愛憎渦巻く復讐の物語が始まるーー。 父親に捨てられた速水誠はヤクザに拾われる。その男は青山組組長の青山清一だった。しかし、その出会いは速水を地獄に落とした。清一は速水を性奴隷として扱いその体を凌辱してせめ苛む。苦しみの中、速水の心を慰めたのは、青山清一の息子の竜一と竜二の二人だった。幼なじみとの出逢いに僅かな希望を抱き、速水の過酷な日々は続いていく。ーーやがて、速水の二十歳の誕生日に青山清一が死ぬ。ようやく自由を手に入れた速水は自立して生きようとするが、その彼の前に現れたのは清一の弟の青山清二だった。彼は速水を青山組から出すつもりはなくその体を求める。だが、その手は思った以上に優しくて…。
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第1話 清一さんの性奴隷
父さんは僕を捨てて逃げた。
ギャンブル狂いの父さんにとって、僕はパチンコ玉より価値がなかったのかもしれない。
闇金の借金を返せなくなると、父さんは僕の前から姿を消した。残された僕はただ泣くだけで、闇金の男たちに父さんの行方を聞かれても、何も答えられなかった。男たちは舌打ちをした後に、僕にこう言った。
「おまえは、今日から性奴隷だ。体でおやじの借金を払え」
こうして僕は、違法風俗店に売られた。
◇◇◇◇
挿入されたぺニスが中をすって出し入れされる。痛みに涙が出て止まらない。悲鳴を上げて『やめて』と言っても、男たちは笑って僕を犯すだけ。
「うっ、やぁ、やめて……」
「もっと鳴け、ガキ」
「やめて、抜いてっ、あっ、あっ、痛いっ」
店長は僕に嘘をついた。
性奴隷の仕事はペニスを中に入れるだけで、すぐに気持ちよくなると店長は言った。でも、違った。
店に出た初日に僕はお客に買われた。
そして、男に犯された。
客は三人いた。
「いやっ、痛いっ、おなか苦しい……ひぃ、やだっ」
「こいつ、ぺニス全然たたねぇな?」
「性奴隷のくせに……もっと、喘げ。つまんねーだろ?」
「ぺニス、おったてろ!!」
両手首をガムテープで巻かれ、自由が利かない。
泣いた。
泣いて叫んだ。でも、誰も助けにこない。
「ぺニスにガムテープ巻いて、たたせたら?」
「ひいっ」
「は、なにそれ。ま、やるけど」
三人の男たちが交互に僕の中を犯す。挿入を待つ男たちは、僕の体を玩具にした。ガムテープでぺニスを無理やりたたせる。ガムテープの粘着が陰毛に絡み、動く度に地味に痛い。
「やめて……もう、やだ……」
「あ?性奴隷が口きくな。喘いで鳴けばいいんだよ!」
がっ
奥にぺニスを突っ込んだ男が、僕の脇腹を殴った。その時、中が締まるのが自分でわかった。男のぺニスはあっけなく達する。
「いやぁ!」
「うっ、しまる。あ~、でた~、まじか!」
僕の中からぺニスを抜き出した男は、強く抱きついてきた。男のぺニスから精液がダラダラとこぼれ落ちる。僕は悲鳴をあげて、男から逃げようとした。
気持ち悪い。
気持ち悪い!
「もうやめて……」
男は黙って僕の乳首に噛む。痛みに全身が震えて、ドロリとアナルから精液が流れでた。
「……なあ」
「なんだ?」
男が仲間に声をかける。
「金やるから……お前ら、出ていけよ」
「なんだよそれ。俺は、まだ一回しかいれてないぞ」
「性奴隷になに執着心出してんの?ただの便所だぞ」
男は笑って仲間を見た。
「便所でも、具合がよけりゃ囲う」
「馬鹿か、おまえ」
「後で金は渡す。出ていけや」
男の言葉に仲間が顔をしかめた。そして、気が削がれたのか部屋を出ていった。男は僕のぺニスに巻きついたガムテープを剥がすと、僕のソレを握り擦りあげた。
「うっ、うー」
「反応ねぇ~」
男は笑ってまた僕にぺニスを押し付ける。
「ひぃ!いや、いや!」
「あ~、おまえ、具合いいから……囲うわ」
性奴隷の僕は泣くだけだった。
男はひどく犯した。
愛はない。
ただ、僕の体がいいだけ。
「死にた、い」
「ああ、アナルがガバガバになったら、殺して山に埋めたる」
男は腰を激しく動かす。仰向けのセックスは、男の顔が見えるから嫌だ。僕の足が男の肩でゆらゆらと揺れている。
「どこの山がいい?」
「ひっ、あ……っ、やめっ……」
一瞬なにかを感じて、また痛みが走る。僕はもうろうとしながら答えた。
「どこでも……いい。埋めて、生きたまま埋めて。一人がいい。一人にして……」
「ああ、そうかよ!」
男が激しく突っ込んで最奥をえぐる。
僕は失神していた。
◇◇◇◇
男が黙々と山の土を掘る。僕の墓穴を掘る。
それが、嬉しかった。
終わりがうれしい。
早く山に埋めて欲しい。アナルが早くガバガバになって良かったって僕は思った。性奴隷の僕は泣いて死ぬ瞬間を待つ。
◇◇◇◇
山に埋められる……それは、僕が見た夢で。
現実には朝がきて、目覚めて、僕は生きていた。
そして、客の一人に囲われることになった。
性奴隷として。
(速水 視点)「あ、三原さん。店先で騒いでごめんね」「いえ……大丈夫です」僕と竜二のつまらない会話の間も、三原は黙って待っていてくれた。三原進は母親の三原沙月より辛抱強いタイプのようだ。それでも、僕が声を掛けると、三原はすっと視線を逸らされてしまう。ーーまあ、僕の自殺未遂が原因で『かさぶらんか』の経営が傾いたわけだから、三原に嫌われていても仕方ないか。それにしても……何もない店だな。「ねえ、三原さん。『かさぶらんか』って花屋だよね。花が全く見当たらないのだけど……なんで?」「はぁ?そんなの……金がないからに決まってるだろ。次の買主が花屋を経営するとも思えないからって、借金取りが花を全部回収していったよ」「え、そうなの?……僕は花屋を経営するつもりなんだけど」「え?」「僕は花屋『かさぶらんか』を経営するんだよ」店の傾きかけた看板を指さすと、三原もつられるように視線を向けた。色褪せた赤い板には、かすれた文字で『かさぶらんか』と記されている。ーー金具ごと抜け落ちそうなほど傾いていて、見上げているだけで不安になるような代物だった。「文字はかすれているけど、レトロでいい看板だね。綺麗にしてあげたら、いい感じなると思わない?」「『かさぶらんか』の名前で、花屋を経営するつもりなのか、速水。……あ~、速水さん」「速水でいいよ。年齢あんまり変わんないでしょ?僕も三原って呼んでいいかな?」三原とは長く付き合うつもりだから、呼び捨てのほうがしっくりくる。彼は黙って従うことにしたようで、静かに頷いた。その様子を見ながら、僕はさらに問いかける。「ねえ、地下の風俗店の入り口はどこにあるの? 花屋の奥?」「ああ、花屋の奥に店と繋がる扉はあるけど、こっち側からしか開かない仕組みになってる。風俗店の入り口は、このビルの反対側にあるよ。……って、速水も一瞬だけ勤めてたじゃないか、その……」三原が言葉を濁したので、僕が代わりに続きを引き取った。「……性奴隷としてね。でも、あの時はパニックになっていたから、風俗店の入り口とか全く覚えてないんだ。それに君のお父さんに囲われてからは、屋敷から出ることもなかったから」「……深窓の令嬢」三原の言葉に僕は思わず顔を顰める。性奴隷を深窓の令嬢とは……皮肉にもほどがある。僕は思わず三原を睨みつけていた。「深窓の令嬢が、
(三原進 視点)花屋『かさぶらんか』が売れた。地下の風俗店も、まとめて。そして――付属品だった俺も、売られた。『かさぶらんか』は、かなりの安値で出ていた。それでも、まさか俺と同じ年齢の男が買い手になるとは思わなかった。速水の今の姿は知らない。けれど、過去の速水のことは、よく覚えている。◇◇◇◇俺は、随分昔に一度だけ、あいつに会ったことがある。母が「初物を手に入れた」と嬉しそうに話していたのを、今でも覚えている。その当時の俺はもう母親の商売を理解していた。だが、"初物"の速水は自分がこれから何をさせられるのか、理解していない様子だった。母親から教わる『アナル』という言葉さえ知らぬようで、困惑の表情を浮かべていた。今から男たちに犯され、性奴隷に堕ちるとも知らずに、速水は熱心に母親の言葉に耳を傾ける。ーー今までも、そんな子供はたくさん見てきた。それが俺の日常で……それでも、速水の事を覚えていたのは、やつが俺好みの容姿をしていたからだ。今も昔も男に興味はないが、それでも、速水は……とにかく可愛らしかった。まあ、それだけならきっと俺の記憶には残らなかったと思う。俺の記憶に残った原因はーー速水が勤務一日目で店を辞めたからだ。あいつは俺のおやじに店で犯され、その日の内におやじに手を引かれて店を出ていった。速水が親父の囲い者になった――そのことを、悔しそうに母から聞かされたのは、それから数日後だった。母は、死ぬまで速水のことを口汚く罵り続けた。「あいつが自殺未遂なんてするから、お前の父親に見限られたんだ」そうやって、何度も俺に恨み言をぶつけてきた。俺にとって、そんな母の存在は鬱陶しくて仕方なかった。親父に見放されてから、俺たち親子の生活は一変した。『かさぶらんか』の経営は傾くばかりだったのに、母は意地でも店を閉めようとはしなかった。たぶん、それは親父への意地だったのだと思う。元愛人としての、見返してやりたいという意地。「あなたの助けなんかなくても、私は立派にやっていける」――母は、そう言いたかったのかもしれない。けれど、現実はその逆だった。母は借金まみれの『かさぶらんか』を残して、死んだ。……結局、俺はそのつけを払わされることになった。『かさぶらんか』は、付属品の俺ごと売りに出された。もしも店がいい値で売れなければ、俺は内臓を切
(青山竜一 視点)叔父は、すっかり速水の保護者気取りだ。その態度に、ひどく苛立つ。――速水を、一度抱いただけで何がわかる。殴って、無理やり抱いたくせに。……そんなの、おやじと何も変わらないじゃないか。それなのに――速水はもう、すっかり懐いている。そのことが、また俺を苛立たせた。不機嫌なまま叔父を睨みつけると、今度は叔父がわずかに目を細めて睨み返してくる。――次期組長に逆らうな。その視線が、無言の圧力となってのしかかる。わかっている。そんなことは、百も承知だ。叔父が速水の味方になってくれたことは、本来なら何よりの収穫のはずなのに――それでも、まるで恋人を奪われたかのように、胸の奥がきしんだ。「う~ん、じゃあ、僕がお店を開きたいと言ったら、清二さんが資金を提供してくれるの?」「その前に、まずはどんな計画なのか聞かせろ。その上で、資金提供を考える。採算の取れないものに金を出すのは無駄だからな」速水は叔父の返事に対して、少し考え込んだ後に口を開いた。「竜二さんから聞いたんだけど、花屋の『かさぶらんか』と、その地下にある風俗店が売りに出されてるって。……それに加えて、『かさぶらんか』と風俗店の経営者だった三原進(みはら すすむ)も、売りの対象になってるって話も聞いた」「……竜二のやつ、そんな話をおまえにしたのか」俺は思わず舌打ちをしていた。「僕は花屋の『かさぶらんか』と地下の風俗店の両方が欲しい。竜二さんの話だと、かなりの安値で売り出されていると聞いたけど……駄目かな、清二さん?」叔父は、難しい顔をしていた。確かに、あの物件は安値で売られている。だが、それにはそれなりの理由がある。――速水は、頑固だ。一度心に決めたら、そう簡単に引かない。だからこそ、俺が叔父の代わりに説明するしかなかった。速水に、『かさぶらんか』をあきらめさせるために。「速水、あの店はやめておけ。花屋『かさぶらんか』は、地下の違法風俗店の利益で維持されてたんだ。だけど今は、その売り上げじゃもう店を支えきれない」「どうして? 地下の風俗店、今でも営業してるんでしょ?」「ああ、確かに営業はしてる。けど……昔みたいに“ガキ”は扱ってないんだ」「……? 今は、何を扱ってるの?」言葉に窮した俺の言葉を継いだのは補ったのは叔父の清二だった。それもひどい言葉で。
(速水誠 視点)やってしまった……清二の寝室のベッドで、僕は一人目覚めた。その横に清二の姿はない。身は奇麗に清められ着物が着せされていた。まあ、清二自身が身を整えてくれた訳ではないだろうが……。でも、これは大きな失態だ。きっと、清二は僕に性奴隷としての技巧を期待していたに違いない。だからこそ、男に興味のない彼が、僕を抱いてくれたのだ。なのに……僕は清二とのセックスを全うする事なく気絶してしまった。死んだ清一は、セックス後に気絶した僕を弄ぶことも楽しみの一つにしていた。でも、清二がそんな変態だとは思えない。まるで、僕の事を処女でも扱うように丁寧に抱いてくれた。それにもかかわらず気絶するなんて……性奴隷として失格だ。ーーいや、僕は清二の性奴隷の座ではなく、彼の愛人の座を狙っている。でも、愛人なら情事の後には自らの体を清め、旦那様に衣装を用意したり、心安らげる会話を提供したりするものではないのか?「全部できてないーーーー!」僕は思わず嘆きの叫びをあげてしまった。性奴隷としての技も披露できず、さらにーー次期組長の腕をナイフで斬りつけてしまった。これって、大阪湾に沈められる案件じゃないの?まずい、まずい状態だ。……どうしよう。逃げ出そうか?逃げ出せるかな……。「ようやく目が覚めたか、速水?」「ひぃい!」突然、寝室の扉が開き着物姿の清二が姿を現した。僕は清二の姿を見て悲鳴を上げてしまう。そんな僕を清二は妙な顔で見つめてきた。そして、口を開く。「なんだ、その反応は?」「せ、清二さん……」「だから、なんだ?」「ご、ごめんなさい!」「はぁ?」「性奴隷でありながら、セックスを全うできず先に気絶してしまいました。ごめんなさい。でも、次は頑張ります!だから、清二さんの愛人の一人に加えてください。時々、清二さんが抱いてくれるだけで、僕には大きな武器になります。だから、どうか僕を見捨てないで!僕に武器を与えてください!」清二は困惑した表情を浮かべると、僕を見つめながら口を開いた。「あ~、悪かったな、速水。俺は男の抱き方を知らん。だから、むちゃをしておまえを気絶させてしまった。それに、おまえをぶん殴った。頬が腫れあがってる。痛いだろ……大丈夫か?」「いえ、全然平気です。それより、今後の事を話し合いたいのですが……よろしいですか?」「体が平気ならこっち
(青山竜一 視点)風俗店が立ち並ぶ一角に、『かさぶらんか』という名の花屋があった。だが、その表向きとは裏腹に、地下では違法風俗店が密かに営業されていた。この花屋と地下店の経営を任されていたのが、おやじの愛人の一人である三原沙月(みはら さつき)だった。彼女は地下店の店長として、長らくこの場所を仕切っていた。そして――その違法風俗店こそが、速水が初めて働かされた場所でもあった。おやじがその風俗店を訪れたのは、愛人である三原沙月のご機嫌伺いのためだった。一方、店長を務めていた三原もまた、組長の機嫌を取ろうと、“初物”の速水をおやじにあてがったにすぎない。だが、三原の思惑に反して――おやじは速水を気に入り、屋敷に囲ってしまったのだった。それは、三原にとって屈辱的な出来事だった。彼女は、男相手に身体を売る性奴隷たちを、いつも軽蔑の眼差しで見下していた。愛人という日陰の立場に甘んじながらも、性奴隷たちを自由に支配できることが、彼女にとって唯一の優越だった。ときに、彼女はその立場を利用して、彼らにひどい扱いをすることもあった。だが――その軽蔑の対象でしかなかった性奴隷の一人、速水が、組長の目に留まり、囲われ者となったのである。三原沙月はおやじとの間に子がいた。息子の名は三原進(みはら すすむ)。彼は愛人の子供という理由だけで、組の屋敷に入ることを許されなかった。にも関わらず、囲われ者の速水は屋敷に部屋を与えられ住んだいる。その現実が彼女の心を捻じ曲げた。おやじは愛人の三原と性交を持った後には、必ず『かさぶらんか』で自ら花を選び彼女に花束を作らせ速水への土産とした。三原にとってその花束を作る事は屈辱的な行為だった。セックスの余韻に浸る暇もなく、囲われ者の為に花束を整える。その繰り返しが彼女の心をむしばんでいった。ーーそんなある時、彼女は稚拙ないたずらを思いつく。三原は、花束の中に一つの細工を施した。女性用の剃刀――安全刃のない、むき出しの鋭い刃先。それを、嫉妬心を込めて、美しく束ねられた花々の間に忍ばせたのだった。あたかも、花の香りに酔ったその指先が、偶然触れてしまうのを、密かに願うように。三原にとっては普段のうっ憤を晴らす為のいたずらに過ぎなかった。悪意のあるその刃先が、速水の指先をほんの少しでもかすめてくれたならーー。だが、自殺を
(青山竜一 視点)ーー俺はここで何をしている?叔父の部屋で床に座り込み、ただ二人が消えた寝室を見つめているだけ。これ程、無駄な時間があるか?速水は……俺の言葉を無視した。叔父に抱きつき耳元で睦ごとをささやいていた。その速水の後ろ姿は紛れもなく性奴隷のものだった。その速水の姿に、俺は嫌悪感を覚え同時に失望した。ーーおやじの囲いが取れても……おまえは性奴隷から抜け出すことはできないのか。だが、時間が経ち冷静になると、自分の浅はかさに嫌悪感が募る。……速水は俺よりもずっと、己の置かれた立場を理解しているだけだ。速水はおやじの囲いから解放された後、この地を早急に去る予定だったに違いない。自室を片付け荷物を整えていたのも、その準備の一環だったのだろう。だが予想に反して、速水はこの街から出られなくなった。この街で暮らす限り、あいつは常に性奴隷として扱われる。一度でも奴隷に堕ちた人間に対して、この街に住む者は容赦がない。速水はその現実と対峙し決断した。ーー自分の身を削ってでも武器を手に入れると。そして、速水は叔父の提案にのったのだ。あいつはもう二十歳の大人だ。その決断を安易に非難する事は間違っている。それでも、速水が性奴隷として叔父に抱かれることが許せなかった。ーーあいつを守る力を持たない自分も許せない。叔父の寝室はおやじの部屋とは違い、防音が施されているようだ。二人の様子を伺いしれない。速水と叔父の睦ごとを聞いたところで、自身が惨めになるだけだ。……それでも、俺は叔父の部屋を後にすることができなかった。だが、二人が寝室から出てきた時に、床に座りっぱなしではあまりに情けない。俺は苦笑いを浮かべ、ソファに座り直した。そして、天井を見上げてため息をつく。ーー速水が寝室に入りしばらくたつが随分と静かだ。もしかすると、二人は案外と相性がいいのかもしれない。叔父が男を抱いた経験があるのかは不明だが、痛みや苦痛をできるだけ与えぬように、優しく抱いているのかもしれない。叔父はおやじとは違う。至ってノーマルな人間だ。速水は良い選択をしたという事になる。それなのに、俺は速水が叔父を嫌って泣き叫び、俺に助けを求める事を願っている。俺の心は随分と捻くれているらしい。虚しい時間をやり過ごすために天井をじっと見つめる。叔父の部屋の天井は、おやじの寝室の天井と似ていた
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