両親から怒られるかもしれない。ミアに嫌われてしまったらどうすればよいだろう。そんなマリックの心配は杞憂に終わった。 そもそも、わがまま放題に育った王子が愛する女性のために旅に出たというだけで両親にとっては喜ばしいこと。そのうえ、少々手荒な手段ではあるが、破滅を余儀なくされていた他国の民を救ったのだから誇らしいものだ。国を治めているものがいなかったのもよかった。危惧すべき政治的問題が何ひとつ起こらないのだから。 両親はマリックの手柄を褒めたたえ、サラハの民たちもマリックを見直した。 鼻高々なマリックをさらに喜ばせたのは、なによりミアの存在であった。 考えないようにしていただけで、実際のところ、それが最も気がかりだったのだ。旅の最中、ミアが城から逃げ出しているのではないかとすら思っていた。彼女の護衛と称して見張りをつけたが、ミアなら彼らを容易に買収してしまうだろうと推測もしていた。 しかし、ミアはマリックのいない間も逃げることなく王宮へとどまり、律儀にマリックの帰りを待っていたのだ。彼女の誠実さにマリックの心がキュッと締め付けられる。 「おかえりなさいませ」 数週間ぶりの愛らしいミアの姿がマリックの疲労をすべて忘れさせた。マリックは棒のようになった足を根性だけで動かし、ポケットに入れていた蒼鋼をミアに見せつける。 「採ってきたぞ」 マリックはミアの手を取り、その手のひらに一粒蒼鋼をのせてやる。ちょうど指輪かペンダントによいサイズだ。蒼鋼はミアの真綿のような肌によく映えた。 ちらと彼女の様子を窺えば、ミアは心底驚いたような顔で蒼鋼とマリックを見比べた。 「……本当に、採ってきたのですか? マリック王子が?」 「ああ。結局、国ご
最終更新日 : 2025-12-02 続きを読む