大晦日、私は帰国した。帰国祝いの席で、恋人の瀬戸健吾(せと けんご)がいきなり赤い薔薇の花束とダイヤのリングを差し出し、片膝をついた。「プロポーズするまで三年もかかっちゃったけど、僕たちの愛に遅いなんてことはないよね。梓、僕と結婚してくれ!」友人たちは傍で囃し立て、誰もが私が感極まって頷く瞬間を待ち構えていた。けれど、誰も覚えていないようだった。三年前の大晦日、健吾が私にプロポーズすると約束していたことを。あの夜、私は精一杯着飾って、夜が明けるまで彼を待ち続けた。だが、彼は現れなかった。届いたのは、彼の冷たい電話の一言だけだった。「雪乃の具合が悪くなった。放っておけないんだ。プロポーズの件は、また今度にしてくれ」その翌日、元日に私は一人で出国し、親が決めた政略結婚を受け入れた。三年前のあの時、私はもう、他の男の妻になったのだ。私は表情を変えず、そっと一歩後ろに下がると、手にしたグラスを軽く揺らした。「瀬戸さん、プロポーズの相手を間違えていらっしゃいませんか?」私は微笑みを浮かべて問いかけた。「あなたがプロポーズすべき相手は、望月雪乃(もちずき ゆきの)さんでしょう?」「また雪乃のことで嫉妬しているのか」私の言葉に、健吾の顔が微かに歪んだ。「もう三年だぞ、まだ怒っているのか?何度言ったらわかるんだ……」私は穏やかに、彼の言葉を先回りして継いだ。「彼女のことは妹だと思っている、二人の間には何もない……でしょう?」理由は単純。この台詞はもう百回以上、耳にしていたからだ。彼が「妹」だと言い張る雪乃のために、彼女である私を放り出すたび、必ず口にした言葉だ。言葉に詰まった健吾は一瞬呆然としたが、すぐに声を和らげた。「三年前のことは僕が悪かったよ。でも、理由はメッセージで説明しただろう?雪乃は重病だったんだ。看病が必要だったし、僕たちの結婚が彼女の刺激になるのが怖かった。なのに君は次の日、子供じみたわがままで何も言わずに出て行って……おかげで僕は三年も待ちぼうけだ。まあいい、こうして僕のために戻ってきてくれたんだから。これからはもうどこへも行かなくていい。セレブ妻として、大人しく僕のそばにいなさい」その自信満々な様子に、思わず笑いが漏れた。「いつ私が、あなたのために戻ってきたなんて言いました?
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