Chapter: 50タランタシオが口を大きく開け、そして「キュ!キュピピ!キュピッキュキュピッキュウッ!《ほら!見て見て!まだ魔物の生き残りがいたよ!》」ナタの頬をてちてち叩いた。(な、何故だ!?何故俺のスキルが効かない……!?)これに男は焦る。だって自分は止めを刺すつもりで鳥型の魔物と突っ込もうとしているのに、使役獣は言う事を聞かないどころか少年に男の位置を教えるではないか!そもそもタランタシオは魔物ではあるがゲームで手に入れた卵がそのままステラート世界に反映された存在。つまり、ウェスタの持つウルカヌスの双剣と同じく、女神の生成物。その本質は魔物よりも聖獣に近いということだ。それ故に男の黒魔術スキルが効かなかった。そして、更に男の敗因を上げるとするならね、「わあ!メルラだぁ!!」その乗ってた鳥型の魔物《メルラ》の羽が『灰を纏う羽毛』っていう錬金術素材だったってことだ。「アレ俺の獲物ね!」とルンルンで魔法弓を構え、男は鳥の上で「ま、待て、いや待ってくれ!」と叫ぶも、素材にしか意識の行っていないナタは全く気が付くことなく「『神の裁き《ジュスティーツィア・ディアーナ》』」撃ち落しちゃった。ウェスタが手を眉あたりに当て、日よけの影を作りながら落ちていく鳥と人影に向かって「あーあ。」と声を投げる。ま、ナタ様に喧嘩売る方が悪い。ウェスタは落ちていく魔物を見ながらウンウン深く頷いた。(……にしても、今の魔物といいなんだか……)やったー俺の獲物~!キュピィ~!と魔物の方へと向かうナタとタランタシオを横目にウェスタはなんとも言えない違和感に眉を寄せる。「……あの男、魔物を操っていませんでしたか?」「……ソールもそう思うか?」ウェスタの言葉にソールも疑惑が確信に変わったのだろう。マールスに目配せをし、そのアイコンタクトを受け取ったマールス
Terakhir Diperbarui: 2026-11-08
Chapter: 49そして、そんなナタたちを遠くから監視している人影が、一つあった。 鳥型の魔物の背に乗り、森の高い木の陰から、その姿をじっと見つめる。その男もまた、邪神として崇めるステュクスに心酔し、新たな黒魔術のスキルを得た信者の一人だ。 |女神の祝福《生まれ持ったスキル》など捨て、自分はステュクス様に認められたのだと、それはもう歓喜した。しかし、男は初めての任務を失敗したのだ。それはスッド国の瘴気溜まりを暴走させ、国を壊滅させる事。 男は自らの黒魔術スキルを使い、大規模な魔物襲来を誘発させた。だが、流石は戦士の国、スッドの民。 九回も魔物を暴走させたのに、国を堕とすような被害は与えられなかった。だが、十回目。 瘴気溜まりから炎の巨人、カークスが生まれた時、男はようやく任務を達成できると喜んだ。それなのに!!あのナタという少年が全てをひっくり返してしまった!被害は最小限。少年が魔法スキルを発動させたのは二回だけ! それにも関わらず、魔物はカークス含め、一匹残らず殺された。男は絶望した。任務は失敗したし、男は組織に消されるかもしれない。それ以上にステュクス様に見捨てられるのが恐ろしかった。しかし男は任務に失敗したものの殺されなかった。 男の得た黒魔術スキルの一つ、『魔物の使役』。それが珍しい故に、一度だけ見逃されたのだ。そして次の任務が与えられた。 それは『オーヴェスト国の瘴気溜まりを暴走させること』だった。スッド国よりは規模が小さくとも、現代の魔法使いだけでは消し去れないほどの大きさを誇るオーヴェスト国の瘴気溜まり。 オーヴェスト国を大規模な魔物襲来が起きた所で、再び国王、シルウァ・フォレスタに呪いを仕込む。そうして多くのエルフの嘆き、哀しみ、恨み、憎しみを集める予定だったのに……(瘴気溜まりが消えちまったじゃねぇーか!!?)しかも何かサクッと斬って終わったし。 何あのあっけなさ。 スッド国の次に大きい瘴気溜まりだっ
Terakhir Diperbarui: 2026-11-07
Chapter: 48「えーっと、つまりこちらの瘴気溜まりが膨張したタイミングはスッド国の瘴気溜まりが消滅したタイミングで……」ソールがこめかみを押さえる。「秘宝の共鳴は、女神の神器である双剣をナタ様が取り出しウェスタに授けたタイミングだと……」シルウァは眉間を揉んだ。ネプトとウェスタから先のスッド国で起きた詳細を教えてもらった二人と護衛一人はなんかもう頭がパンクしそうだった。規格外にもほどがある。「時系列的にそうかと……」と、三人のどことなくくたびれた姿に気まずそうに頬を掻いたネプトに「と言うか……」と、ソールがフッと遠くを見やった。「瘴気溜まりって消せるんですね……一撃で。」「まずい!あまりの衝撃にソールの目が死んだ!!」あんな|表情《かお》みたことねぇ!と騒ぐウェスタと反対に、ネプトは「わかる、わかるよ……ナタ様やばすぎるよね……」と同情し共感している。「……そもそも、なんで秘密裏なんだ?」「なんで……とは?」ウェスタの問いにソールが小首を傾げる。それに「だってよ、」とウェスタは言葉を続けた。「管理者のソールが新しく就任した神官長を連れて公式訪問した方が牽制になるんじゃねぇーの?」あっさりと告げられたそれにソールだけではなく、後ろに控えていたマールスも目を見開いた。そんな二人の反応に「んん?この前の女神の選別で神官長も入れ替わってたよな?」「アタシの記憶違いかぁ?」と一人ウェスタが首を傾げる。それにソールは少し置いて「合っていますよ。」と肯定し、「私も名に『S』を持つ身です。シルウァ様と同時に狙われる可能性もなくはないので念のため極秘で訪問を。」と、ウェスタの疑問に答えた。そんなソールの回答に「S…&he
Terakhir Diperbarui: 2026-11-06
Chapter: 47あまりの神聖すぎる気配に怯えるウェスタを置いてきぼりに……と言うよりも微塵も気にせずに、ナタは自分にしか見えないマップを開いて(次はオーヴェストのどの辺にしよっかなー。)と呑気に考えていた。おい元凶。ネプトだけは「わかる、わかるよ。急にそんなやべぇのポンって渡されるの心臓に悪いよね。」と声には出さないものの、後方理解者面で頷いている。ネプトもいきなり伝説の剣渡された被害者なので……しかし、ナタは何も気にしない。ナタにとっては伝説の剣じゃなくて、作ってみたかったレシピで、ゲームの古龍の大剣というアイテムに過ぎないし、大事なのは実験データなので。「じゃ、次行くよ~。」なんて軽い口調と共にポンと肩に手を置かれたネプトは「えっ。」とその口元を引きつらせる。ウェスタに至っては「は?」と一音だけなのに大変ガラの悪い音を零していた。そう、ナタは自分が錬金術で作った武器の能力を知りたいだけ。つまりウェスタにあげた双剣に関しては単にこの場を治めるためにあげとくか~くらいの物であり、性能自体は非常にどうでもよく、しれっとこのままこの砦の森に置いていくつもりでいた。ウェスタは大剣をもらえたネプトが羨ましいわけじゃなくて弟子として先を越されたのが気に入らないだけなのだが、人間心理初心者(笑)なナタは全く気付いていないのだ。なんてむごい。しかしスッド最強の王女、ウェスタの反射神経の方が早かった。置いて行かれて堪るものか、と咄嗟にナタの肩を掴み、「……ここは……オーヴェストのエルフの森か……?」ついてきちゃった。これはナタも想定外。ネプトも含め皆で目を丸くしてお互いの顔を見やる。(ま、いっか。データさえ取れればいいし。さすがに他国の森の中じゃ勝負挑まないでしょ。)しかしナタの切り替えは早かった。こいつの脳内は1に錬金術、2に錬金術。3、4続いて5に錬金術なので
Terakhir Diperbarui: 2026-11-05
Chapter: 46スッド国の第一王位継承者であるウェスタ。 例え一時的に継承権を返上することになっても、ナタと同じ強者の極みに立ちたい。守りたい人を守るための絶対的な力を得たいと、そう心の底から願い、ナタ様に弟子入りしたと言うのに「ぬぁあんでテメェがナタ様に面倒見てもらってんじゃネプトゴラァァァァアア!!?」「いぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁーーーーーー!!」砦の森の瘴気溜まりが圧倒的聖なる光によって滅された。1000年。 1000年だぞ。1000年もの間、誰かの大事な人を殺し、奪い、絶望させてきたあの瘴気溜まりが、跡形もなく消えたんだぞ。そんなことをできるのはナタ様しかいねぇ!と飛び出したのに、ナタ様の近くに居たのは弟子のウェスタではなく、聖なる力を秘めた大剣を携えたエスト国のネプト。ウェスタの気分は「こんの泥棒猫!」である。飛び出してきた勢いのままネプトに掴みかかりガックンガックン揺さぶる。 ある意味この事態を生み出した元凶であるナタはそっとネプトとウェスタから距離を取ろうと一歩後ろに後ずさった。しかしその瞬間グリンとウェスタの顔がナタへと向けられる。 ひゅっと喉を鳴らしたナタに一瞬の間で詰め寄ると「ナタ様!!瘴気溜まりを消してくれたのは大変ありがたいですが何故その技をアタシに教えてくれないんですか!?」と、これ以上逃げられないようにその肩をしっかりと掴んだ。 なんなら掴んだ所がぎちぎち言っている。ナタは既に逃げ出したかった。「いや、これは、」 「アタシの何がダメだったんだ!?大剣ならアタシだって使えるのに!」「そういうのじゃ、」 「やっぱりナタ様から一本取れなかった事か!?」「いや、違、」 「だがネプトのひょろがり野郎が一本取れるわけがねぇ!一体どうしてなんだ!?」「この流れで僕ディスる必要あるぅ……?」止まらねぇ。止まれねぇぜウェスタの勢いがよ。 ナタの声もネプトの力ない突っ込みも何にもウェスタの耳には届きはしない。
Terakhir Diperbarui: 2026-11-04
Chapter: 45何度も言うようだが、ナタはそもそも錬金術意外の事はどうでもいい。本当にどうでもいい。つまり何が言いたいかって言うと「あのぉ……ここはどこでしょうかぁ……?」「え?スッド国の砦前の森。」そう、こいつウェスタから逃げていたことも、ネプトが他国の王族であるであることも忘れてやがる!ナタの脳内は如何に生成した大剣の性能を検証するのかでいっぱいなので……「ここの魔物斬ったら次はオーヴェストね。」「次とかあるんですかぁ!!?!?」いきなり魔物溢れる森に放り出されたと思ったらまだ序の口だったらしい。ネプトは内心泣いた。スッドと違ってネプトの国、エストの王族は前線で戦う事はほぼない。確かに最低限の剣術は習っているが所詮その程度だ。しかしナタ様の期待を裏切るわけにもいかない。泣く泣く大剣を振り上げれば「え……」大口を開けていた狼型の魔物が、数匹まとめて真っ二つになっていた。(振るうのに重さを感じない……!それなのにこの切れ味……!これが伝説の神剣!)よく見れば狼型の魔物だけではない。もっと後ろにいた魔物たち……いや、それどころか向こう側の木々ですら、太刀筋に沿って消し飛んでいた。「効果範囲が段違いだな……振るってて重さは?体力かなり持っていかれる?」とナタがペン片手に問えば、ネプトはどこか放心状態のまま「いえ……とても軽く……元気です……」と語彙の溶けた答えを口から零す。それをメモしながら「属性関しては?どの魔物がひときわ固く感じたとかは?」そう更に質問を重ねる。本当に検証にしか興味が無い。「いえ……全く分からないですぅ&he
Terakhir Diperbarui: 2026-11-03