99階の高層マンション、ある真っ暗な部屋で。夫・平野亮(ひらの りょう)は私を抱き寄せ、飽きることなく唇を重ねてきた。三日間、彼は疲れを知らないかのように、私が泣きながら「やめて」と頼んでも、決してその手を緩めようとはしなかった。それから二か月後、私が妊娠したのが判明した。しかも、四つ子だった。検査報告書を握りしめ、胸の高鳴りを抑えながら、この知らせを夫に伝えようと家路を急いだ。ところが……思いがけず、彼が悪友たちと交わしている会話を耳にしてしまったのだ。「亮さん、その手はすげえよ。あの女に俺たちのガキ孕ませるなんてな。そうすりゃあいつ、亮さんに悪いって思って、これからは何でも言うこと聞くようになるだろ」「そうそう。そうなりゃ、もう清美ちゃんにちょっかい出せねえしな」「そろそろいい頃合いだろ。あいつ、できたか?」ざわついた室内で、亮の声が静かに響いた。「さっき病院から連絡があった。咲夜(さくや)が妊娠した。四つ子だ」個室は一瞬でどよめきに包まれた。「マジかよ、四つ子!?やっぱ俺、つええな」「はいはい、俺の子に決まってんだろ。勝手にパパ面すんな」「バカ言え。一番に出したのは俺だろ。当然、俺の子だ」「まあまあ、争うなって。ここはひとつ、賭けにしようぜ」「いいぜ。俺の子に一億!」「俺も一億。もちろん、俺の子だ」何人かが賭け金を宣言したあと、ふと誰かが別の可能性に気づいた。「でもよ……あいつ、四人産むんだろ。一人ずつ父親が違うってこともなくね?」「じゃあ、一人だけハズレか」一瞬の沈黙のあと、どっと笑い声が響いた。私は入り口に立ち尽くしていた。背筋に冷たいものが這い上がる。手元の報告書を見下ろすうち、血の気がすっと引いていった。……どういうこと?お腹の子は、亮の子じゃないというの?あの三日間、部屋も真っ暗で、頭もぼんやりとしていた。私を抱いていたのが誰なのか、判別することなど到底できなかった。まさか……そのとき、ためらいがちな女の声が聞こえた。「でも……咲夜さんが知ったら、可哀想じゃないですか?」声の主はすぐにわかった。亮が学費を支援している女子大生、林原清美(はやしばら きよみ)だ。亮の仲間たちが口を開いた。「清美ちゃん、優しすぎるんだ
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