「翔太、あなたの愛人になってあげるわ」シャワーを浴びた紗奈は、ソファに座る翔太に向かってゆっくりと口を開いた。彼女の顔には、微笑みさえ浮かんでいた。いつもより念入りに化粧をしたせいか、初めて男を知った女の色香が全身から漂っていた。紗奈は微笑みながら翔太の隣に座ると、サイン済みの契約書を彼のそばに置いた。翔太は紗奈の笑顔を見て、言いようのない不快感を覚えた。そのいら立ちから、彼は冷たく言い放つ。「自分の立場をわきまえろ。お前はただのセフレだ。よけいな期待はするな!」「わかってるわ」紗奈の表情は変わらない。だが、深く傷ついた心臓がきゅっと縮んだ。「セフレ」という言葉が、頭の中で何度も繰り返される。やっぱり、まだ傷つくんだね。紗奈は、悲しい気持ちでそう思った。よけいな期待?もうしない。絶対に翔太に何かを期待したりしない。今の自分を支えているのは、兄を治すことと、父の死の真相を突き止めることだけだ。好きという気持ちや、幸せなんて。そんなもの、とっくに手に入れる資格なんてなかったんだ。翔太の対応は迅速だった。紗奈が契約書にサインしたその日のうちに、彼はすぐさま名医たちを招集して蓮を診察させ、より設備の整った特別病棟へと転院の手配を済ませた。彩花も手厚い治療を受けられるようになった。彼女は大きなショックで精神的に不安定になっていたので、静かな療養施設で看護されることになった。二人を見守れる状態になり、紗奈はようやく息をつく。もし翔太が約束を破ったらどうしよう、という不安がずっと付きまとっていたのだ。その後、紗奈は翔太の邸宅に引っ越し、夜は綺麗にして待っているよう命じられる日々が始まった。逆らう資格など、彼女にはない。素直に従うしかなかった。奇妙に穏やかな日々が流れる。夜になれば肌を重ねるけれど、心はどこまでも遠く離れたままだった。翔太の許しがなければ、紗奈は邸宅から出ることもできない。毎日、ただバルコニーに座って、無表情に遠くを眺めるだけだった。そんなある日、ついに翔太が、紗奈を会社に連れて行くと告げた。「私も行っていいの?」紗奈は驚いたが、口調は冷静に保った。この2ヶ月の暮らしで、彼女の態度のトゲはすっかり丸くなっていた。「別に構わんだろう。ただの事務の手伝い役だ」翔太は、さも
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