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第2話

Penulis: 花見無双
結婚後、沙緒理は「仏道の修行には心を静めることが肝要」と言い、俺が彼女の部屋で夜を明かすことを一切許さなかった。

たとえ毎月16日の夫婦の営みが終わった後でも、俺はシーツを片付けた後、寂しくその場を去るしかなかった。

しかし今、俺は突然悟った。沙緒理のすべての厳しい規則や戒律は、俺一人に対する「鉄の壁」だったのだと。

その瞬間、俺は声も出せないほどの心痛に襲われ、手足から痺れが始まり、やがて全身の感覚がなくなり、心臓だけが一万本の針に一度に刺されるような、鋭く激しい痛みに苛まれた。

しかし沙緒理は、相変わらず説明する気もなく、むしろ表情を冷たく硬くした。

「誰がノックもなしで入ってきていいと言ったの?

駄目だと言っておいたはずよ。出て行きなさい!」

俺は自分自身を指さし、それから昭雄を見た。突然、全てが滑稽に思えた。

自分の妻が平気で見知らぬ男に泊まりを許し、バスタオル一枚で髪を乾かしてもらっている。

彼らがあれほどまでに親しげにしているというのに、夫である俺は入室するのにノックが必要だというのか?

沙緒理、お前は俺をまるで空気のように扱うだけじゃない。この結婚そのものも心底、どうでもいいと思ってるんだな。

彼女に完全に失望した。

「沙緒理、別れよう」

結婚して5年、沙緒理がどれほど冷たく理不尽な要求をしてきても、俺はすべて聞き入れてきた。

長年かけて、彼女に優しく接するのが習慣になっていた。

彼女に冷淡な態度を取るのは、これで初めてだ。

「離婚?ただ、こんな程度のことのため?」

沙緒理は呆然とし、動揺を隠せず、無意識に首を振った。「離婚には同意しない」

彼女の断固たる拒否は意外だ。

彼女と昭雄の関係は明白で、ただ俺が自ら身を引くのを待っているだけだと思っていた。

しかし彼女がきっぱりと拒否したのは、もしかしてまだ未練があるからか?

5年間、真心を込めて尽くしてきたことが、俺の中で無意識に沙緒理を擁護する理由を作った。

しかし、彼女の次の言葉は、残酷にも俺を奈落の底に突き落とした。

「今、戒律を厳守する期間で、縁を断つことは破戒にあたるよ。

離婚するにしても、この戒律の期間が終わってからにしなさい」

沙緒理の顔は冷気を帯び、その口調に議論の余地はない。

やはり俺の勝手の思い込みだ。

俺は自嘲し、吐き気を催すほど心が痛んだ。

俺はついに悟った。彼女の目には、俺は夫ですらない。いや、一人の人間としてさえ、まともに認められてはいないのだ。

5年の結婚生活で、俺には離婚を切り出す立場もない。

生きている人間である俺は、彼女の戒律の前では、いつも後回しなのだ。

「沙緒理、すまない。僕と真冬のせいで水草さんと別れたりしないでくれ。君たちの結婚を壊したくはないんだ。こうなるなら、やっぱり僕が出て行くよ。

真冬、服を着よう。ここは僕たちの家じゃないんだ」

昭雄は寂しげにため息をつき、真冬を抱き上げて去ろうとした。

悲恋ドラマかよ。俺は目を閉じ、この光景を見たくはない。

昭雄の言う通りだ。

ここは彼の家ではなく、俺が血の滲むような思いで築き上げ、5年間ずっと守り続けてきた家だ。

ハトがカササギの巣を奪って住み着くような真似をしやがって、いったい何の権利が?

しかし、予想に反して、沙緒理は彼を引き止めたのだ。

「真冬の荷物はもうすべて片付いているんだから、わざわざ引っ越す必要なんてないでしょ?

ここにいて。これは私と彼との問題だから、昭雄と真冬のせいじゃない」

沙緒理は俺を見た。その瞳は底知れず冷たい。

「出て行くべきなのは彼じゃない、あなたよ。

真冬がまだこんなに小さいのに、男としてもう少し寛大になれたら?どうして彼ら親子を追い詰めようとするの?」

一言一言が鋭い刃と化し、俺の体を内側から切り裂き、心臓をずたずたに引き裂くかのようだ。

俺が彼らを追い詰めているというのか?

だが、どれほど寛大になれというのだ?二人の親密な様子を見て拍手喝采しろと?

問い詰めたいが、沙緒理の冷たい表情を見て、すべてが無意味に思えた。

俺が出て行こう。

結婚がここまで来てしまったら、これ以上ばかげたことを続けるより、幕を下ろした方がいい。

俺は一言も発さずにその場を去った。

黙って自分の部屋に戻り、荷物をまとめて、この家を出る準備をした。

笑える話だが、結婚してこの5年間、俺は自分のために何かを買ったことはほとんどなかった。すべての思いは沙緒理とこの家にかけていた。

結局のところ、本当に俺のものと言える荷物は小さなスーツケース一つに収まり、1時間もかからずに片付いてしまった。

部屋にはもう俺の痕跡はなく、沙緒理との5年にわたる結婚生活もここで終わりを告げた。

立ち去る前に、別れの手紙を残した。

来週月曜に区役所で会うことを通知しただけだ。

しかし、ドアを開けると、沙緒理が入口に立っている。

俺がスーツケースを手にしているのを見て、彼女はすぐに眉をひそめた。

「どこへ行くの?」

「この家は譲るからさ……俺たち、もう終わりだ」

俺は彼女の横を通り過ぎようとしたが、彼女に遮られ、中へ押し戻された。

「宏人、真冬がまだ家にいるのよ。皆の顔をつぶすような騒動を起こす必要がある?

『出て行け』と言ったのは、自分の部屋に戻れという意味で、この家を出て行けということじゃない!」

俺の部屋はきれいなので、沙緒理はすぐにその手紙に目を止めた。

中身を見ると、彼女はためらうことなく手紙を破り捨て、あまりの怒りに震えながら俺を睨んだ。「宏人、もう一度言うから、離婚には同意しない。

二度とそんな考えを起こすなら、どうなるか分かっているわね?」

「どうなるんだ?」

俺は心底寒くなり、思わず皮肉たっぷりに聞き返した。「お前の戒律が破られるってか?

だが、室矢昭雄の腕の中に寄り添い、バスタオル一枚で髪を乾かしてもらい、彼の息子の母親を演じていた時、戒律のことを考えたのか?

仏のことを考えたのか?」

俺の言葉が終わらないうちに、沙緒理は青ざめた顔で俺の頬を平手打ちした。

「黙りなさい!よくも仏を妄りに語る気になったわね!」

俺は一瞬呆然とし、沙緒理が手を上げるとは思っていなかった。

結婚して5年、たとえ彼女が無情でも、私たち夫婦はそれなりに礼儀正しく接し、ここまでになったことはなかった。

今の平手打ちが、彼女と俺の最後の情けを打ち消した。

「沙緒理、俺がお前の戒律に耐えられなくなったと思ってくれ。円満に別れよう。夫婦の縁もあったのだから、これ以上みっともない争いを続ける必要はないだろう」

俺の決意が、突然沙緒理に何かを悟らせたようで、彼女の冷たい表情が少し和らいだ。

「今手を上げたことは、私が悪かった……でも、私が最も大切にしていることをあなたは知っているはずなのに、どうしてわざわざその点を突いてくるの?」

沙緒理の逆ギレに、俺は鼻で笑った。

「どう思おうと勝手だ」

この言葉を、そっくりそのまま彼女に返した。

沙緒理は一瞬驚き、目には再び怒りの色が浮かんだ。

「宏人、私たちの間にもう少し信頼があってもいいんじゃない?

『仏道を歩むものは嘘をつかない』って聞いたことあるでしょ?私は結婚を裏切らないと言ったら絶対に裏切らないよ。

なぜそうやって食い下がるの?」

俺は無表情で答えた。「損失がこれ以上大きくならないうちに手を打つだけだ」

沙緒理は怒りを抑えきれず、スーツケースを奪い取った。

「どこへ行こうとあなたの自由よ。でも離婚には同意しない」

彼女はそう言うと去っていった。

ふと我に返ると、自分自身も深い悲しみに打ちひしがれ、全身が震え、心臓が目に見えない大きな手でギュッと握りつぶされるように息苦しいことに気づいた。

沙緒理は、俺のスーツケースを取れば出て行けなくなるとでも思ったのだろうか?

彼女は間違っている。

たかが衣類と日用品に過ぎない。それらを諦めて新しいものを揃えるくらいなら、この場に居続けるよりずっとましだ。

俺は出て行った。

外に出たばかりで、消防隊からの電話がかかってきた。
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