「昨日私が帰ってから、そんなやりとりがあったんですか。見たかったですね、もう少し居座っていればよかったな」 白澤《しらさわ》さんに職場まで送ってもらいながら昨日会ったことを話すと、彼はとても楽しそうにそんなことを言い出して。私としてはむしろ、居座っている白澤さんの方が見たい気もするけれど。「もう、白澤さんまでそんな事を。大変だったんですよ、あの暴君を宥めるのは」 そう返すと彼は、本当に可笑しそうに肩を震わせて。だけど笑い事じゃない、あれから朝陽《あさひ》さんが機嫌を直してくれるまで相当な嫌味を言われたのだから。 普段は魅力的な大人の男性って雰囲気なのに、どうしてああも子供っぽいのか。「ふふ、鈴凪《すずな》さんと一緒だとずいぶん素の朝陽でいられるようです。私にはそんな態度はとりませんからね」 そりゃあ白澤さんを相手にそんな事しても、鼻で笑われて終わりそうですし? 朝陽さんもそれは十分に分かってるだろうから、 絶対にやらないと思う。「そう、なんでしょうか? 私にはドSな暴君でしかないですけど、もちろん良いところもたくさん知ってはいますが」 最初の頃はずいぶんと流《ながれ》の件で迷惑をかけたのに、それについて恩着せがましい事は言ったことが無い。契約の事に関しては、まあ別だけど。 それから白澤さんと自分を比べて、律義に機嫌を直してくれるまで相手をしている私の方に問題があるのかも? と、悩んでいると……「私としては、鈴凪さんにずっと朝陽の傍にいてもらいたいと思っています」「……それは、その」 それは簡単に『はい、わかりました』とは返事することは出来ない話で。白澤さんがそう思っていてくれても、相手を決めるのは朝陽さんだもの。 ……きっとその時、私の存在は彼の選択肢の中にはないはず。お役御免になって、その先は朝陽さんや白澤さんに関わることもないのでしょうし。 それを想像すると、少しだけ寂しい気もするけれど。「無理強いするつもりはありません、私が勝手にそう思っているだけなので。それに朝陽も、きっと……」「朝陽さんが?」 そんなはずはない。 朝陽さんが傍にいて欲しいと思っているのは、鵜野宮《うのみや》さんただ一人だけ。私との契約も、そもそもは彼女の気を惹くためだけのものなのに。「目に見えないところで、変わっていく何かがありますから。良い事も、
آخر تحديث : 2025-10-01 اقرأ المزيد