孤独な悪女は堅物王太子に溺愛される~犬猿の仲でしたがうっかり誘惑しちゃってたみたいで乙女ゲーム的な展開が待っていました~

孤独な悪女は堅物王太子に溺愛される~犬猿の仲でしたがうっかり誘惑しちゃってたみたいで乙女ゲーム的な展開が待っていました~

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目覚めると、大好きなアクションゲームの世界が広がっていた。 「ドロテア魔法学園~unlimited~」 登場キャラクターの悪女先生クラウディアに転生してしまった私。 数々の男性を誘惑する彼女はシグムント王太子殿下と犬猿の仲。でもお見舞いの日から殿下の様子がおかしい。 超がつくほど堅物で厳しい人が「怪我はないか?」と耳元で囁いてくる。 仲良くなれそう? 新たな力に目覚めたり、モフモフの可愛い生き物がいたり…でも学園には魔の手が忍び寄ってきていた。 可愛い生徒を守るのは先生の役目。 悪は根絶やしにさせていただきます! 溺愛あり、モフモフあり、戦いあり…ゲームの世界で自身の運命と闘う、異世界恋愛ファンタジーです。

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Chapitre 1

一話 転生先はアクションゲームの世界だった件

向井莉奈(むかい りな)が警察署を出たときには、既に深夜だった。

外は雪が降っている。

通りを行き交う人々は、顔に青紫の痣を残し、髪は乱れ、足を引きずるように歩く莉奈を、時折怪訝そうに見ていた。

けれど莉奈は、そんな視線もひそひそ声も、まるで耳に入っていない。

重たい足取りで、彼女はうつむいたまま、画面が割れてしまった壊れかけのスマホを虚ろな表情で見つめていた。

血に染まった指先が震えながら通話ボタンに触れ、十一桁の番号を打ち込む。

「……ツー」

「……ツー」

先ほど殴られたとき、必死でかけた緊急連絡と同じで、やはり誰も出ない。

一片の雪がまつげに落ち、莉奈はそっと瞬きをした。冷たい雪解け水が、そのまま目に染み込んでくる。

「……はは」莉奈は自嘲するように、かすかに口角を上げる。

――本当に、みっともない。

そう思って、力なく手を下ろそうとした。

その、最後の一秒で。

電話が、つながった。

「どうした?」

電話の向こうから聞こえてきたのは、少し冷たさを帯びた、男の低い声だった。

スマホを握る手が、ぴたりと止まる。莉奈の顔に動揺が走った。「し……」

言いかけた、その瞬間。

「椎名社長、桜井さんがお探しです」

彼女の言葉を遮るように、電話口から椎名承也(しいな しょうや)の助手の声が聞こえ、続いて彼が淡々と言った。「一旦、切る」

言いかけていた言葉は、そのまま通話終了音にかき消された。

誰もいない街角。高く立つ街灯の下で、雪がはらはらと莉奈の髪に降り積もり、細い体が小さく震える。

そのとき、ふいに、体温の残るコートが肩にかけられた。

莉奈ははっとして顔を上げる。そこに立っていたのは、杉村編集長だった。

男は痛ましげな視線で彼女を上から下まで見て、怒りを抑えきれない様子で言った。

「いったい、誰にこんなことされたんだ?」

口から白い息が漏れ、莉奈は小さく首を横に振った。

「殴られてる途中で、相手の髪を何本か掴みました。爪の中にも皮膚が残ってます。DNAが取れれば、警察はすぐに動けるはずです」

男は一瞬、言葉を失った。ここまでひどい目に遭いながら、なお冷静で、先を考えているとは。

やはり、この莉奈という女は、彼がもっとも評価している部下だった。

「この件は、必ず最後まで追う。もう遅いし、今日は君の家まで送るよ」

この場所はタクシーも拾いにくい。莉奈は少し苦笑し、男の車に乗り込んだ。

「杉村編集長、ありがとうございます」

「何言ってる。俺の部下がやられて、放っておけるわけないだろ。それに今夜は、みんな取材に出てて、オフィスにいたのは俺ひとりだったんだ」

男はハンドルを切りながら、続ける。

「椎名承也の元カノが帰国したらしい。空港まで迎えに行ったのも本人だって話でな。みんなスクープ狙いで必死だよ」

莉奈の充血した目が、ぴたりと止まった。

頭の中で、ぶうんと音が鳴る。

――自分が路地裏に引きずり込まれ、殴られながら必死で承也に電話をかけていたそのとき、彼は、別の女のそばにいたのだ。

杉村編集長は、彼女の顔色が急に悪くなったことにも気づかず、話を続けている。

莉奈はうつむき、血に濡れた指で、皮膚が裂けたもう一方の手の甲を強く掴んだ。

誰も知らない。彼女が、承也の妻だということを。

……

杉村編集長に家の前まで送ってもらうことはせず、莉奈は近くの住宅街で降ろしてもらい、そこからタクシーで松風レジデンスへ帰った。

家に着き、玄関で靴を脱いでいると、物音に気づいた家政婦が出てきて、彼女の姿を見るなり驚いて駆け寄ってきた。

「奥様、どうされたんですか?いったい何が……!」

家政婦が支えようとして、うっかり彼女の腕の傷に触れてしまったが、莉奈はまったく反応しなかった。まるで感覚が麻痺してしまったかのように、瞳には一切の光がない。

「取材中に、殴られただけ」

さらりとそう言ったが、家政婦は背筋が寒くなる思いだった。社会部の記者の仕事が危険だとは知っていたが、ここまでとは思っていなかった。

以前、椎名家の祖母が今の仕事を辞めさせようとしたのも、あながち間違いではなかったのだろう。

莉奈の視線が靴箱に向けられているのを見て、家政婦は彼女の顔色を見る勇気が出ず、含みのある表情で言った。

「旦那様は……まだお帰りではありません。桜井さんが帰国されたそうで……」

莉奈は俯いたまま、ほつれた髪が半分ほど顔を隠している。目元の表情は読み取れないが、家政婦には彼女が傷ついていることだけははっきりと伝わってきた。

「たぶん……」

家政婦が何か言いかけたところで、莉奈は軽く手を上げて制した。

「先にお風呂に入るから、救急箱を私の部屋に持ってきて」

ふらつきながら階段を上っていく後ろ姿を見送り、家政婦は声を出さずにため息をついた。それでも言われたとおり、救急箱を取りに行く。

主寝室の前を通ったとき、中をちらりと覗いたが、案の定、莉奈の姿はなかった。

彼女がいたのは、主寝室の隣の部屋だった。

結婚して三年になるというのに、いまだに別々の部屋で寝ているなど、誰が想像しただろう。

浴室は湯気で白く曇っていた。鏡に映る、体中に広がった痛々しい青い痣を見て、莉奈の唇は小さく震えた。痙攣するようにこわばった指で服を掴み、力任せに引き裂くように脱いで、ゴミ箱に放り込む。

そして、全身の力が抜けたように、そのまま床に座り込んだ。

しばらくして、浴室の奥からかすかな嗚咽が聞こえてきた。家政婦が耳を澄ませたが、今度は水音しか聞き取れなかった。

入浴後、莉奈は家政婦の手当てを断り、ソファに座って適当に薬を塗ると、そのままベッドに横になった。

目を閉じた瞬間、殴られていたときの光景と、男の歪んだ笑い声が脳裏によみがえる。骨の奥が、じくじくと痛む。

寝返りを打ち、ベッドサイドの引き出しを開ける。指先が奥にしまわれた小さな薬瓶に触れた。蓋を開け、一錠口に放り込み、水も飲まずにそのまま飲み下す。

睡眠薬の効果で、莉奈はすぐに眠りに落ちた。

それでも眠りの中で眉はきつく寄せられ、額には冷や汗が浮かび、布団の端を握りしめた指は白くなって、震えが止まらない。

「……助けて……」

悪夢に囚われた莉奈は、顔色を失い、薄い体を震わせながら、固く閉じたまつげの間から涙をこぼした。

薄暗く、がらんとした部屋には、何の返事もなかった。

……

莉奈が目を覚ましたのは、翌日の夕方だった。

顔の痣はだいぶ薄くなっていたが、体の痛みはまだ残っていて、起き上がるときに転びそうになった。

昨夜は、通りがかった親切な人が大声で警察を呼んでくれたおかげで、あの連中は暴行をやめ、それ以上の被害を受けずに済んだ。でなければ、今ごろ両親のもとへ行っていたかもしれない。

杉村編集長は数日休みを与え、家でしっかり休むようにと言ってくれた。

階下へ降りる途中、主寝室の前を通り、彼女は立ち止まって中を一瞥した。

ドアは昨夜と同じように開いたままだ。

考えるまでもなく、昨夜も承也は帰ってきていない。

家政婦が温かいタオルを用意してくれたので、莉奈はソファに座り、頬に当てじんわりと温まるのを感じながら、スマホでニュースを開いた。

さすが椎名家の実権を握る人物だ。昨夜のニュースがトップを飾り、今もなお高い注目を集めている。

写真に写っているのは、夜の闇に凛と立つ、背筋の伸びた男の後ろ姿。たった一枚の写真、背中だけだというのに、放たれる圧倒的な存在感は否応なく目を引いた。

そして、彼が押す車椅子に座る女性は、上半身の後ろ姿だけが写っている。

――桜井美月(さくらい みつき)。

莉奈は黙ってニュースを閉じたが、手にしていたタオルをうっかり強く握りしめてしまった。

床に落ちた水滴を見下ろし、彼女は眉をひそめ、やがて目元がじわりと赤くなる。

情けない。三年も一緒にいて、まだ承也の心がわからないなんて。

その後、部屋に戻って着替え、気を紛らわそうと書斎へ向かい、何冊か本を探した。

承也の書斎はすっきりと整っていて、余計な装飾は一切ない。ブラインドボックスやフィギュアで溢れている彼女の書斎とは対照的だ。

デスクの引き出しが閉め忘れられていて、窓も半分ほど開いている。風にあおられて、引き出しの中の書類がばさばさと音を立てた。

そのうちの一枚が、床へと落ちた。

莉奈は近づいてそれを拾い、引き出しに戻そうとしたが、中身が目に入った瞬間、動きが止まった。

そこにあったのは、紛れもなく一通の離婚協議書だった。

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一話 転生先はアクションゲームの世界だった件
 ――ズキン――ズキン――――――頭が割れるように痛い――――――  ――どうしてこんなに痛いの―― ――こんなところで寝ている場合ではないのに―― ――だって今日は――――――   だんだんと意識が暗闇から光のある方へのぼっていく。 その間も頭痛が止むことはなく、この痛みが夢か現実か分からずに、とにかくこの痛みから解放されたいと願っていると、目の前にパアァァと光が広がってハッと目を見開いた。   そこには、今までの人生で見たことのない景色が広がっていたのだった。  「え……何?この部屋……………………」   目が覚めて最初に飛び込んできた景色は、よくあるおとぎ話に出てくるお姫様のような部屋だった。    さっきまでうなされていたのか、額には汗が滲んでいる。  「ここは日本、じゃない……?」   ベッドに寝ながら呟いたひと言は、静まり返っている部屋に虚しく響いただけだった。    私は大学でバレーボール部に所属していて、今日は春季リーグがある大事な日。   そして、そんな日に限って寝坊したものだから、焦りながら走って試合会場へ向かったはず……会場近くの横断歩道を渡れば着くと思ったところでトラックが………………こちらに向かってきたところまでは覚えている。    その後は?    まさか私、あのトラックにはねられて……?  「うそ…………そんなの信じない…………」   背が高い事がコンプレックスで、何か自分に自信をつけたいとバレーボールを始めた。   そしてそのバレーボールで強豪の大学に入る事が出来、レギュラーにもなれて優勝目指して頑張っていたのに……練習を頑張り過ぎて寝坊してしまうなんて。 何が現実で何が夢なのか、訳が分からないのでひとまず体を起こしてみる。    ――――ズキーンッ――――      起き上がった瞬間に頭が異常なほど痛みだし、ズキズキするので布団の上でうずくまってしまう。    痛すぎる――――もし死んだとしてもどうして頭が痛むの?死後の世界なら痛みなんてないハズじゃ――――   そこまで考えて、ふと違う考えが私の頭を過ぎっていった。    ここは死後の世界じゃないかもしれない……布団は妙にリアルだし、周りの景色もリアルな感じがするのよね。頭は痛むけれど、ここがどこ
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二話 シグムント王太子殿下とは犬猿の仲?
 目の前にシグムントがいる。 あのゲームでは一番人気で能力もずば抜けて高いチートキャラクター。  全ての魔法が得意なのに加えて、光の魔法が使えるただ一人の人物。   でも私がクラウディア先生なのだとしたら、2人は幼馴染でありながら犬猿の仲だったはずよ。どうしてシグムント殿下がクラウディア先生の邸に?  彼は極度の堅物で、クラウディア先生のようなふしだら(に見える)女性は嫌悪の対象なので、二人は顔を合わせれば嫌味の押収だった。   今一番会いたくなかったな……中身はクラウディア先生じゃないのに、いつも嫌味を言ってくるシグムント殿下にどうやって立ち向かえばいいの?!  クラウディア先生なら負けじと言い返す事が出来るのだろうけど……私がそんな事を悶々と考えているとセリーヌが彼に挨拶をし始める。  「王太子殿下、大きな声を出してしまい申し訳ございません!お嬢様が頭痛で倒れられたので――」  「頭痛?ああ、あそこから落ちたのだから頭を強打しているのは知っている。私は学園の理事長だからな、今日は職員の見舞いに来ただけだ。しかし君は仮にも風魔法の教師なのだから、目覚めたらすぐに癒しの魔法を使えばいいのではないか?」 そう言えばそうだ。クラウディア先生が得意な魔法は風魔法で、癒しの魔法もあるはず。 でも中身が私なのでそもそも使い方が分からない。  転生したばかりで混乱している状態で癒しの魔法を使ってもボロが出そうだし、今は止めた方が良さそう。どうにかして切り抜けないと……。  「王太子殿下、ご心配には及びません。後ほど癒しの魔法を使いますので私は大丈夫です。お引き取りくださっても構いませんから……っ」  殿下にそう言って一人で立ってみたものの、やっぱり無理かも……立った瞬間に頭がグラっとして目が回り、目の前が暗くなっていく――――  「お嬢様!」  「ロヴェーヌ先生!」  2人の声が遠くに聞こえる…………体が地面に倒れ込もうとしたところで誰かが私を受け止めてくれて、事なきを得たようだった。  「…………っ……いたたっ」  思わず声が漏れてしまったけど、倒れた衝撃で頭がガンガンするだけで、体に痛みはなかった。  私を支えている力強い腕、これはセリーヌのものではない。  …………だとすると、殿下?ハッとして
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三話 夢の中と現実世界
 セリーヌに言われて眠ったはずなのに、なぜか私はクラウディア先生の後ろにいて、彼女は学園での服を着て学園内を歩いている。  何度もプレイしたゲームなので、ここがドロテア魔法学園の校舎内である事はすぐに分かった。  どこに向かっているのだろう…………廊下を歩いていると生徒たちが声をかけてきて、クラウディア先生も楽しそうに言葉を返していた。  「先生、次の授業は何を教えてくれるの?」  「クラウディア先生、この魔法のコツを教えて」   その様子を後ろから見守るような形になっていた。幽体離脱というより、夢で彼女の記憶を見ているって事かな?  もちろん生徒たちには私の姿は見えていないようだ。   生徒達との会話が終わり、広い校舎内を一人歩いていくクラウディア先生の後をついていくと、エントランスホールに下りる大きな階段にさしかかった。 クラウディア先生は普通に下りようとしていたのだけど、突然時が止まったかのように彼女が動かなくなる。   どういう事?これは魔法なの?  今の私は幽体みたいな状態だからなのか、私自身は自由に動く事が出来ているわ。 クラウディア先生の前に行って先生を起こそうとしてみたものの、透けてしまって触る事も出来なかった。 そりゃそうよね……記憶を見ているのかもしれないし、もしこれが過去の出来事なら私がどうこう出来るわけがない。  じゃあ、この後ってどうなるんだろう。 確か私が目覚めた時にセリーヌや殿下が階段から落ちてって言ってたような……するとクラウディア先生の後ろからノイズのような性別が分からない声が聞こえてきたのだった。  「さようなら、クラウディア先生」  その声とともに時間が動き出し、誰かに背中を押されたクラウディア先生は階段を一直線に滑り落ちていったのだった――――  『クラウディア先生!』  もちろん私の声など届くわけはないんだけど、先生の元に駆けつける前に突き落とした犯人の方を振り返ると、影のようになっていてよく見えない。  誰なの?誰が先生を――――――絶対に見つけてみせる――――!  そう決意したところでゆっくりと目が覚めて、今いる世界に意識が戻っていく。  「…………夢……」  目覚めると酷い汗をかいていて、ネグリジェのようなドレスも汗で湿っていた。
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四話 ドキドキの職場復帰初日
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五話 養護教諭とラクーとの出会い
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六話 すっかり変わってしまった幼馴染 ~シグムントSide~
 ドロテア王国の第一王子として生まれた私は、ドロテア魔法学園を主席で卒業後、父上の跡を継いで学園の理事長に就任した。 父上も年齢を重ね、理事長職と国王としての職務を兼務する事が大変になってきた事もあり、私の社会経験の一環として早期に就任せよという話だった。 我が弟のダンティエスも同じような理由で卒業後に校長に就いたのだが、父上の思惑としては我々兄弟を競わせる意味もあったらしい。 今のところ私が王太子ではあるが、父上はダンティエスの能力が私より上回れば彼に王位を渡す事も考えていると仰っていた。  そこには無能な者に王位を渡す気はないという、国を想う国王としての断固とした考えがあると私は思っている。 だからこそ、この理事長という職をしっかりと全うしたいと常々考えていた。  我が学園に職員として入ってきた公爵令嬢のクラウディア・ロヴェーヌ嬢は、学園の風紀を乱す存在として見過ごす事の出来ない人物だった。 彼女とは幼馴染で昔は仲よくしていた事もあったが……一時期から疎遠になり、どんどん見た目が派手になっていった。  胸元を大きく開け、歩くだけで男を誘っていると言わんばかりの服装だ。   それとともに様々な良くない噂が私の耳をかすめていく。 男遊びが激しく、貴族令息を誘惑して回っているというものだ。見た目が見た目だけに誰もがその噂を信じていく。  私は昔の印象もあるので信じがたい気持ちだったが、学園の教職員として就任した彼女と話して愕然とした。  昔の面影は全くなく、ねっとりとした話し方で誘うような言い方をしてくるので思わず拒否反応が出てしまったのだ。 それでも信じがたかったが、私の目の前で男性職員に密着している姿を見た時は、もう昔の彼女はいないのだなと悟った。  いずれにしても学園の風紀を乱す者は許し難い事なので、彼女に会う度に何度も注意をしたが全く聞き入れる気はなく、私を堅物で融通が利かない人間だと言い放つ。 口を開けば甘ったるい話し方でそれについても注意をしたが「理事長が意識しすぎなんですよ。生徒にも特に何も言われた事はありません」と言い始める始末――――生徒が先生に意見出来ないでいるかもしれないのに、あまりに能天気過ぎる。  これ以上注意しても無駄だと放置してしまえば楽だっただろうが、理事長という立場上そうもいかないので
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七話 独占欲? ~シグムントSide~
なんだったんだ……昨日のロヴェーヌ先生は。全くの別人のようではないか。 私は理事長室の椅子に座り、机に肘をつきながら昨日の出来事について頭を巡らせていた。自分が見てきたものがまるで現実のものとは思えず、これからどうやって彼女と接していけばいいのか頭を悩ませる。 本当にロヴェーヌ先生なのか?頭を打って別人に生まれ変わったとか? そのくらいの変化があったのは間違いない…… あのようなロヴェーヌ先生ならば学園でもっと人気が出そうだな。 今までも教職員や生徒たちからもとても人気のある先生だったが、私にとっては風紀を乱し私自身の気持ちも乱されるので、彼女の存在が悩みの種だった。 ロヴェーヌ先生が人気者に……その姿を想像してみると、何故だかそれはとても都合が悪い気がしてくる。 風紀を乱すわけではないのに都合が悪いとはなんなんだ? いまいち自分の考えがよく分からずにモヤモヤとした気持ちを抱えたまま、彼女が学園に職場復帰する日がやってきた。 理事長室には朝から弟のダンティエスとミシェル副校長が集まっている。 「ようやくクラウディア先生が復帰するね。楽しみだ」 「まったく、校長は何を企んでいるのです」 「心外だな~~何も企んでいないよ。クラウディア先生がいないと刺激がなくてつまらないじゃないか。彼女はスパイスみたいな人だから」 ダンティエスがまた軽口をきいて、ミシェル副校長に窘められていた。スパイス、か……確かにそんな存在だった事は否めない。 私には好ましくないスパイスだったが。 そんな会話をしているのもバカバカしくなり、書類に目を通しながら彼女が来るのを皆で待つ事にした。 するとすぐに扉がノックされ「失礼いたします」という声と共にロヴェーヌ先生が入ってきたのだった。 礼儀正しく入ってきた彼女は、いつものような胸元ががら空きの服装ではなく、ハイカットの襟元にレースのクラヴァットを首元につけて、とても上品な服装でやってきた。 あまりのイメージの変わりように驚くとともに、その美しさに息をのむ。 ここにいるのは誰だ?まるで女神が降臨したかのような―――― 「長らく休みをいただいておりましたが、今日から復帰いたします。ご迷惑をおかけいたしました」 そう言ってロヴェーヌ先生は丁寧に頭を下げてくる。 彼女らし
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八話 二番手 ~ダンティエスSide~/ 運命の相手 ~国王Side~
 ドロテア王国の第二王子として生まれ落ちた俺は、勉強も二番、王位継承権も二番、剣技や魔法も二番、持って生まれた魔法も兄上は光だったのに対して俺は闇…………全てにおいて兄上に劣る半端者だった。   しかし人間関係においては兄上より上手いようで、特に女性とはすぐに仲良くなれるし、顔立ちも良かったからか遊び相手には困らない生活を送っていた。 誰かと一緒にいると兄上には出来ない事をしているという優越感に浸れる事もあり、絶えず誰かと(主に女性と)一緒にいる事が多く、学園随一の遊び人と呼ばれるようになる。   そんな俺にも難攻不落の女性がいた。   クラウディア・ロヴェーヌ嬢だ。彼女は幼い頃から王宮に来ていた事もあり、兄上と仲が良よかった。 私もこっそり陰から見ていたけれど、兄上に対抗心を持っている俺にとって兄上と仲が良い彼女に近づくのは容易ではなかった。 ずっと陰から見ているだけの存在だったが、いつからか2人の仲が悪くなり、クラウディア先生は見た目もどんどん遊び人のようになっていく。  まるで俺のように……しかし俺と同じ遊び人といった感じなのに、なかなかに身持ちが固い。 兄上が離れたので彼女に声をかけられるようになり、さっそく周りの女性のように口説き落とそうとした。  「クラウディア先生、今夜お食事でもどうですか?」 「夜はお父様と食事の約束がありますの」 「お父上との食事なら明日でも大丈夫では?」 「私にとってはこの世の誰よりも大切な人なの。あなたを優先させる理由はなくてよ、ふふっ」   こうして適当な理由を付けて、俺がどんなに誘っても笑顔でスルリとすり抜けていく。いかにも悪い女と言った感じなのに。   魔力も高く優秀だから全然近寄る事も出来ない。 こんな女性は初めてだった――――たいていは俺が声をかければ目が喜び頬が赤くなり、向こうから近寄ってくるのが定石だ。 クラウディア先生は声をかけたら一度は必ずスルーしてきて、何度目かでようやく立ち止まってくれる。 女性にここまであからさまに冷たい態度をされた事のない俺としては、傷つくというより興味深々だ。  彼女が俺を無視できなくなった時にどんな表情をするのか見てみたい。   そんな好奇心が膨れ上がり、いつからかクラウディア先生から目が離せなくなっていった。 よ
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九話 憩いの時間と用務員カール
 「はい、じゃあ今日はここまで!」   ドロテア魔法学園に復帰してから5日が経ち、少しここでの生活に違和感もなくなり、授業をする事にも随分慣れてきた。 転生する前は学生だったし、誰かに教える立場でもなかったので授業をするという事に物凄く不安があったのだけど、いざ教卓の前に立ってみるとクラウディア先生の記憶も残っているからか、思いの外すんなりと先生をする事が出来たのだった。   最初は先生と呼ばれる事にも違和感しかなかったのにね。   風の教室で授業をしていて気付いたのは、クラウディア先生は割と生徒に好かれていたのだという事。 皆が「クラウディア先生!」と寄ってきてくれて本当に嬉しいし、心から可愛いという気持ちが湧いてくる。   やっぱりクラウディアはカッコいいのよ!  私は一番好きなキャラクターだったので、彼女が慕われていた事実が嬉しくて仕方ない。 それに――――復帰してから理事長に嫌味を言われる事もなく、とても快適に過ごせている。 ゲームでは事あるごとに嫌味の押収だった2人なのに、こんなに穏やかに会話出来るようになるなんて思ってもいなかった。  昨日は教室のゴミ箱を魔法を使わずに持って歩いていると、突然やってきて一緒に持ってくれたのだ。  「君は風魔法を使えるのだから、魔法で重さを軽くしたらいいのに」 「いえ、それだと生徒に示しがつかないと思うんです。なんだかズルをしている気がして……魔法っていざという時に使うものだと思うので」 「ま、真面目だな……」  理事長にそう言われたけれど、そんな私に付き合って一緒に大きなゴミ箱を持ってくれる理事長の方がよほど真面目だし優しいと思う。   「真面目、ですか?このくらい普通だと思いますよ。でも理事長が手伝ってくれて助かりました、ありがとうございます!」  前なら絶対に手伝ってはくれなかっただろうと思うから、今一緒に歩いている事が嬉しくて何だかお礼を言いたくなってしまったのだった。 笑ってお礼を言ってみると、照れながら「礼には及ばない、ク、クラウディア先生が大変そうだったからな」とぶっきらぼうに言葉を返してくれる。   理事長ってツンデレ?それに今クラウディア先生って言ってくれた?!   前はロヴェーヌ先生だったのに……何だか距離が縮まっている気がして
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十話 3人で庭園の手入れ
   「校長!仲良くだなんてクラウディア先生に失礼ですからっ」 「ふ――ん…………」  カールは私の為に言ってくれているんだろうけど、すっごく動揺しているみたいで校長が意味深な笑みを浮かべている。 すぐに男女の仲にしたがる人っているのよね……特に校長は女性関係が派手な印象があるから気をつけなくちゃ。  「植物たちへの水やりを私がさせてもらっていたんです。あ、そうだ!校長もやります?我が学園の庭園は素晴らしいんですよ。一緒にどうですか?」  私はあえて彼を誘ってみた。 いつも身ぎれいにしている校長が、こういった汚れ仕事をするイメージがわかないので、きっと嫌がって戻っていくだろうと思ったのだ。 でも私の推察はすぐに一蹴されてしまう。  「いいね、私も交ぜてほしいって思っていたんだ。クラウディア先生から誘ってくれるなんて嬉しいな~」 「あ、じゃあ校長はこちらのホースで……」  校長が嬉しそうに私に近づいて来そうだったのをカールがその辺にあるホースを校長に渡して、違う方向へ促してくれた。 助かった――ダンティエス校長はいつも笑顔で物腰が柔らかいしニコニコしている事が多いんだけど、何か思惑がありそうな笑顔でなかなか校長との仲を深める事が出来ずにいた。 上司と仲が悪いとやりにくいし仲良くしておくに越したことはないとは思うけど……どうしてこんな作ったような笑顔を見せるのだろう。  理事長と兄弟だけあってとても美しい顔の造りだし、ダンティエス校長はとにかく女性から人気がある。 ここまでモテたら、普通の男性は喜ぶものではないのかな。   ゲーム中のクラウディア先生はあまり校長と交流しているところは出てこなかった。 それなのにこちらの世界では特に校長との交流が多くて、向こうから声をかけてくる事が本当に多いのだ。   廊下を歩いていても突然現れて声をかけられるし、資料室に資料を取りに行った時も気配もなく手伝いに入ってきたり……ダンティエス校長は闇魔法の持ち主だから、それっぽい魔法で自分の気配を消したり人の気配を察知したり出来るのかな。   お顔も美しいしキラキラ効果が物凄いので、どう対応していいのか分からない。 クラウディア先生なら上手く出来るんだろうなぁ。   私が水やりをしながらそんな事を悶々と考えていると、後ろ
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