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第9話

Penulis: 花見無双
30分後、沙緒理は広喜からのメッセージを受け取った。

【社長、確認が取れました。この数日、市内での火災発生は確認されておりませんが、西部の山間部のほうで先日大規模な山火事がありました。

火勢が非常に深刻で、近隣の町村の消防隊はほぼ総力を挙げて消火にあたったとのことです。水草様の所属する第二消防隊も数日前に支援に向かっています】

ここまで読んだ時、沙緒理の顔色が突然一変し、思わず立ち上がり、微かに震え始めた。

【それで今は鎮火したの?宏人の消防隊に死傷者は?】

沙緒理は震える指でこの言葉を打ち込み、送信した。

この瞬間、彼女自身も自分がどんな心境なのかわからない。

息が詰まりそうな感覚が漂っている。

【それは、現場の状況はわかりかねます。

ただしこの数日で、山火事は制御下に置かれた模様です。

社長、水草様は福運が強い方ですから、きっとご無事ですよ】

広喜の返信を見て、沙緒理は少し無力感を覚え、目を閉じた。

沙緒理だけが知っている。宏人は数日前から連絡が途絶え、今もスマホの電源が入っていない状態だということ。

彼女がさらに恐れているのは、宏人の手紙の最後の言葉だ。彼は最近気が沈んでいるが、まさか本当に山火事の中で命を顧みないような行動に出たりは?

【わかった。山火事の具体的な場所を調べて。今から向かうから】

再び目を開けると、沙緒理はすでに決意を固め、指示を出した。

彼女と宏人の間にどんなわだかまりがあろうと、それはあくまで夫婦の間の問題だ。

宏人はまだ彼女の夫なのだ。

たとえ死んだとしても、その遺体を、この目で必ず見届ける!

【はい、社長。

ただ、室矢様から今夜の洋食レストランのご予約についてお尋ねがありまして。社長がお忙しいのか、メッセージの返信がないとのことなので、私を通じてご連絡させていただきましたが……】

このメッセージに対して、沙緒理は眉をひそめ、迷わずに返信した。

【キャンセルするよう伝えて。今夜は用事があるから。

彼とはまた今度、約束をすればいいから】

【かしこまりました】

会話を終えた後、沙緒理は内心の不安に耐えきれず、部屋にじっとしていられなくなり、車を走らせて西部の山間部の方向へ向かった。

5分後、広喜が具体的な住所を送信し、ついでに気をつけるよう一言付け加えてきた。

沙緒理は返信せず、住所に従ってナビを起動し、アクセルを踏んで急いだ。

「宏人、どうか無事でいて!

たとえ離婚するにしても、このような形で終わらせるわけにはいかない!」

沙緒理はアクセルを限界まで踏み込み、猛スピードで走った。

ナビでは1時間の道のりを、沙緒理はわずか40分で到着した。

ただ、山火事の現場に近づけば近づくほど、彼女の心はますます不安になっていった。

遠くからでも、濃厚な焦げ臭さが鼻をついた。

近づくと、周囲にはすでに焼け跡の痕が見えた。

通る道筋は、草木から地面に至るまで、すべてが漆黒に染まっていた。

沙緒理はその光景を見て、まるで宏人の結末を目の当たりにするかのようだ……

彼女の心は不安で張り詰めている。

最後の一押しでアクセルを踏み込み、彼女は現場に到着した。

山火事の中心地ではないが、これより先には道がない。

沙緒理は待ちきれずに車を降り、目に入るのは何台もの消防車と、少し離れたところに設置された消防用テントだ。

テント基地の中には、消防隊の服を着た人影が数多くいる。

「ここだ!」

沙緒理は目を輝かせ、すぐに向かっていった。

しかし、まだ数歩も進まないうちに、テント基地の中から、かすかに泣き声が聞こえてきた。

この瞬間、沙緒理の心臓は激しく震え、思わず足を早めた。

「宏人、探しに来た!どうか無事でいて!」

数歩で基地の前にたどり着くと、沙緒理は受け入れがたい光景を目にした。

テント基地の中には、行き交う消防士のほか、かなりの数の近隣住民と思われる服装の人々がいる。

彼らは、それぞれ白い布で覆われた人を囲んで泣いている。

沙緒理は、いくつかの白い布の下から防火服を着た腕がのぞいているのを見た。

あまりにもの悲惨な光景に、彼女は衝撃で声も出せなくなった。

よろめいて、今にも倒れそうになっている。

沙緒理は想像もしたくない。もしこれらの白い布の下に、宏人がいたらどうしようかと?

言いたいことは山ほど胸に詰まっているが、目の前の悲劇を見つめ、彼女は一言も口にすることができない。

受け入れられない!

「宏人……ここにいるの?」

沙緒理は一瞬で目を赤くし、仏道を歩む者が不浄を忌むことなど気にも留めず、前へ進み出て、遺族がいない白い布の下を一つ一つ確認していった。

「この人じゃない。

違う……」

わずか一分の間に、沙緒理は数人の身元を確認したが、その中に宏人はいない。

それでも気を緩めることはできない……ここに横たわっている人が、あまりにも多すぎるからだ!

この時、沙緒理はまだ知らない。基地の片隅で、防火服を着た宏人が負傷者を背負って戻ってきたところだということを。

……

彼女の姿を見て、俺がその場に立ち尽くした。

沙緒理がなんで来たのか?!

信じられない思いで目をこすり、目の前の美女が確かに沙緒理であることを確認した。

名目上の妻でありながら、事実上はすでに元妻同然の沙緒理だ。

「俺を探しに来たのか?」

静かに片隅に立ち、沙緒理が次から次へと白い布をめくって死者の身元を確認し、焦っている様子を見つめ、信じられない思いで胸いっぱいになった。

沙緒理が俺のためにこれほど心配する姿を、見たことがなかった。

ふと、彼女がこれまで俺に示してきた冷たさや無関心は、どこに行ったのだろうと思った。

まるでまだ俺を愛しているかのように。

まさか、まだ俺のことを愛しているのか!?

ふと、前に出て彼女を呼び止めたいという思いが込み上げてきた。しかし、踏み出したその一歩は、中途で固まった。

その瞬間、頭の中に、沙緒理が昭雄と公然と「夫婦です」と宣言し、甘いキスを交わしたあの光景が、まざまざと浮かび上がってきたからだ。

突然の胸の痛みが、俺の足を止めさせた。

ありえない。

直田社長はまだ俺を愛しているなんてことがあるはずがない。

俺が残した手紙を見て、俺の一方的な決断に腹を立て、わざわざ仕返しに来たかもしれない。

あの手紙を思い出すと、俺の心は一瞬で平静を取り戻した。

再び焦っている沙緒理を見ても、もう胸に一片の波風も立たない。

好きにさせておけ。

別れると決めた以上、もう振り返らない。

沙緒理が俺を愛していようが憎んでいようが、仕返しに来ていようが執着していようが、もう俺には関係ない。

彼女を命よりも大切にし、細やかに尽くしてきた夫・水草宏人は、もうこの山火事の中で死んだのだ。

そして生き残った俺は、新たな水草宏人だ。

これからの人生には、直田沙緒理はいない。

決意を固めた後、俺は黙ってその場を離れ、沙緒理の視界から外れる位置に移動し、後片付けの作業を続けた。

彼女のことは、同じ消防隊の誰かに気づかれる心配もない。

何と言っても、無欲無心の直田社長が、俺の妻として消防隊のイベントに顔を出したことは一度もないのだから。

まさか彼女が俺の妻だとは、誰も思わないだろう。

俺はその後、沙緒理があちこちを走り回って他人の白い布をめくるせいで、駆けつけた遺族にさんざん罵倒され、放心状態で去っていく様子をただ見送った。

彼女の姿が完全に視界から消えるまで……それ以上彼女に目をやろうともしない。

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