Tous les chapitres de : Chapitre 1 - Chapitre 3

3

1、ざまあされる予定の悪役令嬢です

「クロエ・ルルーシュ、君に話がある」 王宮の階段を降りようとしていた私の腕を掴んで引き止め、そう言ったのは、昔からよく知っている男性だった。 165センチ近くある私よりもさらに20センチも背が高く、手足の長い彼。プラチナブロンドの髪、氷のように冷たい水色の瞳。王家の紋章が肩に入った白い軍服を着ている彼の表情は冷淡なのに、顔立ちは精巧な人形のように整っている。 彼の名前はレオン・グランツ。グランツ王国の第三王子殿下でもあり、私の二つ年下の幼馴染でもあった。「何でしょうか?」「知っての通り、君は明日断罪される」 表情一つ変えず、レオンはそう言った。 レオンの言った通り、私は二十歳になる前日――つまり明日、王宮前の広場で断罪されることが決まっている。具体的な罰はその場で言い渡されるらしいけれど、重ければ死罪、軽くても国外追放でしょうね。「はい、存じておりますわ。第三王子殿下から直々に申し渡されましたもの」「そもそも君の出過ぎた言動には、日頃から目に余るものがあった」 レオンは小さく首を横に振り、大げさにため息をついてみせる。 国王にも次ぐ権力者である公爵を父を持ち、生まれた時からずっとちやほやされてきた私。ほんの少しだけワガママが過ぎたのかもしれない。 だけど、本当にちょっとだけよ? 歯に衣着せない言い方しかできないのは申し訳ないけれど、正直で裏表がなくて、素直な性格なの。私は何も間違ったことは言っていないわ。 まあ、他人から嫉妬されやすく、恨みを買いやすいのは否定できないわね。公爵令嬢であるだけでなく、絶世の美女と名高い母親譲りの美貌まで持っているんだもの。 胸の下まであるウェーブのかかった深紅の髪。一点ものの宝石のような紫の瞳。ほどよい厚みのある薔薇色の唇。高価な装飾品がよく映える白い肌。 女性は私になりたがり、男性は物欲しそうな目で私を見つめる。唯一私をほしがらないのは、目の前にいる第三王子殿下ぐらいよ。「しかし決定的だったのは、先週の舞踏会だ。皆の前で僕との婚約を勝手に破棄しただけではなく、ミシェルの名誉を傷つけるような発言までするなんて」 つい一週間前まで婚約者だったレオンは、咎めるような目で私を見ていた。 仕方ないじゃない。 レオンにまとわりついていた伯爵令嬢のミシェルがあまりにもうっとうしかったから、我慢の限界だったの
last updateDernière mise à jour : 2026-05-15
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2、冷淡な王子の豹変?

「レオン……いえ、殿下」 私の腕を掴む力が弱くなったレオンの手を外し、彼に向き直る。「何度おっしゃられても、私はあなたには従いません。断罪なさるのなら、好きになさればいいじゃないですか」 あなたの気に触る言動ばかりする私がいなくなれば、せいせいするでしょう。「邪魔者は姿を消しますから、心置きなくミシェル様といちゃつかれてくださいな」「僕はミシェルを愛していない」「そうですか。でしたら、他のご令嬢と。どのような女性でも、少なくとも私よりはずっとマシでしょう?」 そう言って、下からレオンを見上げる。 レオンはただ私を見つめているだけで、何も言わなかった。わざわざ聞かなくても、分かりきったことね。レオンは私を愛していないのだから。「それでは、失礼いたします。予定通り、明日お会いしましょう」 左足を軽く後ろに引き、膝を曲げてお辞儀をする。 姿勢を正し、レオンに背を向けようとした。それなのに、またレオンが私の腕を掴み、引き止めてくる。「待て!」「放してください!」「考え直すんだ、クロエ!」「考え直しません!」「クロエ! 僕は君を……!」「しつこいのよ! いい加減にして、レオン!」 少し強めにレオンの手を振り払い、踵を返す。 そのまま立ち去ろうとした時だった。「うわっ」 めずらしく間の抜けたレオンの声が聞こえ、ゆっくりと振り向く。 そうしたら、なんとレオンが階段から足を滑らせ、手をこちら側に伸ばしていた。 ……え? 急いで彼の手を掴もうとしましたが、間に合わない。「うわあああああああ!!」「いやあああああああ!!」 ほぼ同時に絶叫した私とレオンの声が重なる。 普段はほとんど表情を変えないレオンの顔色が真っ青になり、まっさかさまに階段の下に落ちていく。 レオンの背中が長い階段の踊り場に打ち付けられ、そのまま動かなくなる。 いやだ……。う……嘘、でしょう? まさか……私が殺してしまった……? たしかに私を断罪すると言い出したレオンがいなくなってくれたら……なんて恐ろしいことを昨日ぐらいまでは考えていたけれど、さすがに殺すつもりなんてなかったのに。「……殿下!」 髪の色と同じワインレッドのドレスを軽くたくしあげ、階段を駆け降りる。「殿下。殿下、……殿下?」 目を閉じ、うずくまっているレオンの身体を何度も揺すり、
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3、記憶喪失の王子

 断罪予定日から一週間が経った日の朝。 いつも通り、私はふかふかの天蓋ベッドの上で目を覚ます。優雅に紅茶を飲んでから、メイドに手伝わせ、身支度を整える。 ワインレッドの髪をヘアブラシで綺麗にとかし、胸元が空いたブラックのドレスにルビーのネックレスを合わせて。うん、今日も完璧ね。 断罪予定日が過ぎても、まだ私の首と胴体はしっかり繋がっていた。王宮から追放されることもなく、生まれ育った公爵家でメイドや使用人たちにかしづかれ、華麗な令嬢ライフを満喫している。 かといって、断罪を申し渡したレオンが死んだわけでもなく、彼は今もピンピンしている。 ただ……。鏡に映っている私の顔は、わずかに強張っていた。 まさか今日も来るのかしら。 そんなことを考えていたら、部屋に入ってきたメイドに『レオン殿下がいらっしゃいました』と耳打ちされる。「通して」 紫の瞳を伏せ、私はため息混じりに答える。 お帰りいただきたいところだけど、そうもいかない。 それからほどなくして、レオンが元気良く私の部屋に入ってきた。彼と入れ替わりにメイドたちが出ていって、なりたくもないのに二人きりになってしまう。 「おはよう、クロエちゃん!」 今日も満面の笑顔を浮かべているレオン。 姿形はたしかにレオンなのに、表情も行動も一週間前とは別人のよう。 階段から落ちたレオンは打ちどころがよほど悪かったのか、なぜかあれから毎日公爵家の屋敷に通い詰めてきている。 王子としての仕事はきちんとこなしているみたいだし、日常生活には支障はないらしいから、全ての記憶を失ったわけではないはず。それなのに、私に関する記憶だけが一部混濁しているようで、私への態度が180度変わってしまった。「クロエちゃんの深紅の髪に合うと思って、お花をつんできたんだ! クロエちゃん、お花が好きだったよね」 レオンは小さな白い花を見せ、それを私の髪にさす。 私たちがまだ十歳にもならないぐらいの小さな頃、レオンはよくこうやって花を贈ってくれたわね。婚約してからは、一度もくれなかったくせに。「もう子どもではございませんので、こんなものでは喜びませんわ」「そっかぁ……。ごめんね」 見るからにしょんぼりしてしまうレオン。 そして、私の髪から白い花を取ろうとする。「い、いらないとは申していません」 不本意ながら、モゴモゴ
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