LOGIN夏目凛(なつめ りん)は病気で、余命いくばくもなかった。 その日から、凛は悟った――生死の前では、すべてが幻のようなもので、今までこだわってきたことが全てバカバカしく思えてきた。 自分勝手な、タカるだけの家族なんて、いらない! プロポーズしたくせに、すぐに他の女とイチャつく婚約者なんて、いらない! 全てを失った凛は、やっと自由になれた...... それからしばらくして、凛の噂で持ちきりになった。 夏目さんが金持ちを捕まえたって。 夏目さんが若い男と旅行してるって。 夏目さん、超金持ちになって、お金使いまくってるって。 夏目さんは...... 後で、凛に捨てられた人たちは真実を知って、泣きながら土下座して許しを乞うことになるんだ。 金づる扱いをしてくる両親はこう言った。「お前はいつまでも私たちの可愛い娘だ。一緒に家に帰ろう」 クズの元彼は言った。「俺が愛しているのは凛だけだ。もう一度だけチャンスをくれ」と言った。 しかし、もう遅い! 男は凛の前に立ちはだかり、険しい顔で言った。「これ以上凛に近づいたら、足を折る」 そして、あの高位にある男は、凛の前にひざまずいて、こう言った。「生きていようが、死んでいようが、お前は俺のものだ」 霧島聖天(きりしま せいてん)は、自分が善人ではないことを自覚している。 名門霧島家の当主である聖天は、冷酷で、誰よりも早く決断し、行動し、恐れられていた。 誰が想像できただろうか。あんなに近寄りがたい聖天が、一人の女の子を8年間も想い続けていたなんて。 彼の数少ない優しさは、全部彼女に捧げられていた。
View Moreそう言うと、雪は志穂の手を取り、「さあ、他の来賓客をあなたに紹介するわ。あんな人と話していても時間の無駄だから」と、慶吾の言葉も聞かずにその場を立ち去った。「雪!」慶吾は杖をついて慌てて追いかけたが、ハイヒールを履いた雪はあっという間に人混みに消えてしまった。肩を落とす慶吾の後ろ姿を見つめながら、凛はためらいつつ聖天に言った。「本当に放っておいて大丈夫なの?」さっきの二人の言い合いは、まるで嵐のようで、他人が口を挟む隙はなかった。実の息子である聖天も、仲裁に入る様子は全くなく、終始冷静で、まるで他人事のように見ているだけだった。「母さんの口達者には、さらに磨きがかかったみたいだな」
こうして、慶吾の視線を感じたまま、凛は雪にプレゼントを手渡す。雪は目を細めて笑った。「こんな改って。この出資を紹介してくれたのはあなたなのよ。感謝すべきなのは私の方」「凛」志穂は凛に声をかけ、感謝の眼差しを向ける。「ありがとう」凛よそよそしい雰囲気で、ただ社交辞令の笑みを浮かべただけだった。志穂は胸が締め付けられ、言葉が出てこなかった。雪は二人を交互に見ながら、何か言おうとしたが、杖をつきながらゆっくりと歩いてくる慶吾の姿が目に入り、一気に興醒めする。雪は舌打ちした。「よく来れたわね?」慶吾は気まずそうに、後ろに控えるボディガードにプレゼントを手渡すよう合図した。「純金で細工し
凛は軽く笑った。「彼らはもとから、あなたは私側の人間だって思ってるので、今私のために翔太を異動させたら、ますますそう思われますよ」「やましいことは何もないんですから、怖がる必要なんてありませんよ」浩二は眉をひそめた。「それに、私たちの共通の目的は佐藤グループを良くするということなんですから。一緒に戦う仲間じゃないですか」「おっしゃる通りです」凛は浩二のお茶を新しいものに取り替える。「ですので、こんな大事な時期に翔太を異動させるべきじゃないですよ。このことは、タイミングをみましょう。年明けに佐藤グループは海外市場をさらに開拓する予定なので、その時に、経験豊富なリーダーが必要になるんです
バーから佐藤家に帰ったのは、もう2時半だった。翔太が玄関のドアを開けると、リビングの薄暗い明かりが目に入り、思わず眉をひそめた。「やっと帰ってきたか?」良平の声が、静かな夜に響き渡った。怒りを抑えているのが伝わってくる。翔太は玄関の棚に車のキーを放り投げると、スリッパを履いて階段の方へと向かった。良平と話す気は全くないようだ。「翔太!」良平の声のトーンが上がる。明らかに不機嫌だ。「待て!」命令口調で言われて、ようやく翔太は足を止めた。そして、イライラした様子で返す。「何だよ?」「こんな時間まで待っていたのに、挨拶一つしないとは。お前、父親の俺を何だと思っているんだ?」良平は厳
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