Lahat ng Kabanata ng 君が抉った心の傷に、まだ宿る名はない〜性奴隷は泣かない〜: Kabanata 11 - Kabanata 20

22 Kabanata

第11話 花屋『かさぶらんか』

(青山竜一 視点)叔父は、すっかり速水の保護者気取りだ。その態度に、ひどく苛立つ。――速水を、一度抱いただけで何がわかる。殴って、無理やり抱いたくせに。……そんなの、おやじと何も変わらないじゃないか。それなのに――速水はもう、すっかり懐いている。そのことが、また俺を苛立たせた。不機嫌なまま叔父を睨みつけると、今度は叔父がわずかに目を細めて睨み返してくる。――次期組長に逆らうな。その視線が、無言の圧力となってのしかかる。わかっている。そんなことは、百も承知だ。叔父が速水の味方になってくれたことは、本来なら何よりの収穫のはずなのに――それでも、まるで恋人を奪われたかのように、胸の奥がきしんだ。「う~ん、じゃあ、僕がお店を開きたいと言ったら、清二さんが資金を提供してくれるの?」「その前に、まずはどんな計画なのか聞かせろ。その上で、資金提供を考える。採算の取れないものに金を出すのは無駄だからな」速水は叔父の返事に対して、少し考え込んだ後に口を開いた。「竜二さんから聞いたんだけど、花屋の『かさぶらんか』と、その地下にある風俗店が売りに出されてるって。……それに加えて、『かさぶらんか』と風俗店の経営者だった三原進(みはら すすむ)も、売りの対象になってるって話も聞いた」「……竜二のやつ、そんな話をおまえにしたのか」俺は思わず舌打ちをしていた。「僕は花屋の『かさぶらんか』と地下の風俗店の両方が欲しい。竜二さんの話だと、かなりの安値で売り出されていると聞いたけど……駄目かな、清二さん?」叔父は、難しい顔をしていた。確かに、あの物件は安値で売られている。だが、それにはそれなりの理由がある。――速水は、頑固だ。一度心に決めたら、そう簡単に引かない。だからこそ、俺が叔父の代わりに説明するしかなかった。速水に、『かさぶらんか』をあきらめさせるために。「速水、あの店はやめておけ。花屋『かさぶらんか』は、地下の違法風俗店の利益で維持されてたんだ。だけど今は、その売り上げじゃもう店を支えきれない」「どうして? 地下の風俗店、今でも営業してるんでしょ?」「ああ、確かに営業はしてる。けど……昔みたいに“ガキ”は扱ってないんだ」「……? 今は、何を扱ってるの?」言葉に窮した俺の言葉を継いだのは補ったのは叔父の清二だった。それもひどい言葉で。
last updateHuling Na-update : 2025-07-12
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第12話 三原

(三原進 視点)花屋『かさぶらんか』が売れた。地下の風俗店も、まとめて。そして――付属品だった俺も、売られた。『かさぶらんか』は、かなりの安値で出ていた。それでも、まさか俺と同じ年齢の男が買い手になるとは思わなかった。速水の今の姿は知らない。けれど、過去の速水のことは、よく覚えている。◇◇◇◇俺は、随分昔に一度だけ、あいつに会ったことがある。母が「初物を手に入れた」と嬉しそうに話していたのを、今でも覚えている。その当時の俺はもう母親の商売を理解していた。だが、"初物"の速水は自分がこれから何をさせられるのか、理解していない様子だった。母親から教わる『アナル』という言葉さえ知らぬようで、困惑の表情を浮かべていた。今から男たちに犯され、性奴隷に堕ちるとも知らずに、速水は熱心に母親の言葉に耳を傾ける。ーー今までも、そんな子供はたくさん見てきた。それが俺の日常で……それでも、速水の事を覚えていたのは、やつが俺好みの容姿をしていたからだ。今も昔も男に興味はないが、それでも、速水は……とにかく可愛らしかった。まあ、それだけならきっと俺の記憶には残らなかったと思う。俺の記憶に残った原因はーー速水が勤務一日目で店を辞めたからだ。あいつは俺のおやじに店で犯され、その日の内におやじに手を引かれて店を出ていった。速水が親父の囲い者になった――そのことを、悔しそうに母から聞かされたのは、それから数日後だった。母は、死ぬまで速水のことを口汚く罵り続けた。「あいつが自殺未遂なんてするから、お前の父親に見限られたんだ」そうやって、何度も俺に恨み言をぶつけてきた。俺にとって、そんな母の存在は鬱陶しくて仕方なかった。親父に見放されてから、俺たち親子の生活は一変した。『かさぶらんか』の経営は傾くばかりだったのに、母は意地でも店を閉めようとはしなかった。たぶん、それは親父への意地だったのだと思う。元愛人としての、見返してやりたいという意地。「あなたの助けなんかなくても、私は立派にやっていける」――母は、そう言いたかったのかもしれない。けれど、現実はその逆だった。母は借金まみれの『かさぶらんか』を残して、死んだ。……結局、俺はそのつけを払わされることになった。『かさぶらんか』は、付属品の俺ごと売りに出された。もしも店がいい値で売れなければ、俺は内臓を切
last updateHuling Na-update : 2025-07-14
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第13話 三原と花屋

(速水 視点)「あ、三原さん。店先で騒いでごめんね」「いえ……大丈夫です」僕と竜二のつまらない会話の間も、三原は黙って待っていてくれた。三原進は母親の三原沙月より辛抱強いタイプのようだ。それでも、僕が声を掛けると、三原はすっと視線を逸らされてしまう。ーーまあ、僕の自殺未遂が原因で『かさぶらんか』の経営が傾いたわけだから、三原に嫌われていても仕方ないか。それにしても……何もない店だな。「ねえ、三原さん。『かさぶらんか』って花屋だよね。花が全く見当たらないのだけど……なんで?」「はぁ?そんなの……金がないからに決まってるだろ。次の買主が花屋を経営するとも思えないからって、借金取りが花を全部回収していったよ」「え、そうなの?……僕は花屋を経営するつもりなんだけど」「え?」「僕は花屋『かさぶらんか』を経営するんだよ」店の傾きかけた看板を指さすと、三原もつられるように視線を向けた。色褪せた赤い板には、かすれた文字で『かさぶらんか』と記されている。ーー金具ごと抜け落ちそうなほど傾いていて、見上げているだけで不安になるような代物だった。「文字はかすれているけど、レトロでいい看板だね。綺麗にしてあげたら、いい感じなると思わない?」「『かさぶらんか』の名前で、花屋を経営するつもりなのか、速水。……あ~、速水さん」「速水でいいよ。年齢あんまり変わんないでしょ?僕も三原って呼んでいいかな?」三原とは長く付き合うつもりだから、呼び捨てのほうがしっくりくる。彼は黙って従うことにしたようで、静かに頷いた。その様子を見ながら、僕はさらに問いかける。「ねえ、地下の風俗店の入り口はどこにあるの? 花屋の奥?」「ああ、花屋の奥に店と繋がる扉はあるけど、こっち側からしか開かない仕組みになってる。風俗店の入り口は、このビルの反対側にあるよ。……って、速水も一瞬だけ勤めてたじゃないか、その……」三原が言葉を濁したので、僕が代わりに続きを引き取った。「……性奴隷としてね。でも、あの時はパニックになっていたから、風俗店の入り口とか全く覚えてないんだ。それに君のお父さんに囲われてからは、屋敷から出ることもなかったから」「……深窓の令嬢」三原の言葉に僕は思わず顔を顰める。性奴隷を深窓の令嬢とは……皮肉にもほどがある。僕は思わず三原を睨みつけていた。「深窓の令嬢が、
last updateHuling Na-update : 2025-07-16
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第14話 モニタールーム

(三原 視点)モニタールームの内部は薄暗かった。電気代を節約するため、最小限の照明しか点いていない。速水は足を止めて、部屋の入口で躊躇いながら俺に声をかけてきた。「もう少し、照明を明るくしてくれないかな、三原?」「電気代がもったいないんだよ」「……いや、まあ、それも分かるんだけど。その……僕、視野が一部欠けてるんだ。この薄暗さだと、ちょっと見えにくい部分があって。……うーん、まあ、これぐらいなら大丈夫かな」「あっ、そういう事情があるなら早く言えよ。ちょっと待って、照明明るくするから」「ああ、大丈夫だって――うわっ、おおお!?」速水はまったく大丈夫じゃなかった。俺が床に直に敷いていた布団につまずき、そのまま頭から突っ込んで倒れ込んだ。慌てて駆け寄ると、速水はぼうぜんとしたまま敷布団に寝転がっている。「……ねえ。なんでモニタールームに布団が敷いてあるの?」「しゃあねーだろ。今、ここに住んでんだよ。自宅は借金返済のために手放したから、住めるのここしかないの。シャワー室もあるし、まあなんとかなる。それより、布団が見えないって……どんだけ視野が欠けてんだ?大丈夫かよ?」そう尋ねると、速水は布団に寝転がったまま、少し恥ずかしそうに顔を赤くした。その姿が妙に色っぽく見えて、俺は不意にどきりとする。「いや、布団につまずいたのは……ただの不注意。心配かけてごめんね、三原」「……いや、別にいいけど。しばらくそこに寝てろ。今、照明つけ直すから。なあ、その視野の欠損って、進行するようなもんなのか?」「ん? ああ、大丈夫。進行はしないよ。昔、柱に頭ぶつけてさ、眼底出血して一部だけ視野が欠けたんだ」「お前、意外と抜けてるな」俺が照明を明るくすると、速水は布団から身を起こし、周囲を見渡しながら口を開いた。「まあ、抜けてるけど。でも、怪我を負ったときは必死だったんだよ。性奴隷だった時の僕の主治医が、いきなり変態野郎になって襲いかかってきて。……いや、もともと変態だったんだけど。とにかく、そいつが僕のアナルに器具じゃなくーー自分のペニスを入れようとしてきたんだよ!あの時は参った。で、そいつから逃げようとして、柱に頭ぶつけてこうなったわけで……」「……」まずい……速水の話が壮絶過ぎて言葉が出てこない。俺が黙っていると速水が困り顔で口を開いた。「……三原、黙り
last updateHuling Na-update : 2025-07-20
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第15話 秋山

(速水 視点)三原が苦い顔で2号室を見つめていた。トラブルを避けるためにも、三原と2号室の彼との関係を把握しておきたいところだが、簡単には聞き出せそうにない。僕は三原の表情をうかがいながら、慎重に口を開いた「2号室の人と三原はどういう関係?」「どういう関係かと問われると……ただの知り合いとしか言いようがないな」三原は少し言い淀んでから続けた。「名前は、秋山剛(あきやま つよし)。――秋山の父親は、西成の風俗店で雇われ店長をやってたんだが、俺の母親と出会ってから……売上金の一部をくすねて、母親に貢いでたんだよ。たぶん、母親と親密な関係になってたんだと思う」三原の母親が関わっているなら、『かさぶらんか』の経営者として話を聞くべきだ。でも、三原の顔を見て口ごもってしまう。僕の様子を見て三原は自嘲気味に笑い話を継いだ。「もしかしたら……俺の母親が、売上金の使い込みを唆したのかもしれない。でもな、男の使い込みが店のオーナーにバレて、自殺しちまったんだ。一人息子の秋山剛を残して、な」「自殺」「ああ。せめて生命保険にでも入ってくれていたら、秋山も救われたと思う。でも、何もなかった。秋山のおやじは借金だけ残して……死んじまった」「秋山は財産放棄とかできなかったの?相手がまずいやつだった?」「風俗店のオーナーがまずいやつで、しかも……秋山を囲おうとしてた」「え……そうなの?」監視カメラから見ただけだが、秋山は体格がいい。だから、囲いの対象にはならないと思ってた。でも、実際には性奴隷として働いているので、そういう需要もあるって事だ。「人の好みはそれぞれだからな。体格のいい秋山を拘束して、無理やりセックスしたいって変態もいるんだよ。ーーしかも、その風俗店のオーナーに囲われた性奴隷は、すぐ壊れることで有名だった。やばい薬を打ちまくられて、尻掘られて殴られて。……廃人どころか、死んだやつもいるって噂だ」「めちゃヤバいやつだ。……よく秋山はそいつに囲われずに済んだな」三原は少し俯いて口を開いた。「同じ頃に……俺のおやじが死んだ。おやじの形見分けで、俺は初めて青山組の屋敷に呼ばれた」「形見分けがあったのか。ま、囲われ者の僕は知らなくて当然か。で、屋敷に君を呼んだのって……青山清二さん?」「よく分かったな、速水」「清二さんは三原の事を気に掛けているって言
last updateHuling Na-update : 2025-07-23
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第16話 ムカデ男

(秋山 視点)"ムカデ男"が今日の最初の客とはついていない。こいつに犯されれば、一日動けないほどの傷を負う。そのせいで、他の客を逃すことになる。――そう考えた瞬間、自分の思考がすでに“性奴隷”そのものになっていることに気づき、吐き気を覚えた。「よう、ひさしぶりだな……秋山?」「三日前にも来ただろ?」「ちっ、性奴隷のくせに媚も売れねぇのか。まあいい、今日お前に会いに来たのは、別れのあいさつをするためだ」意外な言葉に思わず安堵の息を漏らしそうになる。それを隠して男に尋ねた。「ようやく俺に飽きたか?」「まあ、それも多少あるな。ーー『かさぶらんか』のオーナーが正式に決まった事をお前は知ってるか?」「いや」「そうか。ま、性奴隷のお前に知らされないのも当然か。……新しいオーナーは青山組組長の愛人らしい。で、『かさぶらんか』で問題起こしそうな客は全員追っ払いにかかってる。俺もその内の一人だ。ーー丁寧な事に、金と俺好みの新しい奴隷を送ってくれてな、それで手を打つことにした」「……それは良かったな」ーーつまり、こいつはもう俺の前には現れないという事か?心底安堵している自分に苦笑いを浮かべそうになる。父子家庭で育ったが、俺は父親を尊敬できなかった。風俗店の雇われ店長だった親父は、オーナーの“ムカデ男”に殴られ、土下座させられる姿を、何度も俺に見せてきた。怯えてばかりの、小心者の親父。そんな男が――女に貢ぐために、売上金をくすねていたなんて。まさか、そんなことをするとは思いもしなかった。しかも、その尻ぬぐいを俺がする羽目になるなんて……。ヤバい立場に追い込まれた親父は、自殺した。それでも俺は、法が自分を守ってくれると信じていた。……だが、訪ねた弁護士事務所が悪かった。弁護士は、風俗店のオーナーの逆恨みを恐れ、俺を――売った。弁護士事務所に現れた男たちに連れ去らて俺は、ムカデ男が所有するビルの地下に閉じ込められる。ーーそれからの日々は地獄だった。腕にムカデの刺青を刻んだこの男は、ビルの地下で俺を毎日何度も犯した。男は俺を裸にすると両手首をベッドに拘束して、ペニスをねじ込みつづける。初めて男を受け入れた俺の尻は、真っ赤に染まり男のペニスも赤黒く染まっていた。ーーそれでも、男は抜き差しをやめなかった。男は毎日地下にやってきて、体位を変えながら責
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第17話 アナル用スタンガン

(三原 視点)「とにかく、速水はモニタールームから出ないでくれ。俺が地下に行って、ムカデ男を追い出してくるから、おまえは動くな。いいな!」「まって、三原!僕も行く。だって、『かさぶらんか』のオーナーは僕だよ?ーー僕があいつに『出禁』を言い渡す。その権利が僕にはある!」くそっ、速水は興奮状態だ。スマホの通話相手は青山組の組長だった。組長は速水に"動くな"と命じた。なのにその命令を無視するつもりなのか?ーー青山組組長の命令に背くなんて、速水はやっぱ頭がいかれてる。「……三原。なんだか……おかしい」「いや、頭がおかしいのは俺じゃなく速水の方だ!」俺が反論すると速水はきょとんとした顔をしたが、すぐに語気を強めて言葉を継ぐ。「何を言ってるの?違うって、三原!モニター見て。一号室の客が裸で廊下の様子を伺ってる。それ以外の性奴隷も動揺してるみたい。彼らが一斉に『かさぶらんか』を飛び出したら騒動になる。警察に目を付けられちゃうよ!」モニターをみると裸の客が部屋から上顔を覗かせていた。たしかに、このままではまずい……。「仕方ない。警告音鳴らしてから、2号室以外の部屋を電子ロックで扉の鍵を掛ける」「そんなことできるのか!三原、ハイテク!」「……どうも。消防法違反だけどな」「確かに……」「……」速水の言葉にいちいち反応していては疲れるーーそう思いながら、俺は警報音を鳴らした後に、各部屋の扉を電子ロックで閉じた。……これで警察のガサ入れが避けられるといいが。ーーそれにしても、どうして他の部屋のやつが動揺してるんだ?速水が画面を見たまま訪ねてきた。「2号室の人、秋山って名前だっけ?」「ああ、そうだ」「彼ってバイブをアナルに挿入されただけで叫び声あげるタイプ?」「それはない。秋山はその程度のプレイで声を上げるやつじゃない」「……でも、モニターの彼は叫んでるように見えるけど」「ーーえ?」モニタールームでは音声をカットしていて気が付かなかったが、確かに画面の中の秋山は叫び声を上げていた。ーー他の性奴隷が動揺しているのは、秋山が個室から漏れるほどの異常な叫び声をあげているからか。「三原、2号室の音声流して。秋山がバイブ程度で悲鳴を上げないならーーアナルに挿入されているのは別の玩具かもしれない」「音声を流しても、速水は大丈夫なのか?」「なに心配し
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第18話 戦う

(速水 視点)僕は三原の背後から、そっとシャツの裾を掴みながら地下への階段を下りていた。思った以上に薄暗いその階段は、視野に欠損のある僕には少し怖い場所だった。勢い込んで地下の風俗店に向かったくせに、なんとも情けない姿だ。一応、三原に言い訳めいた言葉を投げかける。「別に……ムカデ男にビビってるわけじゃないからね。それより、風俗店の店内って明るい?」「いや、風俗店を明るくしたら雰囲気ぶち壊しだろ。……つうか、階段が見えづらいなら手ぇ繋いでやろうか?」「三原……女扱いはやめてくれ」「してねぇよ」「……ならいいけど」ようやく階段を下りきると、風俗店へと続く地下の扉が現れた。三原はほんの一瞬だけ躊躇し、それから電子キーを翳して扉を開けた。「うぁ!?」「ーー!?」風俗店の廊下に出た途端、耳をつんざくような獣の叫び声が響いた。ーー秋山の声だ。けれど、それはとても人間のものとは思えなかった。胸の奥に冷たいものが走り、急に恐ろしくなる。だが、目の前の三原の背中からは、確かな熱を帯びた怒りが立ちのぼっていた。その背に、僕はそっと手を添える。――少しでも、その熱を分けてもらうように。「速水?」「三原、行こう。ーー秋山を救う!」「分かった、速水」僕たちは、叫び声を頼りに2号室へと急いだ。その声はまだ止まない。秋山がいまだにスタンガンを突き込まれている証拠だ。扉の前にたどり着いても、獣のような悲鳴は続いていた。ーーもう、待っている余裕などない。一刻の猶予もないことを、全身でひしひしと感じていた。「三原、突入するよ!」「俺がムカデ男の首元にスタンガンを押し当てる。相手が怯んだすきに、速水は秋山の尻からスタンガンを引き抜いて……そのまま部屋をでろ。ーー後は、俺がムカデ男の相手をするから」「僕は最後までムカデ男と戦うよ、三原」「危ないって、速水!」秋山の気遣いは嬉しいが、今はそれどころではない、「今は秋山を救う事に集中しよう。ーー僕はこのモップで応戦して、ムカデ男を秋山に近づけさせないから!」モップを目の前に掲げると、三原は驚き目を見開く。「お前、そのモップどこで拾ったんだ!?」「床に落ちていたよ。店長として管理がなってないね、三原。……あとで説教するから」「……どうとでもしてくれ」三原の呆れ声に笑みで応じる。ーーそして、息を合わせて2
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第19話 解離状態

(秋山 視点)誰かに股間を蹴り上げられた。だが、すでに叫びすぎて、もう声さえ出なかった。体もうまく動かない。――それでも。聞き覚えのある声に、反射的に体が反応する。ベッドの上から必死に首を動かして床をのぞくと、三原が倒れていた。「速水に……手を出すなッ……」「うるせ~ぞ!」意識はあるようだが、動けないらしい。その腹に、容赦なく蹴りが叩き込まれる。「……っ!」三原は床に顔を伏せたまま、胃液を吐き出した。すでに何度も腹を殴られたのだろう。胃の中身はすべて吐き出してしまったのか、もう透明な液しか出ていない。「三原を蹴るのは……もうやめて……」か細い声が、ベッドの上からかすかに聞こえた。そちらに視線を向ける。一瞬、子供かと思った。ベッドに座り込んだそいつは、涙を滲ませた目で、倒れた三原をじっと見つめている。――こいつは……誰だ?「だッ……ッ…」くそ……やっぱり声が出ない。喉が焼けつくように痛む。それでも、そのかすれた声に反応したのは、ベッドに座り込んだ男だった。「秋山、大丈夫?」「うっ、う……」声にならない声で唸る。大丈夫ではないが、むしろ――おまえこそ、大丈夫なのかと聞きたい。真っ青な顔色だ。それに……なぜ、俺の名前を知っている。そう思った瞬間、その疑問は一気に吹き飛んだ。男の体に、あのムカデの刺青がぬるりと這い上がっていくのが見えた。「うぁッ、やめろ。離せ!」「くそ。マジで、俺の好みじゃねえな。抱きしめても、勃起しねぇとか……速水、性奴隷失格じゃね?」「黙れ!」「"初物"だったガキのおまえは……けっこういい声で泣いてたよな?もう一回泣かせるのも悪くねぇな」「やめろッ!」俺の尻にとんでもない代物を挿入したムカデ男が、今は別の性奴隷を抱こうとしている。ーーなんだ、この状況は?俺は、ベッドに転がったままムカデ男に視線を向けた。男は俺の視線に気が付きニヤリと笑う。「秋山、大活躍だったな。おまえを助けに来た速水をアナル用スタンガンでたたきまくる姿はゾクゾクしたぞ。やっぱ、おめーを囲いたかったな~」「……ッ」「でもよぉ、この『かさぶらんか』のオーナーの速水が、俺に『出禁』を食らわせやがった。その上、客をモップで殴るとか正気とは思えん。こんなオーナーの元じゃ、不安だろ?秋山、俺の地下に戻って来いよ?」ーー冗談じゃない!「う
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第20話 竜二と伍代

(竜二 視点)速水の二十歳の誕生日に、俺は腕時計を贈った。速水は何の疑いもなく、それを嬉しそうに腕に巻いた。けれど、あの腕時計には細工が施してある。知り合いの細工師に頼んで、GPS機能と盗聴器を内蔵させたのだ。日々、速水の様子を俺のスマホに伝えてくれる――いわば、癒しのアイテムだった。その癒しアイテムが、今、速水の危機を俺に教えてくれた。花屋『かさぶらんか』が入る古びた雑居ビルは、表が花屋、裏が風俗店という二つの顔を持っている。裏手の路地に回ると、鉄製の非常階段が地下へと続いており、その先に速水がオーナーを務める風俗店の入口がある。俺はその階段を駆け下り、扉を蹴破るような勢いで中に飛び込んだ。風俗店の入り口近くで、俺は異変に気が付いた。速水の悲鳴と泣き声が微かに聞こえる。俺は唇を噛みしめて、速水の元に向かった。ーーだが、2号室の扉にもたれかかる男によって、俺の動きは阻まれた。「あれ、竜二さん。どうしてここが分かったんですか?」「ふざけんな、伍代!速水の悲鳴が聞こえてるのに、なんで扉の前でぼうっと突っ立ってやがる!」「……もうそろそろ終わりますので、少し待ってください。速水さんに付けた盗聴器で、部屋の状況は把握できています。"ムカデ男"は気絶寸前です。このまま、彼らに任せましょう。我々組の者は関わらない方がいいと思います、竜二さん」「……そうかよ」俺は拳銃を取り出し伍代に向けた。伍代はわずかに眉を動かすだけで、2号室の前から動く様子はない。俺は思わず舌打ちした。ーー伍代友和(ごだい ともかず)は、おやじの愛人の息子で、俺とは異母兄弟にあたる。おやじの清一は子種をばら撒くだけばらまいて、その後は放置状態が常だった。その子種の中に優秀なものがいれば、叔父の清二が拾い上げて組員にする事がある。伍代もその内の一人で、優秀な人間ではある。ーーだが、速水の専属護衛としては失格だ。速水に対する気遣いがまるで感じられない。何故こんな奴を速水の護衛に付けたのか、叔父に問い詰めたい。「……どけ、伍代。速水が泣いてる。お前には聞こえないのか?」「勿論、聞こえていますよ?もしも、速水さんの命に関わる状況なら、早々に突入しています。でも、そうじゃない。それに、今回の件は速水さんの好機に転じる可能性があります」「好機だと?」「『かさぶらんか』のオーナー
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