The Sound Of Your Heart

The Sound Of Your Heart

last updateLast Updated : 2025-05-21
By:  J.V.NoelCompleted
Language: English
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Tyler, the popular jock with a gentle and friendly demeanor who never fails to brighten Miles' darkest days, helped Miles, the openly gay teenage kid who was the target of bullies and abuse, find comfort. As Tyler offered to assist Miles with his studies, the two realized that they had been genuinely in love for a very long time and soon found themselves dating. Will they be prepared for what is about to happen? Will they battle to keep their union intact, or will they choose to pursue separate lives?

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Chapter 1

Prologue

「もう決めました。村上(むらかみ)先生、離婚協議書を作成してください」

星奈(せいな)は、五周年の結婚記念日を、夫と共にではなく弁護士事務所で迎えていた。

家では、隆成(りゅうせい)が自分の秘書の雫(しずく)をもてなしている。

妻であるはずの星奈が、家を出て行かされる立場になっていた。

五年もの間、隆成は会社で自分たちが夫婦であることを一度も公にしなかった。

星奈は、もう一度だけ、ちゃんと話をしたいと考えていた。

だが、隆成が「雫がひとりで家にいるんだ。停電で困っているみたいだから、こっちでご飯を食べさせることにしたよ。星奈、いいよね?」と何気なく言ったその瞬間、星奈は悟った。もう、何も期待する必要はないのだと。

離婚こそが、この五年間の関係を終わらせる唯一の答えだ。

……

「村上先生、離婚協議書を今日中に作っていただけませんか?」

別荘の中から、男と女の楽しげな笑い声が聞こえる。その声を耳にして、星奈はもう気持ちを抑えきれず、弁護士に電話をかけていた。

夜風は肌を刺すほど冷たい。でも、星奈の心はそれ以上に冷え切っていた。

ここは本当は星奈の家。今日も、本来なら五年目の結婚記念日であるはずなのに。

それなのに、星奈は夫に家を追い出され、彼の女性秘書にその席を奪われている。

電話口の向こうからは、静かなため息が聞こえてきた。「星奈さん、一度お会いして詳しくお話ししましょう」

一時間ほど前、星奈は急いで家に帰ってきて、テーブルに並ぶ色鮮やかな料理を前にして、ひとつため息をついた。

「隆成、私が辛いものが苦手なの、知っているでしょう……」

星奈は決して好き嫌いが多い人間ではない。

けれど、今日の食卓に並んだ料理の中で、星奈が口にできるものはほとんどなかった。

どんなに好き嫌いがなくても、身体を壊してまで食べたくはない。

星奈が唐辛子にアレルギーがあることは、隆成も知っているはずだ。

だからこそ、この五年間、星奈が作る食事はいつも控えめな味付けが中心だった。

なのに今日は、隆成が注文した料理はどれも刺激の強い四川料理ばかり。

隆成は、テーブルの上で唯一唐辛子が入っていないトマトと卵のスープだけを星奈の前に押しやると、不機嫌そうに言った。

「俺が普段どれだけ忙しいか分かってるだろ。こんな些細なことまで気を配る余裕なんかないし、会社だって、俺がいなきゃ回らないんだ。せっかく時間を作ってお前と飯を食ってるんだから、余計な文句は言うな。それに、このトマトと卵のスープには唐辛子が入ってないだろ?」

星奈は、隆成の心が自分から離れていることに気づいていた。

もしかすると、最初から、隆成は星奈に関心なんてなかったのかもしれない。

それでも、まさか五年間の積み重ねをここまで無視され、あからさまな冷たさで突き放されるとは思っていなかった。

今日は五周年の結婚記念日。テーブルには十二皿もの料理が並んでいるのに、星奈が食べられるのは一皿だけだった。

星奈が何か言いかけたそのとき――

突然、隆成の携帯電話が鳴った。

隆成は電話に出ると、楽しげな声で誰かを迎え入れ、キッチンから新しい食器を持ち出して、自分の隣の席に丁寧に並べ始めた。

電話を切った後、やっと星奈の方を向いて聞く。

「雫がひとりで家にいるんだ。停電で困っているみたいだから、こっちでご飯を食べさせることにしたよ。星奈、いいよね?」

本来なら尋ねているはずのその言葉も、隆成が口にすると、ただの宣言にしか聞こえなかった。

星奈は苦笑するしかなかった。

ここまで段取りを進められてしまえば、断ったところで何も変わらない。

「そういえば星奈、さっき何か言いかけてなかった?」

隆成は、ふと思い出したように星奈に尋ねた。

今日は五年目の結婚記念日。

星奈は、せめてこの日だけは二人きりで食事をしたいと思っていた。本当は、誰にも邪魔されたくなかった。

言えば隆成が不機嫌になることは分かっていたけれど、星奈は勇気を出して口を開いた。

「隆成、今日は結婚記念日だから、二人きりでゆっくり話をして、一緒にご飯を食べたいの……」

やはり、星奈の言葉は最後まで届かない。

隆成は眉をひそめ、あからさまな不機嫌さを見せながら、手に持っていたお椀をテーブルに乱暴に置く。

「結婚記念日くらい分かってるよ。いちいち言わなくたって、まるで蝿みたいにうるさいんだよ。

これだけの料理を頼んだって、お前一人じゃ食べきれないだろ。あの子は毎日俺のために働いてくれてるんだ。今日はその子にもご飯を食べさせてやるだけだ」

隆成の強い口調に、星奈はうつむいた。

何も言わず、目の前のトマトと卵のスープを静かに口に運ぶ。

気がつくと、目の奥が熱くなっていた。

ぽろぽろと涙がスープに落ちていく。でも、星奈はそれを飲み込んだ。

これだけの料理、一人ではどうやっても食べきれない。

星奈は無言でスープを飲み干し、もう一度顔を上げた時には、普段通りの表情を取り戻していた。

ただ、うっすら赤くなった目元に、隆成が少しでも気づいてくれたら――そんな淡い期待すら、もう残っていなかった。

「隆成、私たち、離婚した方がいいと思う」

向かい側の隆成は、ずっとスマホを見つめたまま、ぼんやりと笑みさえ浮かべていた。

星奈の言葉が耳に入っていなかったのか、「あ?」とだけ返す。

星奈は感情を押し殺したまま、表情を変えずに座っていた。

もう一度言い直そうとしたそのとき、またしても隆成に遮られる。

「雫が来たみたいだ。何か用があるなら、あとで話してくれ」

星奈は口を開いたが、隆成はそれさえ待つことなく、足早に部屋を出て行った。

その背中をただ見つめるしかなかった星奈は、そっと口元を引き締め、スマホの画面を指でなぞった。

【あとで弁護士事務所に行きます】

これからはもう、隆成が他の女性と関わるのを私が邪魔することもなくなる。

五年の月日が流れ、結局、あの人の母が亡くなる前に願ったことも叶わなかった。

でも、もう星奈は、これ以上待つことはできなかった。
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