「なんで…なんで絶望しないの…⁉あんたの体はボロボロで、もう何も出来ないはずよ!なのに、何で諦めないの⁉」異形の怪物が焦る。すると、目の前の男が答える。「簡単な話だ。俺はお前たちのような悪を一人残らず排除するまで絶対に諦めない。そう心に誓ったからだ!」「黙れ!もういい…わたくしが全部終わらせてあげますわ…!」怪物はそう言うと、鋭い鎌のような腕で男の腹に風穴を開けた。「ガハッ‼」「フフフ…やった、やったわ!」「…まだだ!」「なっ、何故生きている⁉あなたでも腹を貫けば死ぬはず…」「その質問に答える道理はない。聖炎断罪《ファイヤージャッジメント》」男が技名を唱えると、持っていた大剣が燃えだし、その剣で怪物を斬り上げた。「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ‼‼‼」悲鳴にも似た奇声を上げた怪物は空中で爆発し、人間の少女へと変わった。少女の顔は涙でぐちゃぐちゃになり、気力を失っていた。地面を見ると、少女の手鏡が割れ、その顔をハッキリと映していた。「皮肉だなお前の顔が一番絶望しているように見えるぞ。」「フフフフフ…ハハハハハハハハハハハ……」少女は気が狂ったように笑いだした。その声はシンとした薄暗い路地に響き渡った…「なんだこれ…」僕は読み終えた漫画を閉じ、しばらく余韻を感じていた。もっとも、感じているのは満足感や充足感ではなく喪失感に近いのだが。理由は推しが負けたからだ。いや、敵幹部を推していたので、負けるのは分かっていたのだが、余りにも負けた後の姿が悲惨だったため、何とも言えない気分になっているのだ。僕はその後、気分転換をしようと、なんとなく外に出てトボトボと歩いていた。しかし、頭の中は彼女のことでいっぱいだ。そのせいか、赤信号だったことに気づかずに横断歩道を渡り、次の瞬間トラックにはねられた。(トラックにはねられた理由が推しが負けたからなんて、我ながら馬鹿だなぁ…きっと後で笑いものになるだろう……)なんてのんきに考えながら、僕は意識を失った。…というのを、今思い出した。鏡で自分の姿を見てみる。サラサラとした綺麗な銀髪、鋭い目、そして僕の年齢で考えるとありえないほど小さな体、そして見慣れない場所「もしかしなくても…僕、死んじゃった?」どうやら僕は、転生というやつをしてしまったらしい。
Last Updated : 2025-10-31 Read more