Short
You Always Make Me Wait

You Always Make Me Wait

By:  Ivy MonroeCompleted
Language: English
goodnovel4goodnovel
11Chapters
5.3Kviews
Read
Add to library

Share:  

Report
Overview
Catalog
SCAN CODE TO READ ON APP

The night before I was supposed to stand beside Lucius Corleone at the altar and become his wife, he sent me a message. Sienna was pregnant. According to the family code, her child would be the first legitimate heir to the Corleone name. So Lucius ordered me to leave Sicily for three years—and tell everyone I had broken our contract first. For eight years, I had been his shadow. I wiped away his blood, buried his crimes, protected his business, and waited for the day he would finally bring me into the light. But now, he said Sienna belonged in the sunlight. I stared at the message, my hands still burning from scrubbing away the evidence of his latest murder. Then I typed back one word. "Understood." A second later, Sienna's official wedding announcement appeared on the Corleone family's private network. Apparently, she couldn't even wait until morning to wear my ring.

View More

Chapter 1

Chapter 1

 銀座の夜は、欲望を隠すように暗く、底知れなく|眩《まばゆ》い。

 高級会員制クラブ『club |Estrella《エストレージャ》』。ミッドナイトブルーの|絨毯《じゅうたん》と、滝のようなクリスタルシャンデリアが頭上で|煌《きら》めく。

 キャストの一人が合図を送る。

 それを見た白鳥|凜《りん》は、足音を殺して素早く駆け回った。

 装飾のない地味な黒のパンツスーツに身を包み、ただ床を這い回る影になる。それが、凜の仕事だった。

 美容院に行くお金を惜しんで伸び切った黒髪を後ろで無造作に纏め、客の落とした灰を拾い、汚れたグラスを黙々と下げる。

 頭上で|眩《まばゆ》く輝くシャンデリアを見上げる余裕さえない。かつて名家の令嬢であったはずの凜は、今やこの華やかな世界の底辺で、ただ床を這い回る影でしかなかった。

 だが、今夜は事情が違った。

 人気キャストの|玲奈《れいな》が、急な体調不良を理由に欠勤したのだが、なぜか「代役には、裏方の凜を」と店長に名指しで頼んできたらしい。

「なぁ、凜。玲奈の強い希望なんだよ。今夜だけキャストとして入ってくれ」

 店長が凜の前に両手を合わせ、|大袈裟《おおげさ》なまでに頭を下げる。

『その顔なら客取れるって』

 凜が『club |Estrella《エストレージャ》』に入店した頃から、玲奈が|幾度《いくど》となく冗談めかして言っていた言葉が頭を|過《よ》ぎる。

――もしかして、本気で言ってたんやろか……。

 断ることはできる。いつも通りホールスタッフをすればいい。

 けれど、今月は足りない。臨時の出費が、まだ埋まっていなかった。

「……やります」

 絞り出した声は、思った以上に|掠《かす》れた。

「……お酒のお相手や、会話はさせていただきます。でも、それ以上のこと……身体を売るような真似は絶対にしません」

 凜が真面目な顔で話した内容に、店長は苦笑しながら大きく頷く。

「分かってるって。お前のそういう真面目なところは信用してるよ。それに、ここは風俗じゃないんだ。身体を売る必要なんてない。

 お得意さんがな、特別なVIPを連れてきてくれるらしいんだ。海外帰りの若手CEOで、とんでもない金持ちだし、とにかく顔がいいらしい。|粗相《そそう》だけはしないように気を付けてくれな」

「それなら、私なんかじゃなく、他の方のほうが……」

「今日は金曜だ。皆接客中だし、そういう目が肥えた金持ちは、|初心《うぶ》な方がウケるんだよ。それに、凜なら任せられると思ってな」

 店長はそれだけを告げて、ドレスを押し付けて立ち去ってしまった。

 控え室に入り、手渡された華やかなドレスを広げる。ざらついた化学繊維が指先のささくれにひっかかる。

「|初心《うぶ》、か……」

 店長の言葉を|反芻《はんすう》し、|自嘲《じちょう》気味に口角を上げた。

――あの時、全て投げ捨てて逃げなければ、今の自分はどうなっていたんやろう……。

 そんな思いが頭を駆け巡る。

 ドレスに足を通し、背中のファスナーを上げる。

 姿見に映る自分を見つめた。目の下には色濃い|隈《くま》が浮いている。

 凜は安物のファンデーションを手に取り、|隈《くま》を隠そうと|執拗《しつよう》に肌へ叩き込む。

 塗り固めた肌は指先にざらりと馴染まない。

 緩くうねる豊かな髪を、これでもかと左側の頬へと撫で下ろす。

鏡の中にいるのは、かつて最高級の絹を纏っていた令嬢の|残骸《ざんがい》。ただの、死んだ目をした女だった。

 八年前のあの日から、凜の時間は止まったままだった。

* * *

『山下様、お待ちしておりました』

 レセプションで、店長が山下と呼ばれた、深いグレーのスーツに身を包んだ男性に深々と頭を下げる。

 凜も見覚えがあった。よく玲奈が接客している男だ。

 そして、その背後にいた黒スーツの男へ目配せしたとき、凜は目を見開いた。

 口が意思に反して、酸素を求めるように小さく開閉を繰り返す。

 黒瀬|理玖《りく》――八年前、私の前から姿を消した、初恋の人がそこにいた。

 だが、凜の記憶にある優しい少年ではなかった。

 体に寸分の隙もなくフィットした|艷《つや》やかなダークネイビーのスーツ。隙なく締められたネクタイと、冷徹に研ぎ澄まされた端正な|美貌《びぼう》。

 理玖の切れ長の目が凜を認めて、一瞬だけ大きく揺れた。

 だが、次の瞬間には何事もなかったかのように、感情の読めない表情に戻る。

 凜は左手で髪の跳ねを引っ張り、|俯《うつむ》きながら、VIPルームへと案内される山下たちの背後に続く。

「本日、玲奈は休みをいただいておりまして――」

 歩きながら、店長が山下に向かって話し続けている。

 だがその言葉は、凜自身の鼓動の高鳴りに|掻《か》き消されていく。

――なんで……なんで、ここにおるん……?

 |溢《あふ》れそうになる京都弁を、奥歯を噛んで飲み込む。

「――凜!」

 急に名前を呼ばれ、凜の肩が小さく跳ねる。

「すいませんね。今日が初めてなもので」

 店長に背中を押され、凜は慌てて頭を下げた。

「は、初めまして。玲奈の代理の凜といいます。今日はよろしくお願いします」

 緊張と混乱から、声が上擦る。

「ははは。凜ちゃんね、そんなに堅くならなくていいよ」

「今夜は私とこの子で、おもてなしさせていただきますね」

 先輩キャストである|彩《あや》が、手慣れた動作で山下の左手側に滑り込む。

「お、彩ちゃんか。今日も|綺麗《きれい》だね」

 山下は上機嫌で応じ、凜の方を見て右手でソファを軽く叩いた。

「ほら、凜ちゃん。早く座って」

 彩の声に|促《うなが》され、そっと腰を下ろす。左手に山下、そして右手に理玖。

 すぐ傍から、高価な香水の香りが漂う。それは、記憶に残る彼の匂いよりもずっと鋭利で、冷ややかだった。

「……なんでこんなとこにいんだよ」

 理玖がほんの小さくぼやき、指先がグラスの縁で一瞬止まる。――だが次の瞬間、その手は何事もなかったかのように動き出す。

 凜の|喉《のど》の奥で、息が詰まった。|咄嗟《とっさ》に理玖の顔を見たが、彼は視線を|逸《そ》らした。

「……あれ? もしかして、お二人はお知り合いですか?」

 一瞬、二人の間に流れた空気の異変に気付いた彩が|訊《たず》ねる。

 凜はヒュッと喉の奥で息を|呑《の》む。答えようとしても、極度の緊張で唇がうまく動かない。

――元彼氏だなんて、言えるはずもない。そんな資格、私にはない……。

 どう答えればいいのか分からなかった。

 凜が言葉を見つけ出すよりも先に――。

「……知らない。赤の他人だ」

 口を開いたのは、理玖だった。

 冷たく、淡々と。まるで初対面の他人に――いや、|路傍《ろぼう》の石にすら向けないような、絶対零度の声で。

「……金で人を選ぶ女なんてな」

 小声で付け足された言葉に、凜の呼吸が止まった。

 理玖が手にしたグラスの氷が、凜には聞こえないほど小さく、悲鳴のように鳴った。

Expand
Next Chapter
Download

Latest chapter

More Chapters

To Readers

Welcome to GoodNovel world of fiction. If you like this novel, or you are an idealist hoping to explore a perfect world, and also want to become an original novel author online to increase income, you can join our family to read or create various types of books, such as romance novel, epic reading, werewolf novel, fantasy novel, history novel and so on. If you are a reader, high quality novels can be selected here. If you are an author, you can obtain more inspiration from others to create more brilliant works, what's more, your works on our platform will catch more attention and win more admiration from readers.

No Comments
11 Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status