マークと決別する意思を固めたルルーシアは途端に帝国での生活が一変することになる。ルルーシアは学園卒業後、いつでも王国へ嫁げるようにと子爵が配慮して、子爵家の商会の仕事を手伝っていた。それも直ぐ代わりの効く様な受付やちょっとした事務などで正直仕事としては雑務に近かった。王国から帰国したあとルルーシアは子爵に呼ばれる。シックな家具で統一された商会長の部屋は下っ端ルルーシアは親戚と言えどもあまり入ることは無かった。久しぶりに呼ばれてルルーシアは緊張する。「会長、お呼びと伺いました」入室許可を得て遠慮がちに言葉を発すると、何時も仕事の時は公私を混同しない会長が笑顔でルルーシアを迎えた。座るように促されたソファはこの商会に入って初めてだった。「ルルーシア、今日は商会長ではなく叔父として話してもいいかい?」珍しい事もあるのだと驚いたが、叔父の笑顔が嬉しくてルルーシアは頷いた。「少しだけ聞いたんだ、だけど君の口からもちゃんと聞きたい。ルルーシアはこのままずっと帝国に居てくれるつもりでいるかい?」叔父の言葉はルルーシアの気持ちを慮っているのが手に取るほど解った。この帝国に来た時に叔父はルルーシアの気持ちをちゃんと聞いてくれた。『いつかマークが迎えにくる』そう言ったルルーシアの気持ちを優先してくれた叔父が今度はそのマークに失恋したルルーシアの気持ちを再び聞いてくれる。その心遣いがルルーシアは嬉しかった。「ご迷惑ではないですか?」ルルーシアは親戚だが身分的には平民だ。子爵家で暮らしてはいるが、それも直ぐに出る事になると思っていたのが長引いているだけだった。だから縁故採用で入った商会の手当では直ぐに独り暮らしは出来ないと思い、まだ暫く独り立ちするまで迷惑をかけてしまうとついそれが言葉に出てしまった。「ルルーシア、今は商会長じゃないと言っただろう?君がこのまま帝国に居るのならば仕事も生活も考え直す必要があったから、それで君の気持ちを確かめたかった」「⋯⋯?」ルルーシアには叔父の真意がよく解らなかった。マークとの結婚は無くなったからこのまま帝国で暮らすつもりでいたルルーシアは生活が変化する事になるとは思っていなかった。そもそも王国に行っていたのも年に一回、2週間程度の事だ。首をひねりながらどう返事をしていいか解らないルルーシアを見て子爵は
Last Updated : 2025-05-02 Read more