私、水無瀬澄乃(みなせ すみの)の結婚式は、これまで数え切れないほど延期されてきた。私はウェディングプランナーに電話をかけ、花嫁の名前を、婚約者・京極征爾(きょうごく せいじ)の幼馴染である「藤堂愛妃(とうどう あき)」に変更するよう伝えた。プランナーは戸惑いを隠せない声で尋ねてきた。「水無瀬様、本当によろしいのでしょうか。今回は京極様も延期にはなさいませんでしたが……」その声に滲む驚きを聞き取りながら、私は淡々と答えた。「ええ、花嫁を藤堂さんに変更してちょうだい」最初から、征爾が結婚式に関して出した指示はたった一つだけだった。――装飾はすべて愛妃の好みに合わせるように。「愛妃はセンスがいいから、俺たちの結婚式の参考にするだけだ」と彼は説明していた。だが、会場の装花から引き出物、入場曲に至るまで、すべての決定権は愛妃にあった。私のウェディングドレスのデザインでさえも。彼女はさらりとこう言っていた。「マーメイドラインの方が、澄乃には似合うわ」だから私は、彼女の痕跡が隅々まで染み込んだこの結婚式ごと、すべてを二人に譲ることにした。そして、この茶番劇から完全に身を引くのだ。これからは、あの男は過去に浸っていればいい。私は、誰にも縛られない広い世界へ飛び立つ。……電話口から、ウェディングプランナーの恐る恐る尋ねるような声が聞こえた。「すぐに変更の手配をいたします。ですが、京極様には事前にお知らせしなくてよろしいのでしょうか」私は静かにスマホの画面を見つめた。「必要ないわ」通話が切れ、画面が暗くなった。来月、征爾と一緒に引っ越すはずだった新居を見渡した。3階建ての豪邸の隅々にまで、洗練された上品な空気が漂っている。だが、リビングのクリスタルシャンデリアは、愛妃が「品がある」と言ったから取り付けられたものだ。寝室のシルクのシーツは、愛妃が「肌触りがいい」と言ったから選ばれた。玄関のディフューザーでさえ、愛妃が一番好きなブルーベルの香りだった。まるで他人の家に迷い込んだ、ただの客のような気分だった。顔を洗うためにバスルームへ向かった。大理石のカウンターの上には、使いかけのトムフォードのリップが置かれていた。色は愛妃のトレードマークであるヴィンテージレッド。その横には、華奢なパールのイヤ
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