若子は魂が抜けたような状態で、西也に連れられて家に戻った。 帰宅するなり、若子はすぐに電話を手に取り、修に電話をかけようとした。 彼の番号は、数字の一つ一つまで、彼女の頭に深く刻まれている。 西也は、若子が修の番号を手慣れた様子で押すのを見て、目に一瞬の不快感を浮かべた。 しかし、彼は若子が修に連絡できないことを知っていた。 案の定、若子は電話を耳に当てたまま、長い間待っても繋がらない。もう一度かけ直しても、やはり通じない。 修の携帯は、ずっと繋がらない状態だった。 「若子」西也は前に進み出て、「お前が彼のことを心配しているのはわかる。でも、今は自分の体を大事にしなきゃ。お前は妊娠しているんだ。医者を呼んで診てもらおう。お前と子供のことが一番大事なんだ、いいか?」 「子供......」若子は下を向き、自分のお腹をそっと撫でながら、涙を止められずにこぼした。「子供......これは私と修の子供なの。彼に妊娠したことを伝えなきゃ。伝えたい......」 西也は彼女の背後に立ち、その目には冷たい光が宿っていた。 彼はそっと若子の手を握り、「若子......」と声をかけた。 突然、若子は自分の手を引き抜き、お腹を抱えるようにして、彼の触れ合いを避けるかのように身を引いた。 西也は一瞬驚き、手の中の空虚さに、心も同じように空っぽになった。 若子は魂が抜けたように、頭の中は修のことでいっぱいで、耳元にはあの仮面の男の声が響き、選択を迫るカウントダウンが聞こえるかのようだった。 激しい痛みが胸に押し寄せ、彼女は心臓を押さえ、もう立っていられず、そのまま後ろに倒れ込んだ。 「若子!」西也は後ろから彼女を受け止め、しっかりと抱きしめた。「若子、どうしたんだ?」 「修......修......」若子は彼の名前を呼び続け、次第に視界が暗くなり、意識を失った。 ...... 一時間後。 リビングでは、成之がソファに座り、すでに何本もの煙草を吸っていた。 彼はずっと焦燥感に駆られ、待ち続けていた。 やがて足音が聞こえ、振り向くと、西也がこちらに歩いてくるのが見えた。 「おじさん」西也は彼の近くのソファに腰を下ろした。 「若子の具合は?」成之はその目に深い心配を隠しつつ、わずかながらも関心を示した。
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