自分の状況をここまで紗枝が気にかけてくれるのを見て、美枝子の胸には罪悪感がさらに募り、言葉がうまく出なくなった。「もう大丈夫です……あの子たちが、また私たちに面倒をかけてくることは、もうないと思います」それを聞いた紗枝は、少し首を傾げて不思議そうに問いかけた。「どうして、そんなに確信があるんですか?」言葉に詰まった美枝子は、どう説明すればよいか迷い、ただ言葉を濁すしかなかった。「なんとなく分かるんです……紗枝さん、本当にありがとうございます。日を改めて、必ずお礼に伺います」美枝子の胸中では、これは感謝だけでなく、謝罪でもあることを理解していた。紗枝こそが青葉の実の娘である可能性が高いのに、自分は孫のために、自分勝手にも母娘の再会を遅らせているのだから。美枝子に何かを隠していると察した紗枝は、相手が話したがらないのを読み取り、それ以上は追及せず、柔らかく言った。「お礼は結構です。ご自身の生活を大事になさってください」そう告げると、電話を静かに切った。美枝子はスマホを握りしめ、心の中で固く決意した。どうあっても、これ以上紗枝に申し訳のないことはできない。冬馬の病気が治ったら、必ず本当のことを伝えよう。一方、紗枝はすぐに仕事へ意識を戻した。そもそも美枝子を助けると約束した時から、感謝など期待していなかった。助けることと利用されることの違いは、彼女の中では明確に区別されていた。「紗枝さん、ここのいくつかの入金に問題があるようです」ドアをノックして入ってきた社員の焦った声に、紗枝は我に返った。入金伝票に目を通すと、契約金額と大幅に異なることに気づき、眉をひそめる。「どうして、こんなことに……」「分かりません。もうすぐ月末ですが、この入金の出どころが判明しなければ、私たちの部署は大変なことになります」社員は重いため息を漏らした。入金額が契約と一致しない――明らかに誰かが裏で手を回しているのだ。営業五課の現状の業績なら本来は一位のはずだが、会計に問題が出れば、その業績は水増しだと疑われることになる。紗枝は考えるまでもなく、犯人の見当をつけた。部内には協力者の内通者がいるに違いない。彼女は最近育てていた腹心数人に、周囲の動向を注意深く監視し、何かあれば直ちに報告するよう指示した。その頃、夢美
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