LOGIN夏目凛(なつめ りん)は病気で、余命いくばくもなかった。 その日から、凛は悟った――生死の前では、すべてが幻のようなもので、今までこだわってきたことが全てバカバカしく思えてきた。 自分勝手な、タカるだけの家族なんて、いらない! プロポーズしたくせに、すぐに他の女とイチャつく婚約者なんて、いらない! 全てを失った凛は、やっと自由になれた...... それからしばらくして、凛の噂で持ちきりになった。 夏目さんが金持ちを捕まえたって。 夏目さんが若い男と旅行してるって。 夏目さん、超金持ちになって、お金使いまくってるって。 夏目さんは...... 後で、凛に捨てられた人たちは真実を知って、泣きながら土下座して許しを乞うことになるんだ。 金づる扱いをしてくる両親はこう言った。「お前はいつまでも私たちの可愛い娘だ。一緒に家に帰ろう」 クズの元彼は言った。「俺が愛しているのは凛だけだ。もう一度だけチャンスをくれ」と言った。 しかし、もう遅い! 男は凛の前に立ちはだかり、険しい顔で言った。「これ以上凛に近づいたら、足を折る」 そして、あの高位にある男は、凛の前にひざまずいて、こう言った。「生きていようが、死んでいようが、お前は俺のものだ」 霧島聖天(きりしま せいてん)は、自分が善人ではないことを自覚している。 名門霧島家の当主である聖天は、冷酷で、誰よりも早く決断し、行動し、恐れられていた。 誰が想像できただろうか。あんなに近寄りがたい聖天が、一人の女の子を8年間も想い続けていたなんて。 彼の数少ない優しさは、全部彼女に捧げられていた。
View More凛が微笑んだ。聖天は、世界が輝きを増したように感じた。......1ヶ月にわたるヨーロッパ旅行が終わっても、凛はまだ授賞式の夜を忘れられなかった。妊娠後期になるにつれ、体は重くなっていったが、それでも凛は毎日撮影の仕事に忙しく、充実した日々を送っていた。その間、朔の裁判も行われていたが、判決は弁護士の予想とほぼ同じだった。その日、テレビでニュースが流れていた。「綾辻朔死刑囚の死刑が、本日午前に執行され......」その時、梓には朔の最後の瞬間が見えた気がした。ちょうど凛の検診中だった梓は、一瞬、動きを止めてしまった。凛は梓の手を握り、優しく言った。「梓、これで本当に自由になっ
結婚式の後、聖天は凛と新婚旅行で海外に出かけた。ヨーロッパのカフェで休憩していると、弁護士から電話がかかってきた。「本日の公判は順調に進みました。このままいけば、あと1ヶ月で手続きが完了し、判決が下されるでしょう。綾辻さん、おそらく死刑は免れないかと。自首したあの『ウルフ』という男は、おそらく無期懲役、優奈さんに関しては......7、8年の懲役になると思われます」......弁護士は公判の様子を詳しく説明していたが、コーヒーを運んでくる凛の姿が目に入ると聖天は、「分かりました。残りは任せます」とだけ返事をした。凛も今日は公判の日だと覚えていたので、コーヒーをテーブルに置き自分も座
二人は微笑みながら見つめ合った。この光景に、参列者たちは皆、深く感動した。雪は涙を拭いながら呟く。「聖天が凛と結婚できたことは、もちろん聖天にとっての幸せなんだけど、私たちにとっても大きな喜びね......」ふと視線を向けると、慶吾もこっそりと涙を拭っているのが見えた。雪に見つめられたことに気づいたのか、慌てて手を止め、背筋をピンと伸ばす。雪は涙を拭うと、微笑んで言った。「もう誰もあなたのことなんて見ていないんだから、泣いたってどうってことないわよ」「泣いてなんかない。こんなめでたい日に、なぜ泣く必要があるんだ?」慶吾は鼻をすすり、真面目な顔で言った。「目にゴミが入っただけだ」雪は
真っ青な空には白い雲が浮かんでいる。昨日の夕方から、続々と招待客が島に到着し、別荘地にチェックインしていた。普段裕福な暮らしをしている彼らも、島の装飾に驚きを隠せなかった。島全体が美しく飾り付けられ、甘い雰囲気に包まれている。青と白を基調とした花々が桟橋から式場となる芝生まで敷き詰められていた。今までの霧島家はパーティーを開く際、仕事関係の人だけを招待していた。しかし今回は、雪が芸能界の重鎮たちを招待していた。それに、美雨も凛を応援するために多くの芸術家仲間を招待したのだった。招待客リストが完成した時、慶吾は思わず驚いた。「島が人で溢れかえってしまうんじゃないか?」すると輝が驚き
この言葉に、部屋は水を打ったように静まり返った。雪は、慶吾の怒りに満ちた目をしばらく見つめた後、ふっと自嘲気味に笑い出した。「いいわ、離婚しましょう!明日、弁護士事務所で、財産分与を済ませたら、すぐに離婚よ。それで、私たちは他人同士になるの!」そう言い捨てると、雪は踵を返して出て行った。渚と輝は、その場に立ち尽くしてしまった。事態が急変しすぎて、全くついていけない。霧島家の三人の嫁たちは慌てて雪の後を追いかけ、恒夫と修平は慶吾をなだめるために残った。「お父さん、そんな簡単に離婚なんてするなよ。もっと慎重に考えたほうがい」「そうだよ、お父さん。お母さんも頭に血が上っているんだ。冷静
優奈の部屋を出るとき、剛蔵はまだためらっていた。「優奈は俺たちを騙しているんじゃないだろうな?」「まさか」理恵は閉まったドアの方を振り返った。「私たちへの恨みよりも、凛への恨みのほうが強いはずよ。それに、これは私たちにとってもメリットがある......」理恵は考え込んだ。「その時になったら、うまく立ち回って、両方から利益を得られるかもしれない。とにかく、損することはないはず!」剛蔵は首をかしげた。「どういうことだ?」間抜けな夫を見ると、理恵は睨みつけることしかできなかった。「あなたに説明したって無駄」「そんなこと言うなよ......」理恵が歩き出すと、剛蔵は慌てて追いかけ、二人
口を塞がれていた布が外されると、優奈は慌てて叫んだ。「綾辻さん、私は......私はまだ役に立てるから。だから、お願い......」「さっきの会話、聞こえていただろう?」朔は優奈の言葉を遮り、薄く笑みを浮かべる。まるで面白い芝居を見ているようだった。「凛さんに感謝するんだな。彼女のおかげで命拾いしたんだから」しかし、パニック状態の優奈には、朔の言葉の意味が理解できなかった。ただひたすらに命乞いを続ける。「私......私は何でもできる。凛ができることは、私にもできる。凛ができないことだって、私にはできる......」次の瞬間、熱いお茶が入った湯呑みが優奈の胸に投げつけられた。「凛さ
「だから、これでいいんですよ。『かわいい子には旅をさせろ』って言うじゃないですか。今、まさに母親の顔をしていますよ」「何を言ってるの。あなたに言われなくたって、私は立派な母親よ?それに、これからはあなたのお母さんでもあるんだからね」そう言ったものの、『あなたのお母さんでもある』なんて、少し図々しかっただろうか、と思った雪は、「えっと......別に、そんな口うるさい姑になろうってわけじゃないのよ」と、慌てて付け加えた。凛はクスッと笑った。「分かってます」雪は凛の笑顔を見ながら、恐る恐る尋ねた。「じゃあ......受け入れてくれたってこと?」「......」凛は少し言葉を詰まらせた。
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