事件から1日休んで、私は仕事に戻った。犯人が捕まったとは言えきっと大騒ぎになっているだろうと思っていたけれど、案外そうでもなくて逆に驚いたし、救命部長が箝口令を敷いたらしいと聞かされてさすがと納得もした。 それに対してうちの部長はただ文句を言い続けている。「人騒がせな奴だなあ。大体、病院の備品なんてこれ見よがしに持ってるからこんなことになるんだよ。昨日休んだ分、今日は働いてください」 「はい」 できるだけ表情を崩さず、返事だけする。この人、なんとかならないのかしら。 小児科医としては優秀らしいけれど、人間としては・・・最悪。 特に私には敵対心丸出しで、優しい救命部長とは大違い。 どうせなら部長が刺されれば良かったのに。「紅羽、顔が怖いわよ。子供が泣くわ」 隣にいた夏美の呟き。フン。 怒りたくもなるわよ。 今だって、昨日休んだペナルティーって口実で週末の勤務を入れようとしている。「そんな顔するから、余計に言われるのよ」 「分ってます」 「じゃあ、直しなさい」 うっ。 それができないから困っているんじゃない。ブー、ブー、ブー。鳴り響くホットライン。「はい。NICUです。はい。はい。わかりました、向かいます」 どうやら、ドクターカーの出動要請だ。***「私行きます」 この場から逃出したくて、手を上げた。「山形先生はいい。ケガしてたんじゃあ仕事にならん」 「大丈夫です。行けます」さらに声を大きくしてみたが、部長は取り合ってもくれない。 「山形先生は待機。山田先生向かってください」結局、先輩ドクターが行くことになった。 本当に嫌な部長。 きっと春の歓迎会で手を握ろうとしたところを『セクハラで訴えますよ』なんて言ったからだろうな。 お酒の席なんだからって、その後みんなにも注意されたし。 はーぁ、本当に困ったものだわ。
Terakhir Diperbarui : 2025-04-16 Baca selengkapnya