目の前の人物が明らかに固まった後、冷たい声が響いた。「診察の邪魔にならないように、お父さんは外に出ていてください。」「邪魔しませんから!早く娘を診てください!」凌央は璃音を見知らぬ人に預けることができなかった。「もし残るなら、私は帰りますよ」女性の声はますます冷たくなった。凌央は眉をひそめ、険しい顔をした。「どうやったら、会って間もないあなたを医者だと確信できるんですか?」こんなに若いのに、名医だなんておかしいだろう。「あなたの友達に聞けばわかるでしょう?もし出て行かないなら、私は帰ります!」女性の言葉には強い決意が感じられた。その時、携帯電話が鳴った。画面を見ると、発信者は辰巳だった。「凌央、名医に会ったか?白髭のおじいさんだろ?」辰巳の声からは、喜びが滲んでいた。凌央は女性の背中を見ながら、その声を耳にしていた。確信していた。これは女性だ。そして、年齢も若い。「凌央、どうしたんだ?何も聞こえないぞ」辰巳が不思議そうに尋ねた。まさか名医が女性だなんて思っていなかったのだろう。「どうやって彼女に伝えたんだ?」凌央は低い声で問いかけた。「娘さんの病室番号を彼女に送っただけだよ。何を伝えればよかったんだ?凌央、どういう意味だ?」辰巳は焦って真剣に言った。「名医は見た目はあれかもしれないけど、少なくともお前の娘を助けることができるんだ。文句を言う資格があるのか?」凌央は顔をしかめ、電話を切った。辰巳に指示されることはない。その時、璃音が病床から声をかけた。「パパ、外に出た方がいいんじゃない?この美しいお姉さんがすぐに私を診てくれるよ」凌央は唇をかみしめ、振り返らずに病室を出た。やっと見つけた名医だから、彼女の言う通りにしなければならない。もし彼が注意深く見ていれば、女性が拳を握りしめているのに気づいたかもしれない。乃亜は、璃音が凌央の娘だと知って、驚きとともに予想外の事実に驚愕していた。病室を出ると、凌央は壁に背をつけて立ち、女性の背中と声を思い返していた。もしかしたら気のせいかもしれないが、その女性にはどこか見覚えがあるような感じがした。一体誰だろう?病室のドアが閉まると、璃音が乃亜に小声で言った。「お姉さん、パパのことを怒らないであげてね。パパは冷たい性格なの、ごめんね!」
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