(青山竜一 視点)叔父は、すっかり速水の保護者気取りだ。その態度に、ひどく苛立つ。――速水を、一度抱いただけで何がわかる。殴って、無理やり抱いたくせに。……そんなの、おやじと何も変わらないじゃないか。それなのに――速水はもう、すっかり懐いている。そのことが、また俺を苛立たせた。不機嫌なまま叔父を睨みつけると、今度は叔父がわずかに目を細めて睨み返してくる。――次期組長に逆らうな。その視線が、無言の圧力となってのしかかる。わかっている。そんなことは、百も承知だ。叔父が速水の味方になってくれたことは、本来なら何よりの収穫のはずなのに――それでも、まるで恋人を奪われたかのように、胸の奥がきしんだ。「う~ん、じゃあ、僕がお店を開きたいと言ったら、清二さんが資金を提供してくれるの?」「その前に、まずはどんな計画なのか聞かせろ。その上で、資金提供を考える。採算の取れないものに金を出すのは無駄だからな」速水は叔父の返事に対して、少し考え込んだ後に口を開いた。「竜二さんから聞いたんだけど、花屋の『かさぶらんか』と、その地下にある風俗店が売りに出されてるって。……それに加えて、『かさぶらんか』と風俗店の経営者だった三原進(みはら すすむ)も、売りの対象になってるって話も聞いた」「……竜二のやつ、そんな話をおまえにしたのか」俺は思わず舌打ちをしていた。「僕は花屋の『かさぶらんか』と地下の風俗店の両方が欲しい。竜二さんの話だと、かなりの安値で売り出されていると聞いたけど……駄目かな、清二さん?」叔父は、難しい顔をしていた。確かに、あの物件は安値で売られている。だが、それにはそれなりの理由がある。――速水は、頑固だ。一度心に決めたら、そう簡単に引かない。だからこそ、俺が叔父の代わりに説明するしかなかった。速水に、『かさぶらんか』をあきらめさせるために。「速水、あの店はやめておけ。花屋『かさぶらんか』は、地下の違法風俗店の利益で維持されてたんだ。だけど今は、その売り上げじゃもう店を支えきれない」「どうして? 地下の風俗店、今でも営業してるんでしょ?」「ああ、確かに営業はしてる。けど……昔みたいに“ガキ”は扱ってないんだ」「……? 今は、何を扱ってるの?」言葉に窮した俺の言葉を継いだのは補ったのは叔父の清二だった。それもひどい言葉で。
Terakhir Diperbarui : 2025-07-12 Baca selengkapnya