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白浪まだら
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Novel-novel oleh 白浪まだら

時空勇者 〜過去に遡ったら宿敵の魔王と旅立つことになりました〜

時空勇者 〜過去に遡ったら宿敵の魔王と旅立つことになりました〜

 ある日、勇者として覚醒した青年セリュオスは、各地で仲間を集め魔王エレージアに挑んだ。だが、圧倒的な力の前に彼らは追い詰められ、ついには衝撃の真実を知らされる。 「ーー私の命は過去の文明に七つある。過去の時代に遡って、すべての魔王の命を滅ぼさなければ、現代に生きる私の命が尽きることはない……」  仲間たちが絶望する中、セリュオスだけは一人諦めていなかった。禁忌の魔術《時空追放(テンプス•エクシリウム)》を発動して過去の時代に遡る決断をする。  そこで彼を待っていたのは、かつての歴史にふうじられた全く別の世界だった。勇者と魔王、宿命に導かれた二人の長き戦いの物語がここに始まるーー。
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Chapter: 第97話「外伝 三人の旅路」
 その頃、三人はまだ、自分たちが世界を救うことになるなど|微塵《みじん》も考えていなかった。 この日の森は、いつもと同じ薄い霧に包まれていた。  木々の隙間から差し込む光は弱く、|濡《ぬ》れた葉の一枚一枚に小さな水滴が浮かんでいる。 鳥の声も遠く、そよ風が枝を揺らす音と森の中を進む足音だけが静かに流れる霧の森の中を、三人の男たちが歩いていた。「……ねえ」  先頭を歩いていた少し小柄な男、ラウシュが突然立ち止まった。  背中には大きな荷物を抱え、その手には盾を持ち、彼が前衛であることを示している。 ラウシュは地を這う民なので、大きな身体になることはほとんどないが、|膂力《りょりょく》には優れているのだ。  だが、その顔には露骨な不満が浮かんでいた。「腹減ったんだけど」 「ラウシュ、さっき食べたばかりじゃないか?」  即答したのは、少し後ろを歩いていたドライシュだ。  ドライシュは樹上の民の青年だった。 旅用の|外套《がいとう》を羽織り、腰に剣を差している。  真面目そうな顔立ちをしているが、表情は硬い。「えー、さっきって、どれくらい前だっけ?」 「一時間ほど前だ」 「じゃあ、一時間も経ってるじゃん」 「お前はたった一時間で腹が減るのか?」「減るよ、当たり前じゃん」 「……燃費が悪すぎる」 「人間なんてそんなもんだろ」 「それは、お前だけだ」  ドライシュが呆れたように息を吐く。  その横を歩いていた細身の男、シル=ネムが、小さく笑った。「ふふ……」  シル=ネムは、この三人の中で最も静かな霧の民の男だった。  長い髪を後ろで束ね、肩から小さな袋を下げている。  足取りは軽く、森の中を歩くことにも慣れているようだった。「でも、ワタクシも少しお腹が空いてきましたね」 「ほら! シル=ネムも言ってるぞ! ドライシュがおかしいんじゃないのか!」  ラウシュはドライシュを指差して非難する。「……」  ドライシュは黙ることしかできなかった。  どれだけ自分のほうが正しいとしても、2対1になってしまってはこの状況を覆すことは難しいと思っていたのだ。「勝ったね」 「何に勝ったつもりなんです?」 「ドライシュの理屈に」 「そうですか」  ふふとシル=ネムは
Terakhir Diperbarui: 2026-11-04
Chapter: 第96話「勇者の選択」
「オルデリウス! 俺はどうすればいい!?」  セリュオスはやや慌てながら、そこに君臨する|巨鎧《きょがい》に問いかけた。「そこにいるだけでよい! 今、招き入れるぞ!!」 「……まね、く?」  オルデリウスは混乱する暇すら与えてくれず、セリュオスをその体内へと取り込んだ。「……ここは、どこだ?」  そこは、明らかに異質な空間だった。  緑も毒も一切なく、無数の鋼鉄の機器だけがそこにはあった。「我の中だ」  オルデリウス――ゼルフ78号の操縦室と思わしき場所が、異様なほどに静まり返っている中、セリュオスの頭に直接響くようにオルデリウスの声が聞こえてきた。「ここが、オルデリウスの中……」  外では、暴毒の嵐が荒れ狂っているというのに。  大地が崩れ、空気すらも腐っているというのに。  ここでは不気味なほどに、音という音が存在していなかった。「勇者よ。時間はないぞ」  オルデリウスがそう言った瞬間、魔導回路が低く|唸《うな》り始めた。  脈動が次々に共鳴し、セリュオスを急かしてくる。「わかってる。もう迷いは断ち切ったから、大丈夫だ」  無数の光線が交差するその空間で、セリュオスは聖剣を構えていた。  剣を握る手は、もう震えていない。 聖なる剣身は今までにない輝きを放っていた。  セリュオスの記憶、想い、この旅のすべてを背負った七色の光だった。 ガドルの不屈。  何度倒れても、逃げたとしても、立ち上がり続ける頼もしい背中。 レバザの慈愛。  霧の向こうでも、変わらず道を示してくれる強い眼差し。 アシリィの祈り。  世界を信じ、静かな強さを実現するための希望の光。 シエルハの知恵。  どれだけ絶望の淵にあっても、最適解を探そうとする強固な信念。 エレージアの献身。  自らを削ってでも、勇者を助けようとする奇妙な魔王。 彼らの想いのすべてが、仲間たちの力が、セリュオスの聖剣へと流れ込んできているのだ。  聖剣は魔王を斬るための刃ではなく、世界を背負うための核となっていた。「……魔王ドライシュトラ、お前も、オルデリウスも……魔王らしくない、魔王だった…………でも――」  そっと|呟《つぶや》いたセリュオスの声は震えていない。  その視線の先、照準の向こうには、なおもモ
Terakhir Diperbarui: 2026-10-29
Chapter: 第95話「魔王の選択」
 暴毒の大精霊モルブレアはもはや、それは精霊という枠に収まる存在ではなくなっていた。  神秘的で聖なる化身などではなく、理の守護者でもない。  彼の存在のほうが、悪魔や魔王と呼ぶに相応しいほどの災厄だった。「……ァァア、ァァァァア……」  何を目指しているのかモルブレアは|彷徨《さまよ》い、|纏《まと》っている紫黒色の毒気が嵐のように渦を巻いた。  暴毒は風すらも飲み込み、川の流れすらも侵食し、ミストヴェラールのすべてを腐らせていく。 それはまるで霧の森そのものが悲鳴を上げているようだった。  大地は毒気による泡を吹き出し、沸騰しているかのように踊り狂い、木々は腐敗を拡散していく。 根が溶けることで、その幹は崩れ去り、葉はそよ風が吹いただけで灰のように散ってしまう。  暴毒の世界では、生きているという行為そのものが罰とでも言うかのように。「勇者よ! まだヤツは来ぬのかッ!!」  魔王ドライシュトラの怒号が暴毒の嵐を切り裂いて響く。  ドライシュトラは最前線に立ち、真正面からモルブレアの毒を受け止め続けてくれているのだ。 植物と魔の力が融合した|巨躯《きょく》であり、大地から生えた巨樹のような存在が、暴毒の濁流を必死に止めている。  ドライシュトラが生み出した枝はモルブレアの毒ですぐに溶けてしまうものの、また新たな枝が作り出される。  |蔓《つる》は千切れようとも、再び絡み合い、ドライシュトラの腕となる。 今はまだ、毒が侵食する速度と植物の生み出される速度が拮抗しているのだ。  いや、ほんの僅かだけ、暴毒の侵食のほうが勢いが勝っているように見えた。「……あと少し、みたいなんだ……もう少し、時間があれば……!」  オルデリウスの気配は確実に近づいているが、遠かった。  それでも、オルデリウスの接近を示しているのか、胸元の蛍晶鉱石の輝きは徐々に強くなっていた。「旦那ァ……魔王の身体が……。……クソォッ! あっしらに、もっと力があれば……!!」  セリュオスたちの目の前では、ドライシュトラの身体が幾度と毒に侵食され、幾度と新たな植物を生み出していた。  ガドルは無力感による悔しさを鋼の拳に|滲《にじ》ませているが、何も対策せずに前に出てしまえば、そこに待ち受けているのは死のみだった。「諦めるでない
Terakhir Diperbarui: 2026-10-21
Chapter: 第94話「狂乱の暴毒」
 崩壊した封印陣の先には、暴毒の大精霊モルブレアがその全身を露わにしていた。  まだ意識がはっきりしていないのか、その動きはゆったりとしている。  それでも、そこにいるのはもはや、災厄という言葉ですら生温いほど|悍《おぞ》ましい存在だった。 そして、突然モルブレアが震え出したと思いきや、世界が鳴いた。  セリュオスたちは慌てて耳を塞ぐ。  それはまるで、ミストヴェラールが発した悲鳴のようだった。 霧の森そのものが、耳を|劈《つんざ》くような叫び声を上げている。  すると、モルブレアの巨体から紫黒色の波動が放たれ、地面を這って広がった。  波動は生き物のように、意思を持っているかのように、モルブレアを中心にして環状に広がっていく。 波動が飲み込んだあらゆる根は腐り、すべての葉は黒ずみ、|悉《ことごと》く巨樹が|軋《きし》みながら崩れていく。  豊かな命を育んでいたはずの霧の森が、モルブレアの毒を次々に感染させるようにして、逆に命を奪い始めていた。「……なんて、ことを……」  エレージアの声が|掠《かす》れている。  ドライシュトラと意識を共有している彼女は、おそらくかつてモルブレアが起こしたであろう悲劇を知っているのだろう。「本当にあれが、大精霊、なんですか……? 誰が見たって、あんなもの、悪魔にしか見えません……」  シエルハは学者として、精霊に愛された存在として、その小さな身体が拒否反応を起こすように震えていた。「間違いない。でも、あれはもう狂っている」  アシリィは自然の循環を知る樹上の民だからこそ、嫌でも理解してしまうのだろう。  あれが正常な精霊ではないのだと。  原因はわからないが、大精霊でありながらも制御不可能な毒と化してしまったのだと。 モルブレアの毒はすべてを破壊し、改変を|齎《もたら》していく。  倒れ伏す草木は黒く変色し、腐臭を放ちながら地表を崩していく。 逃げ惑う小動物たちは毒の|瘴気《しょうき》に触れた瞬間、満足に悲鳴すら上げることもできずに倒れてしまう。  彼らは数歩も進むことができないままに、生命の活動を停止してしまった。  毒は地面だけではなく、空気そのものに溶け込みながら、広がっていく。「狂ってるって言ってもよォ……。そもそもあんなのと、どうやって戦えっ
Terakhir Diperbarui: 2026-10-14
Chapter: 第93話「魔王の脅威と魔王以外の脅威」
 セリュオスたちがドライシュトラに|驀進《ばくしん》した瞬間、世界が悲鳴を上げた。  魔王が腕を横に振るった。  ただそれだけの動作だったというのに。 次の瞬間、大広間の空間そのものが|歪《ゆが》み、|軋《きし》む音を立てた。  壁に張り巡らされていた|蔦《つた》が、一斉に脈打ち、まるで意思を持った蛇の群れのようにうねり、絡まり、刃となって襲いかかってくる。「散開ッ!」  セリュオスの声が戦場に鋭く走ると、五人は即座に方々に散った。  誰一人として迷うことはない。  レバザは地を蹴りながら、斧槍の周囲から濃密な霧を噴出させる。  冷たい水気を帯びた霧が瞬時に広間を覆い、蔦蛇たちの視界を奪う。「チッ……!」  ガドルは舌打ちしながらも、その隙を縫って突進する。  鍛えられた筋肉が膨張し、皮膚が鈍く光った。  彼の拳が鋼鉄のように硬化すると、正面から蔦蛇の群れに|叩《たた》き込んだ。 蔦蛇たちが砕け散っていく。  樹液のようなものを飛び散らせながら、床に叩きつけられる。  だが、さらにドライシュトラの追撃がセリュオスたちに襲い掛かる。「弾け飛ばすわ!」  瞬時にエレージアが魔術を展開させる。  凝縮された魔力球が|炸裂《さくれつ》すると、絡みつく根をまとめて|薙《な》ぎ払った。 焦げたような匂いが霧の中に混じる。  しかし、魔王の猛攻は次から次へと生み出される植物たちによって、セリュオスたちを追い詰めようとしてくる。「加勢、する」  そう言い放ったアシリィの周囲には、精霊たちが淡く輝いていた。  風、水、火、土、光。  清浄なる力の奔流が森羅の魔王ごと撃とうとするように、力を収束させていく。 しかし、ドライシュトラは微動だにしていなかった。  攻撃を受け止めようとも、弾こうともしていない。 ただ、そこに在り続けている。  まるで嵐の中でも|屹立《きつりつ》する不動の山のように。 アシリィの精霊たちの砲撃から魔王の身を守ったのは、その周りに落ちていた無数の枝葉の塊だった。  盾のように展開された枝葉によって、力が散らされてしまったのだ。「面白い攻撃だが、まだまだこんなものではないだろう?」  ニヤリと笑ってから、ドライシュトラは手を振りかざす。「……来るぞ!」
Terakhir Diperbarui: 2026-10-08
Chapter: 第92話「第二の魔王ドライシュトラ」
 五人が城内に足を踏み入れた瞬間、重厚な石扉が背後で完全に閉じた。  ガドルは少しだけ驚いた様子だったが、すぐに気を取り直して前方を向き直っていた。 まずその目に飛び込んできたのは、城の中にも自然が広がっていたことだ。  まるで城の中にも森があるかのように、ドライシュトラが大自然を愛していたかのように、そこには緑があった。  そして、さらに奇妙だったのは、魔王城の内部があまりにも静かだったことだ。「音がしないな……」 「ずいぶんと静かだね」  セリュオスに答えたのは、レバザだ。  彼女は霧の広がらない城の中の森を不思議そうに眺めている。 二人の声すらも、城の中では不自然なほどに吸い込まれていった。  大地と呼んでいいのか、城の廊下を進む足音も響くことはなかった。 ひとつ、またひとつ。  セリュオスたちの足音は響くことはなく、ただ静かな城内を進んでいく。 敵の気配はまるで感じられず、見張りの姿はない。  生物が放つ殺気も魔力の痕跡も、敵を迎撃するために張り巡らされた罠の存在すら感じることはできなかった。  魔王城という名が示すはずの拒絶が、どこにも存在していなかった。「……なんか、拍子抜けだなァ」  ガドルが退屈そうな声で|呟《つぶや》いた。  声を抑えなくとも、その言葉は城内で響くことはない。 だが、彼は無意識なのか、その拳を握り締めていた。  軽口の形を取ってはいるが、視線は常に左右へと走り、緊張は張り詰めたままなのだ。 しかし、その警戒に反して、敵が現れるようなことはない。  最後の戦場に向かう道としては、 不気味なほどに静かで、あまりにも不自然だった。  戦場における血の匂いも、人が暮らしている痕跡も、争いの|残滓《ざんし》すらここには存在しない。 城内の壁には、濃い緑の|蔦《つた》が|這《は》っている。  石の隙間に沿うように伸びるのではなく、まるで最初からそこに組み込まれていたかのように、自然な曲線を描いていた。 上を向けば、大樹の枝が垂れ下がり、その葉は枯れていない。  それは僅かに揺れ、微かな呼吸をしているかのようだった。 城というよりも、巨大な温室と表現したほうが近いかもしれない。  石と大地と植物が調和したまま在り続けている不思議な空間だった。「また、森
Terakhir Diperbarui: 2026-09-30
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