All Chapters of 夏目さん、死なないで！ 社長のアプローチが始まった！: Chapter 831 - Chapter 840

その言葉を聞くと、皆の視線が再び凛に注がれた。雪は、腕の中で静かにすすり泣く彩佳を慰めながら、凛に称賛の眼差しを向けた。あんなに華奢な女の子なのに、どうしてあんなに強いオーラを放っているんだろう？霧島家の人々に一人で立ち向かい、これほどまでに落ち着いていられるなんて。このような状況で冷静さを保てるのは、聖天でしか見たことがなかった。凛は女性でありながら、それ以上のものを持っている。その時、別荘の階下から物音が聞こえてきた。凛は歩き出し、「行きましょう。誠也が来ました」と言った。凛が階段に向かうのを見ると、修平がすぐにその後を追った。恒夫は拳を握りしめ、顔が曇った。あの男は、面倒

聖天は凛と視線を合わせ、「これは複数犯だってことを忘れたのか？」と言った。凛はハッとした。「そうだった！誠也一人じゃない！さっき彼も言ってた、渚はプレゼントとして送られたって！」贈り物を仕掛けた奴が一番許せない。「ああ」聖天は屋敷の方へ振り返り、意味深な目で言った。「黒幕はまだ何か仕掛けてくるだろう」凛は彼の視線の先を見ると、背筋が凍るような気がした。直感的に、黒幕の目的は誠也に取り入ることなんかじゃないと確信した......「次に勝手なことをしたら承知しないぞ」聖天の低い声が耳に届き、凛の思考は現実に引き戻された。凛は少し後ろめたく思い、聖天に苦笑いを向けた。「ちゃんと調べて

雪はいてもたってもいられず、「渚がこのニュースを見たら、どうなっちゃうの？かわいそうに、一体どうすればいいの......」と呟いた。「一体どういうことなの？誰かを怒らせたっていうの？どうしてここまで彼女を苦しめるのよ！まるで生きる道を与えないつもりみたいじゃない！」雪はそう言うと、こらえきれずに涙を拭った。「明彦に頼んで噂の出所を潰させたんだが......」聖天は言葉を切り、眉根を寄せた。「噂はウイルスのように拡散していて、完全に消す方法は無い」凛は深刻な面持ちで、「噂を流した人物は、誠也に贈り物をしてきた人物と同じでしょね。一体何を企んでいるのかしら？」と独り言ちた。「何を企んでい

「自分のことを渚の実の叔父だって言ってるくせに、彼女を地獄に突き落とそうとしてるんじゃない！そうだ」雪は何かを思い出したように言って、冷笑した。「そういえば、2年前に夏目家と親しくしてたわよね。まさか、夏目家から頼まれて、誠也の味方をしてるんじゃないでしょね？恒夫、人脈作りたいからって、弟の娘を利用するなんて、人でなしもいいところよ」その言葉を聞いて、修平の顔色は変わり、すぐに恒夫の手を振り払った。修平は何も言わず、ただ恒夫をじっと見つめ、その瞳は失望と怒りに満ちていた。目の前にいるのは、紛れもなく兄の恒夫だった。なのに、まるで別人のように思えた。それを見て、恒夫は慌てて言った。「

「翠も来てくれたのね！」彩佳は喜びのあまり、涙をこぼした。「渚もきっと、この試練を乗り越えられるわ！」修平は黙ったまま、タバコを深く吸い込み、むせて咳き込んだ。「ゴホッ......」彩佳は彼の背中をさすりながら言った。「もうタバコはやめて。事態は解決に向かっているんでしょ？あなたが出しゃばる必要もないし、何をそんなに悩んでいるの？」「お前には分からん」修平は嗄れた声でそう言うと、彩佳の手を払いのけた。話す気はないようだった。しかし、20年以上連れ添った妻である彩佳は、彼の悩みの種を一目で見抜いた。「さっき恒夫さんが言ったことが気になってるの？」「......」修平は何も言わず、