僕・江崎徹(えざき とおる)が飛行機を降りた直後、妻の美月(みづき)が昔から想い続けていた男と結婚式を挙げるという投稿が目に入った。急いで会社へ向かったが、エレベーター前で人事部長に止められた。「あなたは今日付で解雇です。成果も出せない社員を会社に置いておくつもりはありません」思わず眉をひそめた。ここはそもそも僕の会社のはずだ。「美月の指示か?」「ふっ。社長があなたなんかに構うわけないじゃないですか。白川さんの指示ですよ」あまりのことに、思わず笑ってしまった。いつから白川秋人(しらかわ あきと)が美月の代わりに物を言うようになったんだ?「二人はどこだ?」「お二人なら最上階のパーティ会場にいますよ。もっとも、あなたには関係ありませんけどね。あそこは社内でも限られた人しか入れませんから」僕は黙って人事部長を突き飛ばすと、社員証を取り出し、認証端末にかざした。「ピッ。最高管理者権限を確認。認証が完了しました」会場の入り口に飾られた祝いの装飾を目にした瞬間、僕は思わず足を止めた。入り口の向こうから、美月の声が聞こえる。「本日はお忙しい中、私たちの披露宴と息子のお祝いにお越しいただき、本当にありがとうございます。これまで色々と……」扉を開けると、そこは祝宴の真っ最中だった。いつも僕には冷たかった義理の母の一ノ瀬翠(いちのせ みどり)が、子供を抱きながら笑みを浮かべている。そして僕の妻は、大勢の祝福に囲まれながら、見覚えのある男と口づけを交わしていた。二人が唇を離した瞬間、会場は拍手と歓声に包まれる。その中で、僕だけが拳を握り締めていた。秋人、この恩知らずが。秋人が美月を頼ってきたのは、彼の家の会社が倒産した頃だった。彼を助けたい一心で、美月は結婚して10年になる中で初めて、僕に頭を下げた。完成済みだったプロジェクトの実績を、秋人に譲ってほしいというのだ。電話越しに何度も、「この恩は必ず返します」と懇願してきた。二人が幼なじみだということは知っていた。でも美月は「彼とはもう何もない」と強く言い切っていたんだ。その後も美月は、「彼には気楽なポストを用意しただけだから」と自分から説明してきた。今なら分かる。その「ポスト」は、美月の「夫」という立場だったのだ。「社長は本当に幸せ者で
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