「どうして…?」 セオドア様がゆっくりと目を開け、ぼんやりと天井を見上げている。 彼の声はかすれ、蒼白い顔にはまだ痛みの影が残っていた。「お父様、わかりますか?」 カレンがベッド脇に駆け寄り、手を握る。「お父様は毒の入ったものを食べてしまって倒れたのよ。」「ああ、そうか、喉と頭が痛い…。」「まだ無理をなさらないでください、セオドア様。」 私はそっと声をかける。「ああ、ジャスミンもいたんだね。 良かった。」 彼は微かに笑って、私を見つめた。「はい。 ワグナーさんからご連絡いただいて。」「そうか。」 一瞬、静寂が落ちると、その沈黙を破るように、カレンが真っ直ぐな瞳で父を見つめる。「お父様、こんな時に何だけど、聞かせて。 お父様はジャスミンが好きなの?」 その問いに、私の心臓が跳ねた。 私が前世でセオドア様の不貞を知ってから、ずっと聞きたかったのに怖くて、躊躇っていたことをあっさりと尋ねる。「…そうだよ。 僕はジャスミンが好きなんだ。」「それは人として、恋愛として?」「恋愛としてだよ。 カレンはそれを聞いたら嫌な気持ちになるかい?」「お父様の気持ちは、お父様のものだし、相手がジャスミンなら良いわ。 だって私も好きだもの。 もちろん、人としてだけど。」「そうか、良かった。」 セオドア様はほっと息をつく。「カレンを産んでくれたジュリアも愛しているけれど、ジャスミンも同じくらい好きなんだ。」「わかったわ。」 そのやり取りを聞いている私は照れくさくて顔を赤らめる。 だって、セオドア様は前世の私も今世の私も好きだと言っているのだから。「でも、私は魔力はありませんし。」「だから?」 セオドア様とカレンは、同時に眉を上げ、声を揃える。「私には価値なんて…。」「君は間違っている。 魔法が使えるとか、使えないなんてことは君の魅力と全く関係ない。 カレンを全身全霊で愛する君が好きなんだ。」 セオドア様の声は、先ほど目覚めたばかりなのに不思議と力強かった。「カレンもそうだろう?」「うん、お父様を除けば、ジャスミンほど私を大切に思ってくれる人はいないもの。 魔法が使えなくても、私にとっては ジャスミンもお母さんよ。 お母様と呼ぶには若過ぎるけれど、心ではそう思っているわ。」 カレンは微笑んで、私の手を包
Последнее обновление : 2025-10-16 Читайте больше