Semua Bab 【完結】婚活アプリで始まる危険な恋 ~シンデレラは謎深き王に溺愛される~: Bab 41 - Bab 50

84 Bab

第6話・忍び寄るもの その2

 素性の知れない玄さんに恋をしてしまったと理世ちゃんに言ったら、恋愛に発展したのは喜ばしいことですが、現時点で素性が謎という事は、『ロマンス詐欺』や『デート商法』になる可能性もあるので気を付けて下さい、と釘を刺された。 ロマンス詐欺(主にインターネット上の交流サイトなどで知り合った海外の相手を言葉巧みに騙して、恋人や結婚相手になったかのように振る舞い、金銭を送金させる特殊詐欺の一種)というのは、国際的なものなので今回の場合、あまり該当しないと思う。しかし甘い言葉を吐いて恋人と錯覚させ、金銭を搾取するという行為はあり得る話だ。ブラックカードも、実際に使っている所を見た訳ではない。支払いの際、チラ、と黒いカードが見えただけ。 デート商法――どちらかと言えば、この方が玄さんに当てはまりそうだ。  この詐欺は、SNS、出会い系サイト(婚活アプリ含めて)、カップリングパーティー、合コン(コンパ)、電話、街角のアンケート、電子メール等で出会いのきっかけを作り、販売員が身分を秘匿して接近してくる。その人物は相手と数回会って話やデートをし、相手に好意を持たせた後、商品を購入させるべく、目的の販売店に誘いこんだり、おねだりしたりする。中には店内の販売員数人で脅迫した末、強引に購入させる手口もあるのだとか。怖いなぁ。 また、『異性』で『付き合っている・もしくは好いている人物』であることが、クーリングオフの行使をできなくさせる効果がある。実質の心理戦勝利と言えるかもしれない。  更に商品購入後、詐欺に遭った自覚がなく、友人や家族等に話した際に初めて気付くケースである事も特徴の一つである。こぞって彼らは、「2人だけの秘密」と囁き、クーリングオフの期間を経過させる。とにかく、あらゆる手を使って高額商品を買わせるのが目的だ。(※参考:wikiペディア) 玄さんは私をデート商法にかけようとしていると、そういう考えは片隅に置いておいた方がいいかもしれない。せめて彼の素性が解るまでは用心しておこう。 疲れていたというのもあるが、その日はゆっくり眠れた。自分の家だから久々にリラックスして眠れた。怖くなかったのは、玄さんのおかげ。謎深き王様に感謝しなくっちゃ。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-03
Baca selengkapnya

第6話・忍び寄るもの その3

 聖也君――羽鳥さんのお迎えが遅くなるということは全く聞いていない。  職員に電話を掛けてもらうが電話に出ない。一体どうしてしまったのだろう?「ママ…」 お迎えに来てもらえず、一人取り残される子供の悲しそうな顔は何度見ても辛い。聖也君は泣き出しそうな顔で悲しみをこらえている。「お母さん、用事で遅れているのかな? お迎え来るまで、先生と遊ぼっ」 本当なら疲れたので雑務を終わらせて帰りたいのだけれど、聖也君を放っておくわけにはいかない。子供の方が大人の何倍も疲れているはず。  とにかく羽鳥さんに連絡が付くまでは一緒にいよう。しかしどれだけ待っても彼女は現れない。もしかして事故…? 再度連絡をしてみたけれど電話に出ない。仕方ないので、緊急連絡先のひとつであるお父さんの方に連絡を入れた。連絡先は固定電話となっているので安心だ。連絡先は彼の職場。  数コールするとTakaさんと一緒に行った蓮見リゾートホテル内にあるレストランへと繋がった。先ずこちらの素性を名乗り、羽鳥さんを呼び出すように頼んだ。しかし羽鳥は手が離せず、電話口に出られないと言われてしまった。「緊急の用事なのです。お迎えの時間になっているのですが、お子様の迎えが無いため、こちらに連絡させて頂きました。至急連絡を頂けるようにお伝え下さい」 電話対応をしてくれている女性にそう伝えて電話を切った。  羽鳥さん。一体、どうしてしまったの? それから羽鳥夫妻から折り返しが掛かってくることはなく、最後の登録先であるお父様の方のご実家に連絡を入れた。電話は繋がったけれども、遠方だからすぐにはいけない、そちらでなんとかしてくれ、連絡されても困る、と他人事のように言われてしまった。  結局、午後五時頃にようやくお母さんが迎えに来たので、応接室で話をすることに。「どーもぉ、うっかり寝過ごしちゃってぇ」 媚びるような猫なで声で彼女は私に訴えてくる。なにがうっかり寝過ごしちゃってぇ、よ!  確かにうっかり寝過ごしてしまい、お迎えの時間になっても来ないお母さんも中にはいらっしゃるけれど、電話をすればすぐにお迎
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-03
Baca selengkapnya

第6話・忍び寄るもの その4

  「少し連絡が取れないからって、勝手に主人や主人の実家に電話しないでよ! どうしてくれるのっ、責任取れるの!?」 はあ?  なにを言っているの、この人!  謝るどころかあまりの身勝手な言い分に、ぷちん、と何かが切れた。  もう絶対に赦せない!!「謝りなさいよ! 勝手なことをして! ちょっと遅れただけで大げさなんだよ! 謝れっ!! あやま――」 「ちょっと遅れただけじゃありません!!」  私は吠える羽鳥さんを一喝した。私のあまりの剣幕に羽鳥さんは驚いて身をすくめた。「ちょっと遅れただけ、というのは五分程度の話です! 羽鳥さんが遅れてきた時間は、二時間ですよ、二時間!! 最初からきちんと遅れる旨を伺っていたのならともかく、聖也君がどんなに心細かったか、わかりますか!? 園にも迷惑が掛かるということも考えて下さい! 一部の職員が羽鳥さんの勝手な行動のせいで帰れないのですっ!」  ずっと言いたいことを我慢していた。もう知るもんか!  私への仕打ちだけならともかく、誠也君がかわいそう!! 「お泊り保育は園児たちにけがをさせないように、細心の注意を払っています。我々職員も非常に疲れているのです。もっとご配慮頂けませんか? 考えを改めて頂けないようなら退園して下さい。羽鳥さんの要求は毎回常識で対応できる範囲を超えていますし、他のお母様方とのトラブルにも発展することが多く、貴女ひとりに我々職員が振り回され、疲弊させられています。現に羽鳥さんのクラスに当たった職員は、全員退職しています。これがどういうことか真摯に受け止め、考えを改めて下さい! 園は貴女ひとりのものではありませんよ!」 私が初めて相当な剣幕で叱り飛ばしたものだから、羽鳥さんは言葉を詰まらせ、怯(ひる)んだ。玄さんの言う通り、不当な要求には強い態度を示さなくちゃダメなんだ、と気が付いた。  私が凄い剣幕で羽鳥さんに初めて説教したものだから、彼女は肩を震わせ、キッ、と私を睨みつけて不機嫌そうにして聖也君を連れ、帰っ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-04
Baca selengkapnya

第6話・忍び寄るもの その5

 思わず駆け寄り声を掛けた。「あの…どうしてここに……?」「眞子が心配だったから」 目の前にいたのは玄さんだった。「四時ごろには家に帰れると思うって言っていたのに、連絡がないから心配でさ。自宅の方にも行かせてもらったけれど帰っている気配無いし、もしかしたら園で何かトラブルでもあったのかと思ったら、気が付いたらここに来てた」 玄さんには、さくら幼稚園に勤務しているという事は伝えてある。だから様子を見に来てくれたんだ…。「ついさっき着いた所だったんだけれど、眞子と入れ違いにならなくて良かった」 そう言って玄さんが微笑んだ。それだけで、胸が高鳴ってしまう。  イケメンの笑顔は罪だよね。「玄さん、心配してくれてありがとう。すごく嬉しい」 素直な気持ちを伝えた。このくらい、いいよね?「車で来たから家まで送るよ」「いいの? ありがとう」 近隣の駐車場まで歩き、料金支払いはICカード。車の車種にはあまり詳しくない私でも知っているような、海外の高級メーカーの車に玄さんは乗っている。どうぞ、とスマートに助手席を開けてくれた。 本当にこの人、何者なのだろう。富豪? ますますわからない。どうして私みたいな庶民に良くしてくれるのだろうか。  本当に謎。 理世ちゃんの言う通り玄さんの年収は五百万円以下ではなさそうだ。乗っている車が年収をはるかに超えている。 都内飲食店経営はそんなに儲かるものなの?  だったらお店が暇だっていうのはどういうこと? お店が暇な時間にアプリをやって私と繋がって時間つぶししていたのに。 彼には一体どんな秘密があるのだろう。とても気になった。「す、すごい車だね。初めて乗ったよ」 シートはふかふかで内装も凝っていてお洒落だ。「そう」「あの…玄さん。聞いてもいい?」「なに?」「どうしてこんな高級車に乗っているの? 一体、どうやって買ったの?」 玄さんは私の言葉を聞いて、瞳に嫌悪の光を滲ませた。あ…これ、聞いちゃいけなかったやつだ、と直感的に思った。「眞子はこういう車に乗る男が好き?」「ううん、そうじゃないよ。ただ…私と玄さんでは住む世界が違い過ぎる気がして。こういう車、沢山買えるなら猶更私みたいな庶民とは…」「なんだ、そんなことか。だったらその点は大丈夫。この車、俺のじゃないから」「あ…そうなの?」 それに
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-05
Baca selengkapnya

第6話・忍び寄るもの その6

 「これ以上すると止められなくなるから帰るな」 もっと欲しいとか、はしたない事を危うく口走る前に玄さんの方から退陣してくれた。「なにかあったらすぐ連絡して」「うん、ありがとう」「俺があげた防犯ブザー持ってる?」「ちゃんとあるよ。肌身離さず持ち歩いてる」「良かった。あと、前言撤回。それ、俺には使わないでくれると嬉しい」「ふふっ。使わないよ」 玄さんに触れられるのは全然嫌じゃないから。 これってもう、付き合ってもいいって思っている証拠だよね? でも、彼の事はもう少し知っておきたい。せめて反社でないかどうかだけでも。「じゃあ、また」 彼の車から降りて手を振った。エンジン音が遠ざかっていく。 玄さん。 どうして何も教えてくれないの? アプリで出会った素性の解らない人って、みんなこんなもの? もっと教えて欲しい。貴方のこと。  深入りしすぎて、戻れなくなる前に。玄さんのことをもっと知りたいよ――   ※   翌日以降、園に投函される手紙に変化が起きた。白い封筒だった投函物だったのに、封筒には入れられずに直接白いハガキに書かれたメッセージが複数投函されるようになった。しかも内容は相当攻撃的なもの。『男を複数誑(たぶら)かせる魔性の女』や『淫乱教員を辞めさせろ』を筆頭に、数々の誹謗中傷が増えた。 私の名前こそ書いていなかったが、私のことを指している内容で間違いない。 それで確信した。 あおいさんだと思っていた攻撃は、羽鳥さんだったんだ。 あの問題――お迎え事件があって以降、酷い投函内容に切り替わった。数日後園でも会議があり、羽鳥さんと言い合いになった詳細を再度報告した。 事なかれ主義の園長も流石に大事と捕らえたのか、なにかしらの対策を投じると約
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-05
Baca selengkapnya

第6話・忍び寄るもの その7

  「あのね、玄さん」「ん?」 玄さんが優しい眼差しを向けてくれた。反社ですか、って聞いてみたい。けど――「焼き鳥食べてる? おいしいでしょ」「ああ、すごくうまい。眞子はいろんな店を知っているな。また教えてくれ」 絶品つくねを頬張る姿も絵になる。そんな彼に、どうしても聞けない。踏み込めない。  焼き鳥がおいしいなんて、どうでもいい話をしたいわけじゃないのに。「眞子さ」「なに?」「盆休みって暇?」「あ、うん。暇だよ。幼稚園休みだし」「俺も休み取れそうだから、デートしない?」「えっ。したい!」「どこ行きたい?」「じゃあ、玄さんといっぱいお喋りしたいから、ドライブデートがいいなぁ」「海でも見に行くか」「それもいいけど、よかったらキャンプしてみる? 楽しいよ」「えっ。テントで寝るの?」「うん。そうなの。それが意外に楽しくて、ハマっちゃうんだけれど…玄さんは寝袋なんかで寝ないよね?」「寝たことは無い。でも、やってみたい」「じゃあ、とっておきの場所でデイキャンプして、一泊キャンプは秋の涼しくなった時にやろうよ。お店は大丈夫? お盆休みだったら定休日は関係ない? 定休日が都合いいなら、合わせるよ」「定休日は無いんだ。年中無休」 年中無休?  ますます業種がわからない。お子様も利用するって…もうファミレスしか無いよ!  でも、昨今のファミリーレストランは、元旦は休みだったりするところもあるし、もう、謎すぎる!! 焼き鳥やでそんな会話を交わし、さらに日にちは過ぎ、お盆休みに入った。玄さんとデイキャンプに行く約束をしていたので、私ははりきって準備をした。  普段はソロキャンプばかりなので、持っている道具だけでは椅子が一脚しかなかったり、テーブルが小さかったり、足りないものが多く感じた。  玄さんにも楽しんで欲しくて、キャンプ専門店に行ったり通販を利用し、今日を楽しめるように用
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-05
Baca selengkapnya

第6話・忍び寄るもの その8

 周りが綺麗になった頃に丁度炭の火加減がいい感じになる。  予め野菜や肉等の材料は食べやすく切ってきたので、専用グリルの上に網を置いて焼けるまでに時間のかかる食材から並べていく。「手馴れているな。いつからキャンプをやっているんだ?」「昔、高校生の時にクラブでサマーキャンプに参加してからかな。大勢でやったキャンプがとっても楽しくて。一人でも、大勢でも、どっちでも楽しめるからキャンプにハマっちゃったの。だからこの前のお泊り保育、本当は大自然のキャンプをやりたかったんだけれど、園児たちをテントに寝かせるっていうのは、ちょっと厳しいから断念したんだ。でも、いつかやってみたいな」「今、貸しバンガローとか沢山あるから、テントが厳しければそういう施設を貸し切ってやればできるんじゃないの?」「あ、そうだね! テントに拘って考えていたけれど、そっか、そういう手もあるね! よし、来年やってみよう」「グランピングなんか流行っているから楽しいかもな」「ホントだね。やりたいなぁ。でも、グランピングは高いから、予算が…」「そうか。園行事にするにはグランピングは高額か」「だったら、安く借りられる所を探してみようかな」「いいんじゃないか。来年のお泊り保育は楽しそうだ」 玄さんのアドバイスのお陰でアイディアがむくむくと膨らんだ。でも私、来年まで頑張れるのかな。なにかあるごとに羽鳥さんを思い出しては憂鬱になってしまう。正直辛い。 「玄さんはお仕事で嫌なことがあったらどうしているの?」 憂鬱気分が抜けない。玄さんはどうしているのか気になったので聞いてみた。「今のでモンペを思い出したのか?」 急にお仕事の話を振ってしまったからか、玄さんに胸の内を当てられた。こういう所、観察眼が鋭いな、って思う。「わかる? 園の事を考えると、どうしてもモンペのことがセットでくっついてきちゃう。もう、ホントいや」「それだけのことをされたら辛いよな。でも、この前はしっかり言い返せたし、嫌がらせの手紙も証拠を押さえて排除すればいい。眞子が気に病む必要はない」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-06
Baca selengkapnya

第6話・忍び寄るもの その9

 瞬く間に時が過ぎて帰宅時間となった。片づけを終えて夕方に自宅まで送って貰った。自宅到着後、帰り際の車内で真剣な顔をした玄さんに話がある、と引き留められた。「なあ、眞子。お試しでいいから俺と付き合ってくれないか? お互いのことはこれから知って行けばいいと思う。今日は君の言葉に沢山救われた。俺は眞子を大事にしたいと思う。決して裏切ったりしないと約束する。だから前向きに考えて欲しい。まだ出会って間もないけれど、俺はもっと眞子のことを知りたいと思う」「玄さん…」 嬉しさ反面、本当に大丈夫かという気持ちが狭間で揺れた。  勇気を出して付き合いたいと伝えるつもりだったのに、臆病風が吹いてしまう。  でも、これじゃダメだよね。自分から一歩踏み出さないと!  玄さんに自分の気持ちをちゃんと伝えなきゃ。「玄さんの気持ちは、すごく嬉しい。私も、玄さんのことが気になっているのは事実よ。だから、このままお付き合いしたいと考えている。でも、心配なこともあるの」  今しか言うチャンスは無いと思い、意を決してお願いしてみた。 「私達、未だ本名も知らないじゃない? せめて、本名を教えてくれないかな。できれば免許証とか見せて欲しい」「…そうだよな。眞子がそう思うのは当然だ。本当は素性もきちんと話して、フルネームも名乗って、眞子を安心させたい気持ちはあるけれど、でもごめん。まだ時期尚早なんだ」 玄さんは瞳を伏せ、悲しそうな顔を見せた。本名名乗るだけで時期とかあるの?  彼の態度で一気に不安になった。  「ごめん。名を名乗れないのは理由があるんだ。本名を言ってしまうと、俺がどんなヤツか、ネットで調べただけですぐわかってしまうんだ。多分、どこかで聞いたことがある名前だから、調べなくてもわかるかもしれない。勝手を言っているのは重々承知だけれど、素性を告げるのはもう少し待ってくれないか。周りの説得も必要だし、これについては三か月、お試し期間として時間が欲しい。三か月後には、包み隠さずに素性を話す。免許証や身分証明できるものを君に見せる。約束するから」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-06
Baca selengkapnya

第6話・忍び寄るもの その10

 長く甘いキスを交わし、正式に恋人同士に(お試しだけど!)になり、夢うつつのままマンションの自宅の玄関前に到着。  キスの余韻を思い出すと、もっと玄さんと触れ合いたかったと思う。でも、まさか自分が名前すらも知らない男性と恋に落ちるとか、お試し付き合いを決めちゃうとか、そんなことになるとは思わなかった。 よく考えなくても色々アウトな気がする。理世ちゃんに言ったら『絶対やめた方がいいです、詐欺られますよ』とお叱りを受けそうだ。 でも信じるって決めたし。  けど素性がわからないのは不安になる。 私はプルプルと首を振った。家の前でおかしな行動をとっていないで、早く入ろう。  鍵を穴に差し込むと、ほんの少し違和感を感じた。なんだろう?  普通ならスムーズに入って左に回すと鍵が開錠される。なのに、ものすごく固くて回りにくい。冬場は寒さの影響でサムターンが縮むのか、鍵を開錠するのに苦労する時があるけれど、それとは違う。 おかしいな。夏なのに。今までこんなことはなかった。 固い扉を何とか開錠し、扉を開けるとむせかえる熱気に包まれる。  蒸し暑い室内が、閉め切っていたせいで温度が上がりすぎたのかな、と思って軽く換気し、バーベキュー等で利用した荷物を開けた。利用した網やトングを洗って、ごみを分別しなきゃ!  ピルルルル ピルルルル  あれ。電話だ。私のスマートフォンが鳴っている。お盆休みのこんな時期に一体誰かな?『眞子、元気か?』「お兄ちゃん!」 電話はビデオ通話アプリで、五歳年上の兄、清川智樹(きよかわともき)からかけられたものだ。お兄ちゃんは今、実家に義理姉と帰省中だ。連絡があったということは――「もしかしてっ、赤ちゃん産まれたの!?」『ご名答! ついさっき、産まれたんだ』「わぁ…! 良かったね、おめでとう!!」 自分のことのように嬉しくて、つい大きな歓声となった。「今日は遅いから明日にでもお見舞いとお祝い持って行くね! あ、産後だから栞(しおり)ちゃん身体辛いかな? 遠
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-07
Baca selengkapnya

第7話・シンデレラの危機 その1

  「どちら様ですか!」  私のマンションは築ン十年と経っているため、古いから家賃が安い。従って、ドアも簡易的、インターフォンに画面が付いているような、今風のセキュリティー抜群な場所ではない。玄関の扉越しに、来客に向かって怒鳴るように言った。 けれども返事は無い。 代わりに、ピンポーン、ピンポーン、とインターフォンが鳴り響く。  仕方なくドアスコープから来客を確認した。予想通り、Takaさんが玄関に立っている。  どうしてここにという間抜けな疑問が頭を掠めるが、恐らくあおいさんにある程度の私の情報を聞いて、後は独自に調べ上げたのだろう。粘着質な感じの人だったし、あおいさんから見せられた気持ち悪いSNSの文章や、隠し撮りした写真を許可も無く平気でアップする神経とか、総合的に考えると色々納得がいく。『眞子、すぐそこにいるんだろ。ここ、開けてよ』 ドアスコープを覗いていると解ったTakaさんは、ニタニタと笑いながら言った。名乗ってもいないのに、私の名前までちゃんと知っている。  その姿の気持ち悪いこと! 恐怖しか感じなかった。 『まーこー』  背筋が寒くなる。名前を呼ばれるだけで、背中を虫が這いずり回るようにぞわぞわと悪寒が走った。本当に気持ち悪い!「か、帰って!」声を上げ、反撃に出てみる。恐怖で声が上ずった。『つれない事言わないでよー。僕と君の仲じゃないか』 どんな仲よ!「か、帰って、く、くれないと、け、警察呼ぶから!」 声は上ずったままで舌がもつれる。しっかりしろ、と握りこぶしを固めた。『それは困るなぁ。そうだ、家の中で話し合いしようか。眞子は僕のことを誤解しているだけだから、その誤解を解きたいな』「誤解なんか、し、していないし、そのまま帰って!」 嫌なものは嫌だと訴えられるようになった私は、Takaさんに反論した。家の中だという安心がある。そうだ! この際自分で110番すれば―― 下駄箱の傍の
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-07
Baca selengkapnya
Sebelumnya
1
...
34567
...
9
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status