子供を持たないと誓った夫・結城湊(ゆうき みなと)が媚薬を盛られて、私・工藤栞(くどう しおり)の援助で大学を卒業した桜井莉乃(さくらい りの)とホテルで一夜を共にした。その後、湊は全身にキスマークをつけたまま、私に懺悔した。「俺の油断から過ちを犯してしまった。莉乃にはもう十分な補償をして、海外へ留学させた。栞、お前への愛は永遠に変わらないから」罪を償おうとするかのように、湊はためらいもなく自分の腹をナイフで三度も刺した。飛び散る血を見て私は理性を失って、「湊のせいじゃない」と泣き叫んだ。それから一年後、お盆の親戚の集まりでのこと。莉乃が湊との間にできた男女の双子を抱きかかえて、私の目の前で泣き崩れた。「栞さん、子供たちから父親を奪わないでください。どうかこの子たちを哀れんで……ご恩返しとして、この子たちは栞さんにお渡しします。どうか育ててやってください」いつも冷静沈着な湊がその場ですぐに目を赤くして、懇願するような口調で言った。「栞、俺たちは子供を持たないと決めているんだから、代わりにこの子たちを戸籍に入れて育ててくれないか?」胸が抉られるような痛みを覚えながらも、喉の奥に込み上げる苦さを必死に押し殺して、平静を装って答えた。「ええ、いいわよ」責め立てることもなく承諾したのを見て、湊は莉乃を助け起こして、興奮した面持ちでこちらを見る。「栞、本当にありがとう。これからこの子たちの母親はお前だけだ」湊の慈愛に満ちた視線が双子に注がれて、結城家も普段の喧騒が嘘のように静まり返る。胸が締め付けられて、唇から苦笑が漏れる。もう、すべてが明白だ。彼らはとうの昔に裏で口裏を合わせて、このお盆の日に認知を迫ることで、私を逃げ場のない状況に追い込むつもりだ。湊が赤ん坊を一人抱き上げて、歩み寄ってくる。「まだ名前が決まってないんだ。栞が名付けてくれないか」おくるみの中で熟睡する小さな顔を見つめると、脳裏にもう一つのあどけない顔がフラッシュバックする。胸がぎゅっと締め付けられて、湊の顔を見据えた。「離婚しよう」湊は一瞬にして顔色を変え、慌てふためいて、すがるような声を出した。「離婚なんてしない。莉乃は俺を助けるために妊娠したんだ。恩を仇で返して、子供を堕ろさせることなんてできなかったんだ。
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