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離婚後、恋の始まり のすべてのチャプター: チャプター 1241 - チャプター 1243

1243 チャプター

第1241話

幸美は彼の顔を見つめ、静かに問いかける。「どういうこと……?」裕之は落ち着いた声で答える。「もう兄さんには話を通してある。優子を賢司さんに近づけるんだ。彼女が成功さえすれば、桜井家は今よりもっと良くなるはずだ」「……それで、本当にうまくいくのかしら」幸美はまだどこか半信半疑の様子だった。「うまくいかなくても、いかせるんだよ」裕之はきっぱりと言い切った。「舞子に期待するのか?まだ分からないのか?あの子は、わざと賢司さんに桜井家を助けさせないよう仕向けているんだ」幸美は黙り込み、ゆっくりと息を吐いた。今になってようやく、舞子がなぜ急に聞き分けが良くなったのか、その理由がはっきりと見えてきた。聞き分けが良くなったのではない。ずっと反抗し続けていたのだ。舞子は、桜井家が賢司さんに強く出られないことを知っている。だからこそ、彼の隣に居続けることで桜井家を巧みに牽制し、もはや家も以前のように彼女を扱えなくなったのだ。この娘のことは、本当に、ますます分からなくなっていく。桜井家の本家。仁美が優子の部屋を訪れた。「優子、最近、仕事は順調?」「ええ、順調よ」優子は頷いた。ただ、賢司さんに会えないだけ。仁美は娘の手を握り、柔らかく笑った。「やっぱりうちの娘が一番優秀ね。でも、もっと頑張らないと。賢司さんの前でしっかり自分をアピールして、彼の目に留まるようにするのよ」「えっ……」優子の瞳がきらりと光った。「お母さん、賢司社長は今、舞子の彼氏よ?将来二人が結婚すれば、私たちは家族になるんだから、そんなに頑張らなくてもいいんじゃない?」しかし、仁美は即座に首を振った。「賢司さんが将来誰と結婚するかなんて、まだ誰にも分からないわ。絶対に早とちりしちゃだめよ。裕之さんとも話したけど、舞子は賢司さんには全く相応しくないって」「えっ……それ、裕之さんが言ったの?」優子の瞳がさらに輝きを増す。「もちろんよ」仁美は確信に満ちた口調で続けた。「舞子が相応しくないなら、もっと相応しい人に代えればいいだけの話。だから優子、あなたが頑張るのよ。私の言ってる意味、分かった?」「うん!」優子は力強く頷いた。「絶対にがっかりさせないから!」桜井家は、支援の矛先を舞子から自分へと切り替えたのだ。その事実を思うと、胸の奥が興奮
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第1242話

「もう気にしなくていいよ。私、慣れてるから」由佳はまるで何でもないことのように口にした。「まだ青春真っ盛りで若いのに、そんなに早く結婚してどうするのよ?」「それ、お母さんに面と向かって言ってみたら?」辰一が冷ややかに返す。「へへ、無理」「……」赤信号が青に変わり、車は滑るように発進した。二人はそのまま評判の高いラーメン店へと直行する。暖簾をくぐると、由佳の気持ちはようやく少し落ち着きを取り戻した。というのも、道中で景司の車を目にしたからだ。なんて偶然。まさか同じ道を走っているなんて。錦山は広い街なのに、こんな確率で出会うなんてあり得ないはず。だが幸いなことに、彼は由佳に気づかなかった。彼女は悟られまいと、必死にメイクを直し、顔を拭い、気配を消すように努めていた。スマホに何の通知も入っていないのだから、きっと気づかれてはいないはずだ。よかった。由佳は胸を撫で下ろした。「なんでそんな泥棒みたいにコソコソしてんだ?」辰一が不審そうに尋ねる。「さっき……告白に失敗した相手を見ちゃったの」由佳はため息まじりに答えた。「告白したのか?」辰一の手が止まり、水を注ぐ動作のまま彼女を見つめた。「そうだよ。恋なんて突然降ってくるもんでしょ?止めようがないから追いかけて告白したの。で、結果は――失敗」由佳は肩をすくめ、両手を広げて見せる。「だからちょっと冷静にならなきゃって」辰一は口の端を引きつらせながら言った。「それ、本当に告白に失敗したのか?それともナンパがバレただけじゃないのか?」「何言ってんの!私がいつナンパなんてしたっていうのよ?」「お前がイケメンに声かけなかったことなんて、今まであったか?」由佳は歯を食いしばり、彼を睨みつける。「もう一回言ったら、その口、引き裂いてやるからね」何よ、それじゃまるで私がプレイガールみたいじゃない。全然違うのに。だが辰一は彼女の脅しをまるで意に介さず、ただおかしそうに笑うばかりだった。そこへ店員がやって来て、二人は注文を始める。由佳は好物のラーメンを選んだ。ちょうどその時、彼女のスマホが一度だけ震えた。画面を開くと、ライブ配信プラットフォームから「配信を続けて」と促すメッセージ。無理。とてもじゃないけど、今はできない。景
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第1243話

天馬は由佳を見て言った。「お酌ちゃん、相席してもいいかな」由佳は言葉を失い、じっと耐えたものの、ついに堪えきれず口を開いた。「山崎さん、私の名前は石井由佳です」それを聞いた天馬は、少し眉を上げて言った。「失礼、石井さん」うん、これでようやく胸のつかえが下りた。由佳は首を横に振った。「相席は、あまり都合が良くないんです」思いがけずあっさりと断られ、天馬は一瞬ぽかんとしたが、すぐに頷いた。「分かった。じゃあ、ゆっくり楽しんで」彼は踵を返し、景司の前に戻って腰を下ろす。にやにやと相手を見つめながら、低く問いかけた。「正直に言えよ。なんで急にここで飯なんだ」景司は無造作にメニューを繰りながら答える。「いちいち理由なんてないだろ。食うのか食わないのか、どっちだ」しかし天馬は執拗に食い下がった。「お前、何か企んでるだろ」その言葉に、景司は即座に冷たい視線を投げつける。天馬はまるで意に介さず、スマホを取り出すと、別の女の子とのチャットを始めてしまった。その頃、辰一は由佳をじっと見つめ、怪訝そうに口を開いた。「あいつらが入ってきてから、お前の様子がおかしいぞ。どうしたんだ、知り合いか?」「うん、知り合い」由佳は小さく頷いた。辰一はさらに問いただす。「じゃあ、なんであいつはお前のことを『お酌ちゃん』なんて呼んだんだ。バイトでもしてるのか?言っとくけどな、金に困ってるなら俺に言えよ。貸してやるからさ。利子はちょっと高いけど、変な気だけは起こすなよ」由佳は奥歯を噛みしめ、吐き捨てるように言った。「ちょっと黙ってくれる?」だが辰一はお構いなしに続ける。「言えよ、金に困ってるんだろ」由佳は皮肉げに笑った。「ええ、お金に困ってるわよ。じゃあ貸してくれる?」「ああ、いいぜ。いくら借りたいんだ」「十億」辰一の笑みが凍りつき、ひきつったまま維持できなくなる。由佳はじっと彼を見据えた。「持ってるの?」辰一はしばし言葉を失った後、ようやく問い返した。「お前、何をやらかしたんだ。十億も必要なんて」「ないなら黙って。ごちゃごちゃ言わないで」斜め向かいから、冷ややかな視線が時折突き刺さる。そのたびに由佳の神経は極限まで張りつめた。なぜ景司はここに来たのだろ
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