高校時代、浅井湊人(あさい みなと)を振ってからというもの、彼は絶え間なく恋人を替え続け、その数は九人にものぼっていた。同窓会の席、湊人は十人目となる現在の恋人を連れて現れ、私たち一人ひとりに招待状を配り歩く。 周囲ははやし立て、ニヤニヤしながら私、佐藤夏海(さとう なつみ)に目配せを送った。私は胸を締め付けられるような痛みを感じながらも、毅然とした態度で立ち上がり、彼らを祝福する。湊人は鼻で笑った。「俺の結婚式当日、お前の口から直々に祝いの言葉を聞かせてもらいたいもんだな」私は微笑んでそれに応じたが、背を向けた瞬間に、バッグの中の診断書をそっと指先でなぞった。来月の二十日か。どうやら、そこまで私の命は持ちそうにない。……個室のドアが勢いよく開いた。私は無意識に顔を上げる。六年という歳月は、学生時代特有の青さを湊人から完全に削ぎ落としていた。仕立てのいい黒のスーツが、その広い肩幅と長い足をいっそう際立たせ、立ち姿は以前よりもずっと凛々しくなっている。けれど、かつて私を優しく包み込んでくれたあの微笑みはどこにもなく、今のその顔には、ただ凍てつくような冷徹さだけが宿っていた。彼の隣には、一人の女性が寄り添っている。室内が一瞬の静寂に包まれたのも束の間、直後、それまでを遥かに凌ぐ喧騒が沸き起こった。「よっ、湊人様のお出ましだ!遅刻したんだから、まずは駆けつけ三杯いっとけよ!」「湊人、隣の美人は誰だよ。紹介してくれよ」湊人は何も答えず、ただ視線を私に固定し、射抜くように釘付けにした。対照的に、隣の女性は屈託のない笑みを浮かべる。大輪の薔薇のように華やかで、自信に満ちた笑顔だった。「皆さん、初めまして。森下莉奈(もりした りな)だよ。湊人の婚約者なの」婚約者。コップを握る私の手が、自分でも気づかないほど微かに震えた。莉奈はそう言い終えると、バッグから金の箔押しが施された豪華な招待状を取り出し、にこやかに配り歩く。「来月の二十日、湊人と結婚することになったんだ。みんな、絶対に来てね!」私は目を伏せ、チクリとした胸の痛みを感じた。鏡を見なくても、今の自分の顔が死人のように青白いことは分かっている。先週、病院から戻ったばかりだ。主治医からは、長くても一ヶ月の命だと告げられた。
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