapter: 七話 シャルロッテとの出会い ~アルフレッドSide~
私はカレフスキー公爵家の嫡男として生まれ、アルフレッドと名付けられた。 カレフスキー公爵家は王族公爵で父上は今の国王陛下の弟であり、従って私にも王族の血が流れている。 父上はとても美しくて儚げで、そしてあまり体が強くはなかった。それもあって王位継承権争いとは無縁で、公爵位を賜って母上とゆっくり生きる道を選んだようだ。 母上もそんな父上をサポートしながら家族二人三脚で生活する日々……両親から愛情を注がれ、我々家族は幸せだったし、爵位などいらないから父上には末永く元気でいてほしかったのだけれど、その願いも虚しく私が23歳の時に儚い命を散らして旅立っていってしまう。 父上が亡くなって母上は抜け殻のようになってしまい、私には沢山の公爵家当主としての仕事がやってきた。 母上が健やかに生活できる為にも公爵家をしっかりと継いでいかなければと、右も左も分からないのに仕事に追われ、疲弊しきっている時に声をかけてくれたのが、リヒャルトだった。 彼はオーランドルフ辺境伯の令息であり、とても屈強でありながら朗らかな人格がにじみ出ているような風貌なので、友人も多い。 彼とは深く付き合っていたわけではないにしても長い付き合いだった事もあり、いつも疲れた顔をしている私を気遣って声をかけてくれたというわけだ。 オーランドルフ辺境伯はとても優秀で有名だった事もあり、色々と相談出来れば助かるという気持ちもあって、リヒャルトに頼んで辺境伯領を訪ねる事になった。 実際に辺境伯と話をしてみると、本当に博識で様々な事を教えてくれた。 そこにリヒャルトも加わると話がどんどん弾み、久しぶりに心のモヤが晴れていくような感覚を取り戻していく。 「こんなに充実した時間は久しぶりだ……今日は招待してくれてありがとう、リヒャルト」 帰り際にリヒャルトとオーランドルフ城内を歩きながら感謝の気持ちを伝えてみる。 「困った時はお互い様なんだから気にするな!最近ずっと辛気臭い顔してたからな~~今はスッキリしてる」 リヒャルトにも分かるくらい表情が変わったという事か……何だかその事実が突然恥ずかしく感じてしまい、ふと外に目を向けてしまう。 この城は……いや、この辺境伯領は本当にいい匂いがする。 私は人より少しばかり鼻が効くので、匂いに敏感だ。 女性の香水の匂いなんかは鼻が取れて
Last Updated: 2025-05-25
孤独な悪女は堅物王太子に溺愛される~犬猿の仲でしたがうっかり誘惑しちゃってたみたいで乙女ゲーム的な展開が待っていました~

孤独な悪女は堅物王太子に溺愛される~犬猿の仲でしたがうっかり誘惑しちゃってたみたいで乙女ゲーム的な展開が待っていました~

目覚めると、大好きなアクションゲームの世界が広がっていた。 「ドロテア魔法学園~unlimited~」 登場キャラクターの悪女先生クラウディアに転生してしまった私。 数々の男性を誘惑する彼女はシグムント王太子殿下と犬猿の仲。でもお見舞いの日から殿下の様子がおかしい。 超がつくほど堅物で厳しい人が「怪我はないか?」と耳元で囁いてくる。 仲良くなれそう? 新たな力に目覚めたり、モフモフの可愛い生き物がいたり…でも学園には魔の手が忍び寄ってきていた。 可愛い生徒を守るのは先生の役目。 悪は根絶やしにさせていただきます! 溺愛あり、モフモフあり、戦いあり…ゲームの世界で自身の運命と闘う、異世界恋愛ファンタジーです。
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Chapter: 四十四話 強烈なアタック(怒り)
 「ちょっと…………その子たちをどうするつもり?!」 『見て分からぬか?こうするのだ』 説明するよりも先に自身の指を細かく動かし、その動きに合わせるように生徒たちが動き出してこちらへ駆けて来た。 この子たちを使って私を攻撃しようと言うの?! 「[神聖衝撃魔法]ホーリーインパクト!」 咄嗟に口をついて出てきた言葉は聖なる力の衝撃波だった。それによって魔物化した生徒たちはまた吹き飛ばされて木に衝突し、ぐったりと項垂れてしまう。 「ああ!ごめんね!」 一人の生徒に駆け寄って生死の確認をすると、魔物化しているとは言え呼吸をしているのを確認する事が出来て、ホッと胸をなでおろす。 『それ、まだ終わりではないぞ。いくらでも操る事が出来るのだから……フフッ』 ロキが不穏な言葉を発したかと思うと、意識のない魔物化した生徒たちは無理矢理体を動かされて従わされていた。 こんな事したくないわよね……苦しいよね………… 私の中で激しい怒りがわき起こり、生徒たちそっちのけでロキの方へ足早に向かっていった。 『何だ?自ら殺されに来たというのか?』 私がやられっぱなしだから完全に油断しているロキは、防御する素振りさえ見せない。 ロキの目の前まで来て足を止め、彼に向き合うと、何をしに来たのかと楽しそうにニヤニヤ笑っていた。か弱い貴族女性だと思って自分がやられるとは微塵も思ってないわけね。  私は自分の右腕に聖魔法をかけていく。 「…………[攻撃補助魔法]クルセイド………………その薄ら笑いを止めなさい!!!!」 ――――バチィィッッン!!――――  『ぐぁぁっ!』  私は自身の利き腕に思いっきり攻撃能力向上の魔法をかけて怒りの平手打ちをロキに叩きつけ、彼はすぐ後ろの大きな木に叩きつけられたのだった。 「綺麗にアタックが決まったといったところかしら」  元バレーボール部の腕の振りは健在だったかな。腕力は前世に比べるとまるでなかったので、自分の腕を何百倍も強化したのだけど、こういう攻撃のしかたも有効ね。 聖属性の攻撃補助魔法だったのでロキには効果絶大で、頬は赤く腫れあがって顔が少し歪んでいる。 どうせ変形できるのだからすぐに直せるのでしょうけど。 木に叩きつけられて座り込んではいるものの、魔王なのでさすがに肉体が強いのか、決定的なダメージを与えてい
Last Updated: 2025-07-24
Chapter: 四十三話 禍々しき者 ~シグムントSide~
 私がカリプソ先生の異変を感じた日、ディアに会う為に公爵邸に向かうと、その日の彼女は酷く動揺していた。 ひとまず遅い時間に訪問した事を詫びながら、急ぎの話があると伝える。 「クラウディア……遅い時間にすまない。急ぎで君に伝えておかなければならない事があるんだ」 「急ぎで?分かったわ、もう外は暗いし私の部屋でいい?」  「え?あ、ああ……そうだな」 自分で遅い時間に訪ねておきながら、彼女の自室に招かれると動揺している自分がいるとは情けない。 この時間では外でお茶など無理な事くらい分かるものなのに、彼女の事になるとそんな事も頭からすっ飛んでしまうとは……自分に呆れながらも自室でお茶を出来る事に喜んでいる自分に活を入れたのだった。 ディアの部屋に入ると、彼女の匂いに包まれてとても幸せな気持ちになる。 私は変態ではないが、ちょっと変態に近い思考になってしまうのは想いをよせる相手だからだと自分自身に言い訳をして、必死に誤魔化した。 2人で話し始めると、カリプソ先生の名前を出したところで彼女からストップがかかった。 そして彼女の美しい瞳からハラハラと綺麗な涙が流れ落ちたのだ。 彼女の涙を見るのは幼い頃以来なので物凄く動揺してしまい、思わず膝をついて彼女に駆け寄る。 気丈で滅多に弱さを見せない彼女がこんな風に涙を流すとは……いったいディアは何を抱えているんだろう。 涙が止まってほしいと思う反面、美しい泣き顔にずっと見ていたい気持ちになり、不謹慎な自分を戒めた。 私の責任を半分こしようと言った彼女が愛おしいし、きっと私もディアが苦しんでいたら同じようにしてあげたいと思うだろうから、彼女にも同じ言葉を返す。 「ディア……君が抱えているものを私にも分けてほしい。以前君が私に言っただろう?責任を半分こしようと。こういう時こそ半分こするべきなのではないか?」 私は上手く言葉を返す事が出来ているだろうか。不安になりながら彼女の表情をうかがっていると、少し照れながら「…………じゃあお願いしようかな」と返してくれたのだった。 その時の喜びは人生で一番と言ってもいいもので、いつも表情を緩めないようにしていたが、その時ばかりは破顔していた。 そしてその時に抱きしめた彼女の温もりと唇の感触、甘い匂いは私の中でずっと残り続け、このまま学園祭まで気持ちを伝えずにいる
Last Updated: 2025-07-21
Chapter: 四十二話 降臨
 「やっぱり姿を戻す事は出来なかった……」 独り言のように呟いてカリプソ先生の方を見ると、若干苦しそうな様子を見せていた。 少しは効いてるって事?でもこの程度じゃいつまで経っても祓う事は出来ない…………カリプソ先生も中に入られているだけだから、傷つけたくはない。 どうにかして皆から魔王らしきものの存在を追い出さなくてはならない。 私が考えあぐねていると、カリプソ先生はどんどん苦しそうな表情になっていった。 『っ…………ぐっ…………申し訳ございません……今すぐ始末いたします……か、ら――――――』 どうやら私に謝っているようではなさそうだけど……。 誰かに対して必死に謝っている、というより懇願していると言った方がいいかもしれない。 私には一部しか聞こえないので、何を言っているのかハッキリと分からず、とても苦しそうだし涙目だったので、じりじりカリプソ先生に近づいていきながら声をかけてみたのだった。  「……カリプソ先生?…………どうし……」  『私に触るな!!!!』 カリプソ先生が悲鳴にも似た叫び声で私を拒否したと同時に、ドォォンッ!!と衝撃が走り、私は少し吹き飛ばされてしまう。 地面は緩い地震のように揺れながら、ゴゴゴゴゴゴ……と地鳴りのような振動が体に伝わってきて、うまく立ち上がる事が出来ない。  まるで大地がその存在を恐怖しているかのよう……そして何とか顔を上げるとカリプソ先生の口から大量の黒い物体が溢れ出していて、みるみるうちに彼女をその黒い物体が包み込んでいくのが目に入ってきた。 これは瘴気ではない。モヤというよりももっと濃い物体で、明らかに意思を持って動いている。 こんなものが彼女の体の中にいたなんて――――カリプソ先生の感情が爆発した事で溢れ出るかのように姿を現し、あっという間に彼女を飲み込んでしまった。  そして”ソレ”は魔物が形成されるかのようにどんどん形を歪めていき、やがて1つの個体を築き上げていく。 まるで芸術作品が作り上がっていく過程を見せられているかのようだけど、形作られた”ソレ”は、感動的なものではなく、私を絶望的にさせるものだった。 「あ……やはりあなたは………………魔王ロキ……」 『………………フ、フフッ…………ようやく表に出る事が出来た…………実に使い勝手のいい女だった』 造り上げた自分
Last Updated: 2025-07-15
Chapter: 四十一話 いつぞやの犯人
 早歩きで庭園に向かうと、まだ授業中というだけあって庭園に人影はなく、静まり返っていた。 この庭園の少し奥に立ち入り禁止のチェーンがかけられていて、そこから先は一定の魔力量の者以外は立ち入る事は出来ない。  1~3年生の生徒が入ってしまっては大変だからだ。 4年生ともなると魔力量がずば抜けている生徒も出てくるので入れてしまう子もいるけど、入学当時から立ち入り禁止とされている場所なので近づく者はいなかった。 まさか私のクラスの生徒が入るとは思わなかった…………もしかしたら直接的ではないにしても課外授業での瘴気に中てられてしまったのかもしれない。 迷いの森とされているので、奥の方に入ったら見つけるのは困難だわ。 「それにしても入口付近で遊んでいたと聞いたけど、全然姿が見えないわね。まさかもっと奥に入ってしまったのかしら……」 「おそらく……入ってみようぜ、みたいな話をしていましたので。止めている者いましたが」 「なんて事……急いで捜しにいかなくては。私は少し入ってみるので、誰か先生方を呼んできてちょうだい!」 「分かりました」 一人の男子生徒が返事をしてくれたので、私は森に向き直り、意を決して入る事にした。 さすがに私の魔力量なら入れるわね。生徒でも入れたくらいだし、それもそうかと一人で納得する。 すると立ち入り禁止の鎖がある場所から少し入ったところに、カリプソ先生の後ろ姿が見えた。静かに、ただじっと立っているだけといった感じだったので不思議に思い、声をかけてみた。 「カリプソ先生?ここに風クラスの生徒が入ってきませんでしたか?」 私の声を聞いてゆっくりと振り返ったカリプソ先生は、いつものように可憐な笑顔でニッコリと笑ったかと思うと「いいえ、見ておりませんわ」とだけ答えた。 「そう、なのですか……失礼ですけど先生は、どうしてここに?ここは先生と言えども立ち入り禁止のはずです」 私は単純に疑問に思った事を聞いてみる事にした。 ここに入ってはいけないのは、何も生徒だけではない。たとえ理事長であろうとも入ってはいけないのに、どうして彼女はここで立っていたのだろう……私は自分で質問しておいて嫌な予感が止まらなかった。  『うふふっあなたを待っていたのですわ、クラウディア先生……待ちくたびれましたわ』 その声は、カリプソ先生のいつもの声
Last Updated: 2025-07-04
Chapter: 四十話 呼び出し
 ダンティエス校長が去ったドアを見つめながら、そろそろ本気で自分の気持ちをジークに伝えないといけないなと考えをめぐらせていた。 今日課外授業に行ってみて、外の世界がここまで危険に満ちているとは思わず、自分の考えが甘かった事を痛感する。 中にいれば今は比較的安全かもしれないけど、それはずっと続くものではない。 このまま放置していてもゆくゆくは王都も危険な状況になってしまうのなら、この邪の気配の根源を消し去らなければ――――きっと私の力はその為にあるのだと思う。 色んな事にけじめをつけないと。 「ダンテが気になる?」 「わっ!」 すっかり考え事をしていた私のすぐ後ろからジークの声が聞こえてきて、驚きのあまり変な声が出てしまう。 恥ずかしくてゆっくりと振り返ると、真剣な表情のジークがすぐ近くに立っていた。 「ずっとダンテが去ったドアを見つめているから」 「いいえ、違うの。考え事をしていただけよ。これからの事とか色々…………」 「これからの事?」 この世界の事、ジークにどうやって説明をすればいいんだろう。ここはゲームの世界で魔王を倒さないと世界が危ない……なんて伝えたらさすがに頭がおかしい人間に思われるわね。 私は、言いたくても言えないもどかしさに苦笑するしかなかった。 「………………そうやって言ってくれないなら……こうするしかないな」 「え?」 彼が何を言っているのか分からなくて聞き返すと、ジークの瞳が怪しく光り出し――――思い切り脇をくすぐられてしまうのだった。 「な、何を!あははっやめて~~あはっ、うふふ、ふ、くすぐったいっ!」 「言う気になったか?君が抱えているものを私と半分こしようと話したばかりではないか」 くすぐりながらも真剣な表情で伝えてくるので、私は観念して自分が感じている事を話そうと決意した。 どの道言わなければならない時はやってくるだろうし、ゲームの世界であるという事は言えないけど、これから起こるだろう事案は伝える事ができるかもしれない。  「わ、分かったわ!話すからっ」 「よろしい」  すぐにくすぐるのを止めてくれたジークは、私の言葉に満足気だった……なんだかいいように流された感じがしなくもない。 満足気な彼の顔を見ながら若干私があきれ顔をしていると、突然彼の腕にすっぽりと収められてしまう。 そし
Last Updated: 2025-07-01
Chapter: 三十九話 あの女さえいなければ ~カリプソSide~
 私はヴィスコンティ子爵家の一人娘、カリプソ・ヴィスコンティ。土魔法を得意とし、ドロテア魔法学園の養護教諭をしている。 身分は低かったけれど幼い頃、両親はこれでもかというくらい私を可愛がってくれたし、お姫様のように扱ってくれた。 私が4歳の時にお母様が亡くなり、それまではとても幸せだったのを今でも覚えている。 でもお母様が亡くなるとお父様が豹変し、私に厳しく当たるようになった。 私は最初、その理由が分からずとても悲しかったわ。お父様を恨んだ事もあったし、どうして私がこんな目に……と悲劇のヒロインのように思っていた時もある。 でも少し大きくなった時、お父様と誰かが話している声が聞こえてきた――――  「ご令嬢はあなた様の娘ではないと?」 「あの者は妻がよそで作った子供で私とは全く血のつながりはありません。どうか引き取ってくれませんかね?」 お父様は何を言っているの?あんなに私を可愛がってくれてたじゃない。二人とも仲が良さそうだったし、二人の子供じゃないなんて嘘よ! 私は到底信じられず、お父様に詰め寄り、どういう事なのか説明を求めた。 すると信じられないような事を言い始める。 「お前の母親は私と婚約している時に私との子供が出来たと嘘を言っていたんだ。アイツが死んだ後に父親だと名乗る男がやってきた……そいつはお前の母親の邸に勤める使用人だったのだ。私はまんまとハメられ、お前を本当の娘として慈しんでしまった…………何の血の繋がりもないお前を私が育てる理由がどこにある?」  お父様はそう言うと、憎悪の対象を見るような目で私を見据え、顔を逸らした。 私は必死で泣きつき、とにかく役に立つから捨てないでほしいと懇願したのだった。 無様だわ――――でもまだ10歳にもなっていない私には、こうする他なかった。 私があまりにも必死で面倒だったのかは今となっては分からないけど、お父様は思い止まり、私を子爵家の令嬢として邸に置いておく事にしてくれた。 私はむしろありがたいとすら思っている。浮気した女、嘘をついて結婚した女の子供を貴族令嬢として生きる事を許可してくれたのだから。 この恩は一生かかっても返していこうと決意する。 使用人たちにどんなに冷たい目を向けられても、言葉を交わしてくれなくても、とにかく貴族令嬢として恥ずかしくないようにと色々な教育を頑
Last Updated: 2025-06-28
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