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Bought a Boxing Queen to Harvest Her Heart

Bought a Boxing Queen to Harvest Her Heart

作家:  Starving Desperado完了
言語: English
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概要

Forbidden Love

Redemption

Forced Love

CEO

Scheming

Male POV

Plot Twists

Pathological

Tragic Love

I've placed a no-limit bid just so I can buy Eloise Kane, the best underground boxer, from an underground boxing ring. Without even sparing me a proper glance, she's already naming her conditions with a sneer on her face. Apparently, she wants a deluxe apartment that's located in the heart of the city, a monthly allowance of ten million dollars, and most importantly, I mustn't interfere with her social circle. Everyone thinks I've gone nuts for buying myself a mistress just so I can cater to her whims and needs. But I don't mind at all. I just point at her left chest and tell her, "Just maintain a regular lifestyle. Don't let anything happen to your heart." I even go so far as to offend the heiress of the most prominent family in the elite society in order to defend Eloise. That is, until I heard Eloise gets stabbed for her jealous antics in a bar. By the time I arrive at the private room, I see her embracing a male escort while laughing at the top of her lungs. "Oh, I'm the one who hired someone to hit his sister with a car! It's best if she dies, though! That way, his assets will be mine! "Besides, he's just an idiot whose only purpose is to give me money! Who does he think he is, anyway?" Amid the eerie silence, I snatch up a wine bottle and smash it into Eloise's head. Then, I slam her head into the pile of blood-stained glass shards. After that, I dial the hospital's number. "Her heart is in top shape, and it's a perfect match. Tonight, you can wheel my sister into the emergency room. Time to prep for the heart transplant surgery."

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第1話

Chapter 1

 公正契約大神殿の天井には、過去の「大案件」の名前が刻まれている。

 戦争終結条約、王位継承の調停、神殿と王家の和解。

 その一番端に、空いたままの枠が一つ。

(……たぶん、あそこに今日の案件が増えるんだろうな)

 私は祭壇の前で、他人事みたいに思っていた。

 白金の指輪が、左手の薬指でかすかに浮いている。サイズがわずかに合っていなくて、指を動かすたびに、きゅっと皮膚をこすった。

《指輪、やっぱり半号大きいですねえ》

 頭の内側で、聞き慣れた声が笑う。

 公正契約の女神。今日の式の主催者であり、私の上司であり、この世界で一番、条文にうるさい存在。

(今、そのツッコミいります? 女神様)

《大事ですよ? サイズが合ってない指輪って、だいたいこの案件、最初から微妙ですよってサインですから》

(縁起でもないことを、神様が言わないでください)

 私は口元だけを上げて、外からは分からないように息を吐いた。

 祭壇の背後には、光の板が何枚も重なって浮かんでいる。そこに王太子レオン殿下との婚約契約の条文が、ゆっくりスクロールしていた。

「互いの名誉を守ること。王国と神殿の協力関係を維持すること。聖女としての務めを最優先すること……」

 中央の神官が、祝詞のような調子で読み上げていく。

《はいはい、前置きの綺麗なところですね》

(女神様、声、被ってます)

《聞こえるのは聖女様だけですから。安心してツッコミどうぞ》

(……ツッコまないといけないんですか)

《心の健康のためにどうぞ》

 そんなやり取りをしているあいだも、式は進んでいく。

 高い柱には祈りの絵ではなく、細かな文字が刻み込まれている。壁の装飾も、天井のレリーフも、すべて条文の断片で埋め尽くされていた。

(契約に特化した神殿、というか……巨大な契約書ですね、ここ)

《褒め言葉として受け取っておきます》

 祭壇前の床には、円形の魔法陣ではなく、契約書レイアウトの線が描かれていた。見出しの位置、条文の欄、署名欄。

 私と、その隣に立つレオン殿下は、署名欄にあたる場所に立っている。

「……本日は、王太子殿下と聖女リディア殿との婚約契約の履行状況についても、神前にて確認し――」

 神官が言いかけたところで、隣から低い声が割り込んだ。

「形式通りで構わない。その必要はないだろう」

 レオン殿下の横顔は、絵画のように整っている。

「……殿下。『その必要はない』とは、どの部分についてでしょうか」

 台本にはない問いが、つるりと口からこぼれた。

 私は基本的に、波風を立てない聖女として教育されてきたのに。

「実務の細かい確認などだ。ここは祝福の場だろう」

 レオン殿下は、私ではなく前方を見たまま答えた。

「そうですね。ここは祝福の場です」

「ならば――」

「だからこそ、契約の履行状況は、女神様に正しく報告した方がいいと思います」

 正面を向いたまま、私は微笑みを崩さない。

 殿下の視線が一瞬だけこちらに向き、すぐ前へ戻った。

《……ログ的には、なかなか良いツッコミでした》

(褒めても何も出ませんよ)

《分かってますよ。ログが増えるだけです》

 胸の奥には小さな棘が刺さったままだ。

 今さら、細かい確認は不要。

 三年間の自分の生活を、そう一言で片付けられた気がして。

「聖女殿。……王太子殿下のご負担も大きい。式は円滑に進めたいのだ」

 前列から、王様が穏やかな声を投げてくる。

「もちろん、陛下。私は、形式通りで構いません」

 私は一礼し、定型の言葉を返した。

 それが喉を通る間、掌の中で自分の爪が痛い。

《……これは、あとで教材にしましょうか》

(教材?)

《形式通りで構いませんと言っている人ほど、だいたい限界のログが溜まってるって話です》

(女神様、そういう本気の分析を式の最中にしないでください)

《仕事中なので》

 光の板の端には、私の横顔が映っていた。理想的な角度で首を傾け、微笑む聖女の顔。

 前の世界よりはずっとマシだ、と自分に言い聞かせてきた三年間の気配が、淡く胸に浮かんで消える。

「聖女リディア」

 名前を呼ばれ、私は意識を現在に戻した。

 神官がこちらを向き、厳粛な声で告げる。

「これより、公正契約の女神の御前にて、婚約契約の確認を行う。異議はあるか」

「異議は、ありません」

 反射的にそう言いかけて、私は一瞬だけ言葉を飲み込んだ。

 頭の奥で、女神が「おや」と小さくつぶやく。

《一応、聞きますけどくらいのニュアンスでいいですよ?》

(……女神様。異議、出していいんですか)

《契約確認ですよ? 異議を出してはいけない契約確認って、すでに破綻してませんか》

(なるほど)

 喉の奥で笑いを押し込む。

「……契約内容の確認、よろしくお願いいたします」

 少しだけ言い回しを変えて、私は答えた。

 神官がうなずき、祭壇に向き直る。

《では、形式通り。ログの確認から入りましょうか》

 女神の声が、頭上から本堂全体に染み込むように響いた。

 光の板が一斉に切り替わる。

 王太子婚約契約・履行ログ。

 淡い文字が浮かび上がり、過去三年間の記録が、薄い光の頁になって重なっていく。

「ログ……?」

 前列の重臣の誰かが、小さくつぶやいた。

 隣でレオン殿下が、わずかに眉をひそめる。

「本日の式は、祝福の再確認だけではありません」

 女神の声が、静かに告げる。

《三年間のログをもとに、この契約をどう扱うかを確認する場でもあります》

(どう扱うか……)

《はい。続行するのか、条件を修正するのか、あるいは――》

 女神は、そこで言葉を切った。

「女神よ」

 王が、わずかに前のめりになって声を上げた。

「本日は、内外に向けて婚約を示す儀のはず。……その、ログとやらを読み上げる必要があるのか?」

《ありますよ、陛下》

 女神は即答した。

《契約というのは、祝いたいところだけを拾っていても、公平とは言えませんから》

 その言葉に、広い本堂の空気が、少しだけひやりと変わる。

 王妃が、扇を持つ指先に力を込めたのが、ここからでも分かった。

「では、まず三年前の、婚約締結当日のログから」

 光の板の一枚が、すっと前にせり出す。

 夜の回廊。高い窓から差し込む月光。

 見覚えのある風景が、薄い光の中に浮かび上がる。

(……ここから再生します?)

《もちろん。シリーズ的に、とても大事な一言がありますからね》

(女神様、その言い方やめてください)

《大丈夫です、まだ単語しか出しませんから》

 女神が楽しそうに言う。

 私の胃が、きゅっと縮む。

《お前を――》

 あの夜、彼が口にした、最初の二文字が、頭の内側でくっきりと蘇る。

 でも、光の板の映像は、その瞬間でぷつりと切れた。

《……と、いうところまでが、本日の事前ダイジェストです》

 女神の声が、さらりとオチをつける。

 本堂のあちこちから、安堵とも困惑ともつかない息が漏れた。

「……続きは、読まないのか」

 レオン殿下が、小さく問う。

 彼の声には、わずかな苛立ちと、ほんの少しの不安が混じっていた。

《本番は、もう少し後でまとめて読みましょう。今日はまず、この三年間が契約としてどう扱われるかの全体像からです》

 女神は柔らかくかわす。

《聖女様》

(はい)

《三年前のあの夜のこと、少しだけ振り返っておきますか》

(……ここでですか)

《ええ。国のための契約に自分を合わせ続けた三年間の話ですから》

 女神の声が、ほんの少しだけ真面目になる。

 私は、わずかに顎を引いた。

(分かりました。……では女神様。最初のログから、お願いします)

《承りました。では、あなたの朝にまだタイムカードも、私の声もなかった頃の話から、ゆっくり再生していきましょう》

 天井に刻まれた無数の契約名が、光に縁どられる。

 空いていた最後の枠が、淡く輝いた気がした。

 三年前の、自分の選択。

 それが今日、ここで「私のために終わらせる契約」に変わるかもしれないことを、このときの私は、まだ自覚していなかった。

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