同じ景色を見ながら、この関係性が永遠に続くのだと信じていた。 あたしは彼の背中を見つめる事しか出来ない。 剣と剣がぶつかり合う音がついさっきの事のように思えて仕方なかった。 草原に包まれていた世界は反転し、ロザンを闇へ迎えようとしている。黒い渦に吸い寄せられるように、前進し続ける彼を止める事が出来ない。 「……待ってロザン! 行かないで」 彼の剣技《けんぎ》瞬間相殺《しゅんかんそうさつ》によって負傷してしまった体は思うように動いてくれない。 二人の冒険の終焉《しゅうえん》がこんな残酷なものになるなんてーー 振り返る様子もないロザンは帝国《ていこく》ミミリアを捨て、魔王によって作られたもう一つの帝国リニアへ足を踏み入れていく。 表と裏で繋がった2つの世界は崩壊と再生を望むように、私達を切り裂いていった。 第1話 異世界転生者 この世界は帝国ミミリアを中心に成り立っている。あたし達、猫耳族《ねこみみぞく》が統率《とうそう》を取る前までヘブンスレイス国家を支配していたのはヒューマンと呼ばれる種族だった。 彼らはあたし達猫耳族と違って頭脳明晰《ずのうめいせき》だった。どこから情報を手に入れてきたのかの記述は残されていない。 戦術《せんじゅつ》は勿論《もちろん》、国を統治《とうち》する力の配分、そして民の動かし方を熟知《じゅくち》していた。 記述《きじゅつ》には書かれていない事を知るきっかけになったのは先読み師のバリスばあやの昔話からだった。 繰り返し語られる一つの物語の中には、複数の登場人物が出てくる。幼かったあたしは魅力的な物語にドキドキしながら聞いていた。 藁《わら》で編み込まれた掛け布団にくるまりながら、沢山の妄想と夢を見ていた事が、今となっては懐かしい。 「ルルアも大人になると冒険に出るのだろうね。私は心配だよ」 「ばあや?」 バリスばあやからしたら、素直で人の事を疑う事のないあたしの未来を思い描いているよう。微かに猫耳がしょんぼりと下がっている。 「大丈夫だよ、あたし立派な冒険者になるから。そして勇者を導く凄い人になるんだから!」 「……そうか、楽しみだねぇ」 にっこりと向けた笑顔がバリスばあやの心の不安を攫っていく。先を考えても現実は変わらない。 ゴロゴロと喉を鳴らしながら、ばあやの腕に抱かれている。両親の代わり
Last Updated : 2025-10-01 Read more