ルルアの冒険録〜異質な存在の二人〜 のすべてのチャプター: チャプター 11 - チャプター 12

12 チャプター

11話 狙った獲物は逃さない

予感はあった。自分が飲み干した液体が何なのか。ルルアは闇に飲まれそうになりながらも抵抗《ていこう》を続ける。心の奥底に湧《わ》き上がってくる力は一体何なのだろう。額に脂汗《あぶらあせ》を垂《た》らしながら考えている。苦しみの中にいるルルアを見ているカノンは彼女が闇に打ち勝つ姿を確認するように見守っていた。 「乗り越えられないと、お前の願いは叶わない」 カノンがルルアに託《たく》した思いはそこにある。自分には決して出来ない役柄《やくがら》を率先《そっせん》して受け入れようとしていた。ルルアの脳裏《のうり》に焼き付いているのは前世の記憶。自分とロザンが正反対の道を選び、敵対関係として成《な》り立つもう一つの世界線がそこにある。 「同……じ事は……繰り返さない!」 自我《じが》を保つ為に心の言葉を口にしていく。すると彼女を支配しようとしていた闇は見る見るうちに姿を失い、彼女の右目の奥底に取り込まれていった。ドッと疲れを感じた彼女は、はぁはぁを見出した呼吸を整《ととの》える。 第一段階をクリアする事が出来た。その事に安心したカノンは感情を抑えるようにルルアを力強く抱きしめた。ふるふると震《ふる》えそうな体を支えてくれる温もりを感じながら、妹のバリスの事を思い出すーー 二人は同じ世界を生き抜き、冒険を知った。その先に待っているのがどれ程、過酷《かこく》な現実だとしても、諦める事はしない。その思いを受け継《つ》いでいるのがルルアだった。カノンにとって彼は家族よりも深い繋《つな》がりを感じる存在なのだろう。 「耐えきる事が出来たな。後はお前に託《たく》す」 「任せて。きっと彼を取り戻す」 ルンガの村を襲《おそ》い、定期的《ていきてき》に姿を見せてくるロザン。その足取りは簡単には終えない。闇の力を秘めた彼は、今では全ての力を思うように自由に扱《あつか》う事が出来る。一度、自分の性質《せいしつ》を受け
last update最終更新日 : 2025-10-19
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最終話 光の勇者と月夜の君

ロザンはルルアの問いかけを聞かなかった事にしたら、背中に向けて、右手を掲げた《かか》げた。 ふと何もなかったはずの空間に目が見えし、黒い渦がぐるぐると満ちている。手にしてないのに、一瞬彼の右手には聖剣《せせぬ》ガイアが闇色《やみいろ》に輝きながら存在感を現している《現れている》。「……ロザン?」「……」ようやく事が出来ると思っていたのに、そうは簡単にうまくいかない。自分に見向きも消した彼の意識に語りかけようが、結果は悲惨な敗北《ざんぱい》だった。「私の名はロザン――今、闇王《えんおう》の名の下に異界《いかい》の勇者として命令を下《くだ》す。帝国《ていこく》ミミリアをそしてこの世界の住人共《じゅうマインドも》の魂を喰う」 《く》らえよ」高《たか》らかに宣言《せんげん》する彼に言葉が出ないルルア。 あの時、一瞬彼の心に触れる《ふ》れる事が出来たと感じたのは錯覚《さっかく》だったのだ不安。受け入れ、前世のように異界《いかい》へ繋《つな》がる最終門《さいしゅうもん》を発生させてしまった。ルンガの村の裏手《うらて》に隠されていた門とは違い、この門は世界の終焉《しゅうえん》を予言する力を持っている。「我が片割《かたわ》れの勇者に旋律《せんりつ》を――」ロザンが口にすることで聖剣《せせかえ》の姿が変化《へんい》していく。う》の体制《たいせい》まで整《ととの》行ってゆく。戦いたくない。一番は話合いで解決できればどれ程良いかだけ。こんな状況になるなんて想像する事もなな彼女の希望の光が砕けた《くだ》かれた瞬間だった。進んで現実に打ちのめされていると、ルルアに追い打ちをするように、闇の雨が降ってきた。 黒い炎は殺気《渦》を纏い《まと》いながら、彼女の体を貫こうと牙《きば》を剥《む》いた。 数十の刃がルルアの全身に突き刺さっていく。「闇炎《やみえん》の剣の味はどうだ? その刃は一度あったと魂《たましい》に侵食《しんしょく》する。君が君でいられる時間は限界《かぎ》されていく」「ふ……こんな痛くもなんともないわ。お前の意見に比べたら」カノンからもらった《モラ》った死の泉の原液《げんえき》を飲み干していたの。う通り飲めない状態で闇炎の剣を受けて今の彼女はいないかもしれない。門を塞ぐ《ふさ》ぐ事は難しい《むずか》しいだろう。一方ロザンの暴走《ぼうそう》を食い止める事
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