予感はあった。自分が飲み干した液体が何なのか。ルルアは闇に飲まれそうになりながらも抵抗《ていこう》を続ける。心の奥底に湧《わ》き上がってくる力は一体何なのだろう。額に脂汗《あぶらあせ》を垂《た》らしながら考えている。苦しみの中にいるルルアを見ているカノンは彼女が闇に打ち勝つ姿を確認するように見守っていた。 「乗り越えられないと、お前の願いは叶わない」 カノンがルルアに託《たく》した思いはそこにある。自分には決して出来ない役柄《やくがら》を率先《そっせん》して受け入れようとしていた。ルルアの脳裏《のうり》に焼き付いているのは前世の記憶。自分とロザンが正反対の道を選び、敵対関係として成《な》り立つもう一つの世界線がそこにある。 「同……じ事は……繰り返さない!」 自我《じが》を保つ為に心の言葉を口にしていく。すると彼女を支配しようとしていた闇は見る見るうちに姿を失い、彼女の右目の奥底に取り込まれていった。ドッと疲れを感じた彼女は、はぁはぁを見出した呼吸を整《ととの》える。 第一段階をクリアする事が出来た。その事に安心したカノンは感情を抑えるようにルルアを力強く抱きしめた。ふるふると震《ふる》えそうな体を支えてくれる温もりを感じながら、妹のバリスの事を思い出すーー 二人は同じ世界を生き抜き、冒険を知った。その先に待っているのがどれ程、過酷《かこく》な現実だとしても、諦める事はしない。その思いを受け継《つ》いでいるのがルルアだった。カノンにとって彼は家族よりも深い繋《つな》がりを感じる存在なのだろう。 「耐えきる事が出来たな。後はお前に託《たく》す」 「任せて。きっと彼を取り戻す」 ルンガの村を襲《おそ》い、定期的《ていきてき》に姿を見せてくるロザン。その足取りは簡単には終えない。闇の力を秘めた彼は、今では全ての力を思うように自由に扱《あつか》う事が出来る。一度、自分の性質《せいしつ》を受け
最終更新日 : 2025-10-19 続きを読む