「私、晴斗に一目惚れしちゃったの!絶対に彼と一緒になるんだから!清凪は私よりずっと頭がいいから、会社の経営くらい余裕でしょ!」両親が私を蘇我家に嫁がせたい気持ちを隠そうともしないのを見て、思帆は顔を真っ赤にして焦っていた。まるで今すぐにでもあの蘇我晴斗(そが はると)と結婚式を挙げて、名門の奥様の座を手に入れたくて仕方ないって感じ。数日前まで「私は新時代のキャリアウーマンになるの!」なんて大口叩いていたのに、今日の彼女はまるで別人。両親もこの豹変ぶりには言葉を失っていた。どうして突然こんなに変わってしまったのか、理解できない様子。私はというと、ソファに座って静かに会社の財務諸表を眺めながら、内心でひっそりと冷笑していた。生まれ変わっても、思帆はやっぱり我慢がきかないみたい。母の江島莉子(えじま りこ)は何も言わなかったけど、父の江島吉朗(えじま よしお)は同じ男としてどうにも気になるようで、口を開いた。「思帆、人に頼るなんてあてにならないぞ。今は彼もお前を好きかもしれないが、もし心変わりしたらどうするんだ?それに晴斗の評判、あまり良くないって聞いたぞ。よく考えたほうがいい。お父さんはお前が苦労するのを見たくないからな」自分の人生を他人に預けるなんて、愚かなことだと吉朗は思っている。商売の世界で何度も、成功した男が妻子を捨てる姿を見てきた。苦楽を共にした糟糠の妻が何も手に入れられずに終わる――そんな話ばかりだから、私たち姉妹には絶対にそんな思いをしてほしくないんだろう。でも、思帆はそんな吉朗の想いも一切届かない。多分、前世の私の華やかな暮らしを見ていたからだろう。出かければ高級車で送迎、銀行残高はいつだって億の単位、可愛い息子が二人もいて、誰もが羨む生活だった。彼女は頑なに「会社を継いで破産するくらいなら、晴斗に嫁ぐのが正解」だと信じている。当然、吉朗の忠告なんて右から左。耳をいじりながらイライラと言う。「あーもう、お父さんったら!ああいう女の人たちが無能なだけでしょ?私みたいに可愛くて魅力的なら、晴斗だって大事にするに決まってるじゃない!それに、あなたたちも彼に会ったでしょ?あんなに素敵な人、外の噂なんて全部嘘よ!」そう言うときの彼女の目はキラキラ輝いていて、絶対に手に入れるんだって
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